潜夫論 / 思賢
上醫醫國,其次下醫醫疾。夫人治國,固治身之象。疾者身之病,亂者國之病也。身之病待醫而愈,國之亂待賢而治。治身有黃帝之術,治世有孔子之經。然病不愈而亂不治者,唯針石之法誤,而五經之言誣也。乃因之者非其人,苟非其人,則規不圓而矩不方,繩不直而準不平,鑽燧不得火,鼓石不下金,金馬不可以追速,土舟不可以涉水也。凡此八者,天之張道,有形見物,苟非其人,猶尚無功,則又況乎懷道術以撫民氓,乘六龍以禦天心者哉?
新字:上医医国,其次下医医疾。夫人治国,固治身之象。疾者身之病,乱者国之病也。身之病待医而愈,国之乱待賢而治。治身有黄帝之術,治世有孔子之経。然病不愈而乱不治者,唯針石之法誤,而五経之言誣也。乃因之者非其人,苟非其人,則規不円而矩不方,縄不直而準不平,鑽燧不得火,鼓石不下金,金馬不可以追速,土舟不可以渉水也。凡此八者,天之張道,有形見物,苟非其人,猶尚無功,則又況乎懐道術以撫民氓,乗六竜以禦天心者哉?
書き下し
上医は国を医し、其の次は下医疾を医す。夫れ人の国を治むるは、固より身を治むるの象なり。疾は身の病、乱は国の病なり。身の病は医を待ちて愈え、国の乱は賢を待ちて治まる。身を治むるに黄帝の術有り、世を治むるに孔子の経有り。然るに病愈えず乱治まらざるは、唯だ針石の法誤り、五経の言誣わるればなり。乃ち之に因る者其の人に非ず。苟くも其の人に非ざれば、則ち規は円ならず矩は方ならず、縄は直ならず準は平かならず、鑚燧は火を得ず、鼓石は金を下さず、金馬は以て速きを追うべからず、土舟は以て水を渉るべからず。凡そ此の八者は、天の張道にして、形有り物に見ゆるも、苟くも其の人に非ざれば、猶お尚お功無し、則ち又況んや道術を懐いて以て民氓を撫し、六龍に乗りて以て天心を禦する者をや。
現代語訳
優れた医者は国を治し、その次の医者が人の病を治します。人が国を治めることは、もともと身を治めることの似姿です。病は身の乱れ、乱は国の病です。身の病は医者を待って治り、国の乱は賢者を待って治まります。身を治めるには黄帝の術があり、世を治めるには孔子の経典があります。それでも病が治らず乱が治まらないのは、鍼や石の治療法が誤られ、五経の言葉が誤り伝えられるからです。そして、それを用いる者が適任ではないからです。もし適任でなければ、コンパスは円を描かず、定規は四角を描かず、縄は真っすぐにならず、水準器は平らにならず、火を起こす鑚燧は火を得ず、石を打って金を取り出そうとしても取れず、金の馬では速いものを追えず、土の舟では水を渡れません。この八つは、天が示した道で、形があり物として見えますが、適任者でなければ功がありません。まして道術を抱いて民をいたわり、六龍に乗って天意を治める者は、なおさらです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『政談』國の締り一篇の發端の事総して国の治めと云ふは、譬へば碁盤の目を盛るが如し、目を盛らざる盤にては、何ほどの上手にても碁はうたれぬなり、洪水を静むるには、川筋を付るなり、川筋を付ざれば、禹王再び生れ出たまふとも、水を静むることは叶はざるなり、当時火災の事上の御世話にて塗屋土蔵造に成りたれば、火災自然と少なし、是明かなる証拠なり、其外の御政務には、此訳を申し立る人なきにや、是によりて和漢の古法を考へ愚案の量見を左に記す、
-
