潜夫論 / 賢難
今世主之於士也,目見賢則不敢用,耳聞賢則恨不及,雖自有知也,猶不能取,必更待群司之所舉,則亦懼失麟鹿而獲艾猳,奈何其不分者也?未過風之變者故也。俾使一朝奇政兩集,則險隘之徒,瑽茸之質,亦將別矣。夫眾小朋黨而固位,讒妒群吠齧賢,為禍敗也豈希?三代之以覆,列國之以滅,後人猶不能革。此萬官所以屢失守,而天命數靡常者也。詩云:「國既卒斬,何用不監?」嗚呼,時君俗主,不此察也!
新字:今世主之於士也,目見賢則不敢用,耳聞賢則恨不及,雖自有知也,猶不能取,必更待群司之所舉,則亦懼失麟鹿而獲艾猳,奈何其不分者也?未過風之変者故也。俾使一朝奇政両集,則険隘之徒,瑽茸之質,亦将別矣。夫衆小朋党而固位,讒妬群吠齧賢,為禍敗也豈希?三代之以覆,列国之以滅,後人猶不能革。此万官所以屡失守,而天命数靡常者也。詩云:「国既卒斬,何用不監?」嗚呼,時君俗主,不此察也!
書き下し
今の世主の士に於けるや、目に賢を見れば則ち敢えて用いず、耳に賢を聞けば則ち及ばざるを恨む、自ら知有りと雖も、猶お取る能わず、必ず更に群司の挙ぐる所を待つ、則ち亦た麟鹿を失いて艾猳を獲んことを懼る、奈何ぞ其の分かたざる者なるや。未だ風の変を過ぎざる者の故なり。俾し一朝奇政の両つながら集まれば、則ち険隘の徒、瑽茸の質、亦た将に別たれんとす。夫れ衆小は朋党して位を固め、讒妒は群れ吠えて賢を齧む、禍敗を為すこと豈に希ならんや。三代の以て覆り、列国の以て滅びしも、後人猶お革むる能わず。此れ万官の屢しば守を失い、天命の数しば常靡き所以の者なり。詩に云う、「国既に卒く斬たる、何を用てか監みざる」と。嗚呼、時君俗主、此れを察せざるかな。
現代語訳
今の世の君主は、士に対して、目の前に賢者がいても用いようとせず、賢者の評判を聞けば及ばないことを悔しがります。自分に見る目があっても採用することができず、さらに多くの役人の推挙を待たねばなりません。それでも麒麟や鹿を取り逃がして、雄豚を得るのではないかと恐れるのですから、どうして見分けがつかない者でいられるのでしょうか。それは、風の変化を経験していないからです。もし一朝にして、非凡な政治が重なって行われれば、狭量な連中や愚鈍な者たちも見分けがつくでしょう。多くの小人は徒党を組んで地位を固め、讒言や妬みで群れて吠え、賢者にかみつきます。災いと破滅をもたらすことは、どうして少ないでしょうか。三代が滅び、諸国が滅んだ理由も同じなのに、後の人はなお改められません。これが多くの官が度々職を失い、天命がしばしば定まらない理由です。詩には「国がすでに断たれたのに、なぜ手本を見て戒めないのか」とあります。ああ、当世の君主たちは、これを察しないのです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『十善法語』巻第五・不綺語戒総シテ王公大人ハ其威名日月ノ如ク。其言行泰山ノ雲ノ如ク。下民仰キ瞻ル。四海則ヲトル所シヤ。ソレ故其過モ日月ノ蝕ノ如ク。万国ノ見テ知トコロシヤ。美玉ノ瑕ノ如ク。好絹ノ汚ノ如ク。掩テ掩ハレヌシヤ。民庶ノ類ハ身微ニ事眇ナル故。戯謔ニ由テ身ヲ亡スニ至ルコト少ク。仮令身ヲ亡シ家ヲ敗ルモ。人ニ知ラレ世ニ数ヘラルルニ至ラヌシヤ。此ニ至テハ君タルコト誠ニ難ト云ヘキシヤ。
-
