潜夫論 / 賢難
諺曰:「一犬吠形,百犬吠聲。」世之疾此,固久矣哉!吾傷世之不察貞偽之情也,故設虛義以喻其心,曰:今觀宰司之取士也,有似於司原之佃也。昔有司原氏者,燎獵中野,鹿斯東奔,司原縱噪之。西方之眾,有逐狶者,聞司原之噪也,競舉音而和之。司原聞音之眾,則反輟己之逐而往伏焉。遇夫俗惡之狶,司原喜而自以獲白瑞珍禽也。盡芻豢,單囷倉以養之,豕俯仰嚘咿,為作容聲,司原愈益珍之。居無何,烈風興而澤雨作,灌巨豕而惡塗渝。逐駭懼,真聲出,乃知是家之艾猳爾。此隨聲逐響之過也,眾遇之未赴信焉。
新字:諺曰:「一犬吠形,百犬吠声。」世之疾此,固久矣哉!吾傷世之不察貞偽之情也,故設虚義以喩其心,曰:今観宰司之取士也,有似於司原之佃也。昔有司原氏者,燎猟中野,鹿斯東奔,司原縦噪之。西方之衆,有逐狶者,聞司原之噪也,競舉音而和之。司原聞音之衆,則反輟己之逐而往伏焉。遇夫俗悪之狶,司原喜而自以獲白瑞珍禽也。尽芻豢,単囷倉以養之,豕俯仰嚘咿,為作容声,司原愈益珍之。居無何,烈風興而沢雨作,灌巨豕而悪塗渝。逐駭懼,真声出,乃知是家之艾猳爾。此随声逐響之過也,衆遇之未赴信焉。
書き下し
諺に曰く、「一犬形に吠ゆれば、百犬声に吠ゆ」と。世の此れを疾むこと、固より久しいかな。吾世の貞偽の情を察せざるを傷む、故に虚義を設けて以て其の心を喩さん、曰く、今宰司の士を取るを観るに、司原の佃に似たること有り。昔司原氏なる者有り、中野に燎猟し、鹿斯に東に奔る、司原縦ちて噪ぐ。西方の衆に、狶を逐う者有り、司原の噪ぐを聞き、競いて音を挙げて之に和す。司原音の衆きを聞き、則ち反って己の逐うを輟めて往きて伏す。夫の俗の悪む狶に遇い、司原喜びて自ら白瑞珍禽を獲たりと以えり。芻豢を尽くし、困倉を単くして以て之を養い、豕は俯仰して嚘咿し、為に容声を作す、司原愈いよ益ます之を珍とす。居ること何ばくも無く、烈風興りて沢雨作り、巨豕に灌ぎて悪塗渝る。逐は駭き懼れ、真声出づ、乃ち是れ家の艾猳なるを知るのみ。此れ声に随い響きを逐うの過ちなり、衆の遇うや未だ信に赴かざるなり。
現代語訳
ことわざに「一匹の犬が影を見て吠えると、百匹の犬がその声につられて吠える」といいます。世の人がこれを憎むことは、まことに昔からのことです。私は世の人が真実と偽りの実情を見分けないことを嘆くので、たとえ話を作ってその心に喩えましょう。今、宰相や役人が士を選ぶさまは、司原の狩りに似ています。昔、司原氏という者がいて、野原で火を焚いて狩りをし、鹿が東へ走ると、司原は放って大声を上げました。西の方にいた人々の中に、豚を追う者がいて、司原の叫び声を聞くと、争って声を上げてそれに合わせました。司原は声の多さを聞くと、自分の追うのをやめて、そちらへ行って身を伏せました。世間が嫌う豚に出会ったのに、司原は喜んで、自分は白い瑞兆の珍しい鳥獣を得たのだと思いました。飼料を尽くし、倉の穀物を使い果たして養うと、豚は上下に体を動かして鳴き、愛想を作ってみせたので、司原はますます珍重しました。ほどなく、強い風が起こり、恵みの雨が降り、大きな豚に降り注いで、塗った汚れが落ちました。追っていた者は驚き恐れ、本当の声が出て、ようやくそれが家の雄豚だとわかりました。これは声に従い響きを追った過ちであり、人々の出会い方は、まだ真実に赴いていないのです。
解説
この章句が説くこと
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