『政談』右四册大意の事右四册の物語りに瑣細なるまでを記したることは、当時は法の立てやう未熟にて、大なる所に法立たず、末に計り法立ちてある故世界に締り無く、風俗ひたものに移り行き、今は法は法にて有りながら、下は下にて別々になりて、法も詮無きことに成りたることを知らせ奉らんためなり、当時のことなど見及び聞及びたる争などを少々書きたるは、定めて承はり違ひもあるべし、又愚按の違ひもあるべし、政治の道はひきつはなれたることにあらず、世の成行世界の全体を知し召すこと肝要なり、肝心の所は世界旅宿の境界なると、諸事の制度なきと、此二つに帰することなり、是によりて、戸籍を立て万民を住所に有付ると、町人百姓と武家と制度の差別を立ると、大名の家に制度を立ると御買上と云ことの之なきやうにすると、大体是にて世界はすぐなをり豊かに成るへし、
-
『墨子』尚同中子墨子曰く、方今の時の正長は、則ち本より古者と異なれり。之を譬うるに量るに五刑を以てするが若く然り。昔者、聖王は制して五刑を為り、以て天下を治む。有苗の五刑を制するに逮び至りては、以て天下を亂る。則ち此れ豈に刑の不善ならんや。刑を用うること則ち不善なるなり。是を以て先王の書、呂刑の道いて曰く、「苗民、練を用いず、折くに則ち刑し、唯だ五殺の刑を作り、法と曰う」と。則ち此れ善く刑を用うる者は以て民を治め、善く刑を用いざる者は以て五殺と為すを言う。則ち此れ豈に刑の不善ならんや。刑を用うること則ち不善なり、故に遂に以て五殺と為す。是を以て先王の書、術令の道いて曰く、「惟れ口は好を出だし戎を興す」と。則ち此れ善く口を用うる者は好を出だし、善く口を用いざる者は以て讒賊冦戎と為すを言う。則ち此れ豈に口の不善ならんや。口を用うること則ち不善なり、故に遂に以て䜛賊冦戎と為す。
-
『政談』諸色直段の事偖又用ゆるもの多き故に高直になる、此用ゆる者多きは制度なきより起れり、元来貴き人は善きものを用ひ、賤きものは悪きものを用ゆるときは、物各々其宜きを得るゆゑ諸色高直にはならぬを、今は賤き者まても善きものを用ゆると云は如何やうの事なれは、御城下に来集る民は素は田舎のものにて、麦粟種等の雑穀を食し、濁酒を飲み、味噌をも食せす、すくも火を焼き、麻木綿を織て着し、席薦の上に寝臥をしたるものか、心儘に御城下に来住する故、米味噌を食し、薪を焼き、炭の火にあたり、衣服も買整へて着し、善酒を飲み、田舎に之なき障子を立て、天井を張り、唐紙を張り、畳を敷き、蚊屋を釣るなとすることは、ぼていふりも皆斯の如し、少しも善き町人は衣服食事家居器物まても金さへあれは大名と同しことにて誰れ制する者なし、是諸物の用ゆる人多き故諸色の高直なること尤なり、
-
尉繚子・制談此くの如くんば、戦ひ勝つと雖も国益々弱く、地を得るも国益々貧しきは、国中の制弊るるに由るなり。
-
『政談』當時制度之なき事兼て制度を立てゝこれを安くするときは人々知る故分に過ぎたる奢りは自からなくて世上に費へなし、制度なければ上より奢りをするなと制し玉ふと云ふとも、是までが分相応にて是より上か奢りなりと云ふ「キツカケ」なけれはすへきやうなし、華美を好むは人情の常なる故制度なき故に世は次第に奢りに成行くなり、衣服の制度ある時は是は大名是は大役高官の人と云ふ事坐敷の上にても自から知るゝ故、人々貴きを敬ひ儀式自から乱れさるに、上一人より下は民までも何れも小袖を着上下を着ること同様にて、其衣服の地は金さへあれは何を着ても誰制する人なし、上下の見分けなき故高官大役の人下のものと別の立てやうなく、唯々いかつかましき体をして是にて高下を別のことに成り、我か身の君子の礼儀を失ふことをは知らず、御役人奉行なとの無礼甚しく、下たるものは礼に過ぎて這ひ屈み、諂ふ風俗甚しきも制度なきか故なり、
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る