『韓非子』難四第三十九衛の孫文子、魯に聘す。公登れば亦登る。叔孫穆子趨り進みて曰く、「諸侯の会に、寡君未だ嘗て衛君に後れず。今子は寡君に後るること一等ならず。寡君未だ過つ所を知らざるなり。子其れ少しく安んぜよ。」孫子辞無く、亦悛むる容無し。穆子退きて人に告げて曰く、「孫子必ず亡びん。亡臣にして君に後れず、過ちて悛めざるは、亡の本なり。」或ひと曰く、天子道を失へば、諸侯之を伐つ、故に湯・武有り。諸侯道を失へば、大夫之を伐つ、故に斉・晋有り。臣にして君を伐つ者必ず亡びば、則ち是れ湯・武は王たらず、晋・斉は立たざるなり。孫子は衛に君たり、而して後に魯に臣たらず、臣の君なり。君に失有り、故に臣に得有り。亡を失有るの君に命ぜずして、亡を得有るの臣に命ずるは、察せず。魯は衛の大夫を誅するを得ず、而して衛君の明は悛めざるの臣を知らず。孫子是の二つ有りと雖も、巨ぞ以て亡びん。其の亡ぶる所以を其れ失ふは、君を得る所以なり。或ひと曰く、臣主の施は、分なり。臣能く君を奪ふ者は、得を以て相踦すればなり。故に其の分に非ずして取る者は、衆の奪ふ所なり。其の分を辞して取る者は、民の予ふる所なり。是を以て桀は㟭山の女を索め、紂は比干の心を求めて、天下離る。湯は身名を易へ、武は身詈を受けて、海内服す。趙咺は山に走り、田氏は外に僕して、斉・晋従ふ。則ち湯・武の王たる所以、斉・晋の立つ所以は、必ずしも其の君を以てするに非ざるなり、彼之を得て而る後に君を以て之に処るなり。
-
孫子・作戦篇故に兵は勝つを貴び、久しきを貴ばず。故に兵を知るの将は、民の司命、国家安危の主なり。
-
『講孟余話』離婁下 第五章此の章上篇第二十章と義小異なりと雖も、要するに別理あることなし。人君の戒めに於て此の語程親切なるはなし、三復詳味すべし。且つ上篇記す所と合はせ攷ふべし。
-
『墨子』兼愛下然り而して天下の士の兼を非とする者の言、猶お未だ止まざるなり。曰く、「意うに以て士を擇ぶ可くして、以て君子を擇ぶ可からず」と。姑く嘗みに兩つながら之を進めん。誰か以て二君と為し、其の一君をして兼を執らしめ、其の一君をして别を執らしめん。是の故に别君の言に曰く、「吾れ惡くんぞ能く吾が萬民の身を為むること吾が身を為むるが若くせんや。此れ泰だ天下の情に非ざるなり。人の地上に生くるや㡬何も無きなり。之を譬うるに猶お駟を馳せて隙を過ぐるがごときなり」と。是の故に退きて其の萬民を睹るに、饑うるも即ち食わしめず、寒きも即ち衣せしめず、疾病あるも侍養せず、死喪あるも葬埋せず。别君の言は此くの若く、行いも此くの若し。
-
『韓非子』難三第三十八且つ此れ亡王の俗、取・魯の民の自ら美とする所以にして、穆公独り之を貴ぶ、亦倒ならずや。文公出亡す。献公、寺人披をして之を蒲城に功めしむ。披、其の袪を斬る。文公、翟に奔る。恵公位に即き、又之を恵竇に功めしむるも、得ざるなり。文公国に反るに及び、披見えんことを求む。公曰く、「蒲城の役、君一宿を令するに、汝即ち至る。恵竇の難、君三宿を令するに、汝一宿す。何ぞ其れ速やかなるや。」披対へて曰く、「君令は二ならず。君の悪を除くには、惟だ堪へざるを恐る。蒲人・翟人、余に何か有らん。今公位に即く、其れ蒲・翟無からんや。且つ桓公は射鉤を置きて管仲を相とす。」君乃ち之に見ゆ。或ひと曰く、斉・晋の祀を絶つは、亦宜ならずや。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る