潜夫論 / 德化
起居以其時,寒溫得其適,則一蔭之曲豉,盡美而多量;其愚拙工,則一蔭之曲豉,皆臭敗而棄損。今六合亦由一蔭也,黔首之屬,猶豆麥也。變化雲為,在將者爾。遭良吏,則皆懷忠信而履仁厚;遇惡吏,則皆懷奸邪而行淺薄。忠厚積則致太平,奸薄積則致危亡。是以聖帝明王,皆敦德化而薄威刑。德者,所以修己也;威者,所以治人也。上智則下愚之民少,而中庸之民多。中民之生世也,猶鑠金之在壚也。從篤變化,唯冶所為,方圓薄厚,隨鎔製爾。是故世之善否,俗之薄厚,皆在於君。
新字:起居以其時,寒温得其適,則一蔭之曲豉,尽美而多量;其愚拙工,則一蔭之曲豉,皆臭敗而棄損。今六合亦由一蔭也,黔首之属,猶豆麦也。変化雲為,在将者爾。遭良吏,則皆懐忠信而履仁厚;遇悪吏,則皆懐奸邪而行浅薄。忠厚積則致太平,奸薄積則致危亡。是以聖帝明王,皆敦徳化而薄威刑。徳者,所以修己也;威者,所以治人也。上智則下愚之民少,而中庸之民多。中民之生世也,猶鑠金之在壚也。従篤変化,唯冶所為,方円薄厚,随鎔製爾。是故世之善否,俗之薄厚,皆在於君。
書き下し
起居は其の時を以てし、寒温は其の適を得れば、則ち一蔭の曲豉、美を尽くして量多し。其の愚拙の工なれば、則ち一蔭の曲豉、皆臭敗して棄損す。今六合も亦た一蔭のごときなり、黔首の属は、猶お豆麦のごときなり。変化雲為は、将たる者に在るのみ。良吏に遭えば、則ち皆忠信を懐きて仁厚を履み、悪吏に遇えば、則ち皆奸邪を懐きて浅薄を行う。忠厚積めば則ち太平を致し、奸薄積めば則ち危亡を致す。是を以て聖帝明王は、皆徳化を敦くして威刑を薄くす。徳とは、己を修むる所以なり、威とは、人を治むる所以なり。上智なれば則ち下愚の民少なく、而して中庸の民多し。中民の世に生くるや、猶お鑠金の壚に在るがごときなり。篤きに従いて変化し、唯だ冶の為す所にして、方円薄厚は、鎔製に随うのみ。是の故に世の善否、俗の薄厚は、皆君に在り。
現代語訳
起き伏しを時に合わせ、寒さ暖かさの加減を適切にすれば、ひと蔭の曲豉は出来がよく量も多くなります。腕の拙い職人なら、ひと蔭の曲豉はみな臭って腐り、捨てることになります。今、天下もまたひと蔭のようなもので、民草は豆や麦のようなものです。変化するか否かは、率いる者の手にかかっています。良い役人に会えば、民はみな忠信を抱いて仁厚を行い、悪い役人に会えば、みな奸邪を抱いて浅薄に振る舞います。忠厚が積もれば太平に至り、奸薄が積もれば危亡に至ります。だから聖帝や明王は、みな徳による教化を厚くして威圧や刑罰を薄くしました。徳は己を修めるためのもの、威は人を治めるためのものです。上智の君主であれば愚かな民は少なく、中庸の民が多くなります。中程度の民が世に生きるのは、溶けた金属が炉の中にあるようなものです。篤きに従って姿を変え、ただ鋳物師のなすところに従い、四角や丸、薄さ厚さは、鋳型に従うだけです。ですから世の善し悪し、風俗の薄さ厚さは、みな君主にかかっています。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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論語・陽貨篇子曰わく、性相近くして、習い相遠し。
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孟子・滕文公章句下孟子、戴不勝に謂いて曰く、「子は子の王の善ならんことを欲するか。我明らかに子に告げん。此に楚の大夫有らんに、其の子の齊語せんことを欲すれば、則ち齊人をして諸に傅たらしめんか。楚人をして諸に傅たらしめんか。」曰く、「齊人をして之に傅たらしめん。」曰く、「一齊人之に傅たるも、衆楚人之を咻せば、雖日に撻(むちうつ)ちて其の齊たらんことを求むと雖も、得可からず。引いて之を莊嶽の間に置くこと數年ならば、日に撻ちて其の楚たらんことを求むと雖も、亦た得可からず。子、薛居州を善士と謂い、之をして王の所に居らしむ。王の所に在る者、長幼卑尊、皆薛居州ならば、王は誰と與にか不善を為さん。王の所に在る者、長幼卑尊、皆薛居州に非ざれば、王は誰と與にか善を為さん。一薛居州、獨り宋王を如何せん。」 <語釈> ○「咻」、音はキュウ、義はかまびすしくすること。○「莊嶽」、顧炎武云う、莊は是れ街の名、嶽は是れ里の名。
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『講孟余話』滕文公下 第六章「一薛居州、独り宋王を如何せん」。此の章の義極めて明白、比喩極めて的切、而して到底又此の一句に帰す。然れども是れ独り人君の知るべきのみに非ず。卿大夫士に至るまで、争臣争友少なくては、善をなすこと甚だ難し。更に一転して思ふに、心の存する所、身の行ふ所、接する所の事、翫ぶ所の芸、皆善に非ざることなくば、何を以て不善の人たらんや。故に云ふ、「小人間居して不善をなす」と。不善の萌しは必ず無事による者なれば、是れを思ひて、身を孝悌文武の内に漸漬して、他念を生ずるに暇なくすべし。是れ亦荘嶽に置くの意なり。
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『呻吟語』内篇・修身・入る所を慎み、接する所を慎む廟に入れば敬を期せずして自ら敬し、朝に入れば肅を期せずして自ら肅たり。是を以て君子は入る所を慎むなり。嚴師を見れば則ち收斂し、狎友を見れば則ち放恣なり。是を以て君子は接する所を慎むなり。
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『呻吟語』外篇・品藻・至此不為君子、真小人なり君子事に當たれば、則ち小人も皆な君子と為る。此に至りて君子と為らざるは、真の小人なり。小人事に當たれば、則ち中人も皆な小人と為る。此に至りて小人と為らざるは、真の君子なり。
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『墨子』所染子墨子、染絲する者を見て歎じて言いて曰く、「蒼に染むれば則ち蒼く、黄に染むれば則ち黄なり。入るる所の者變ずれば、其の色も亦た變ず。五たび入れて已に五色と為る。故に染は慎まざる可からざるなり」と。
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