導師導古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

潜夫論 / 論榮

今之論者,多此之反。而又以九族,或以所來,則亦遠於獲真賢矣。昔自周公不求備於一人,況乎其德義既舉,乃可以宅故而弗之采乎?由餘生於五狄,越象產於人蠻,而功施齊秦,德立諸夏,令名美譽,載於圖書,至今不滅。張儀,中國之人也;衛鞅,康叔之孫也,而皆讒佞反覆,交亂四海。由斯觀之,人之善惡,不必世族;性之賢鄙,不必世俗。中堂生負苞,山野生蘭芷。夫和氏之璧,出於璞石;隨氏之珠,產於蜃蛤。詩云:「采葑采菲,無以下體。」故苟有大美,可尚於世,則雖細行小瑕,曷足以為累乎?是以用士,不患其非國士,而患其非中。世非患無臣,而患其非賢。蓋無羈縻。陳平、韓信,楚俘也,而高祖以為藩輔,實平四海,安漢室。衛青、霍去病,平陽之私人也,而武帝以為司馬,實攘北狄,郡河西。唯其任也,何卑遠之有。然則所難於非此士之人,非將相之世者,為其無是能而處是位,無是德而居是貴,無以我尚而不秉我勢也。

新字:今之論者,多此之反。而又以九族,或以所来,則亦遠於獲真賢矣。昔自周公不求備於一人,況乎其徳義既舉,乃可以宅故而弗之采乎?由余生於五狄,越象産於人蠻,而功施斉秦,徳立諸夏,令名美誉,載於図書,至今不滅。張儀,中国之人也;衛鞅,康叔之孫也,而皆讒佞反覆,交乱四海。由斯観之,人之善悪,不必世族;性之賢鄙,不必世俗。中堂生負苞,山野生蘭芷。夫和氏之璧,出於璞石;随氏之珠,産於蜃蛤。詩云:「采葑采菲,無以下体。」故苟有大美,可尚於世,則雖細行小瑕,曷足以為累乎?是以用士,不患其非国士,而患其非中。世非患無臣,而患其非賢。蓋無羈縻。陳平、韓信,楚俘也,而高祖以為藩輔,実平四海,安漢室。衛青、霍去病,平陽之私人也,而武帝以為司馬,実攘北狄,郡河西。唯其任也,何卑遠之有。然則所難於非此士之人,非将相之世者,為其無是能而処是位,無是徳而居是貴,無以我尚而不秉我勢也。

書き下し

今の論者は、多く此れに之れ反す。而も又九族を以てし、或いは来る所を以てするは、則ち亦た真賢を獲ることに遠し。昔周公自り一人に備わるを求めず、況んや其の徳義既に挙がり、乃ち故に宅りて之を采らざるべけんや。由余は五狄に生まれ、越象は人蛮に産まれ、而も功は斉・秦に施し、徳は諸夏に立て、令名美誉、図書に載せ、今に至るまで滅びず。張儀は、中国の人なり、衛鞅は、康叔の孫なり、而も皆讒佞反覆にして、四海を交乱す。斯に由りて観れば、人の善悪は、必ずしも世族ならず、性の賢鄙は、必ずしも世俗ならず。中堂に負苞を生じ、山野に蘭芷を生ず。夫れ和氏の璧は、璞石より出で、隨氏の珠は、蜃蛤より産す。詩に云う、「葑を采り菲を采るに、下体を以てする無かれ」と。故に苟くも大美有り、世に尚ぶべくんば、則ち細行小瑕有りと雖も、曷ぞ以て累と為すに足らんや。是を以て士を用うるに、其の国士に非ざるを患えずして、其の中に非ざるを患う。世は臣無きを患えずして、其の賢に非ざるを患う。蓋し羈縻無し。陳平・韓信は、楚の俘なり、而るに高祖は以て藩輔と為し、実に四海を平らげ、漢室を安んず。衛青・霍去病は、平陽の私人なり、而るに武帝は以て司馬と為し、実に北狄を攘い、河西に郡す。唯だ其の任なり、何ぞ卑遠の有らん。然らば則ち難とする所は、此の士に非ざるの人、将相の世に非ざる者、是の能無くして是の位に処り、是の徳無くして是の貴に居り、我を尚ぶ無くして我が勢を秉らざるを為すことに非ず。

現代語訳

今の論者は、多くがこの道理に反しています。しかも九族や出身を基準にするのは、本当の賢者を得ることからなお遠いことです。昔、周公は一人にすべてが備わることを求めませんでした。まして、徳義がすでに挙がっているのに、古い居所のせいで採らないことがあってよいでしょうか。由余は五狄に生まれ、越象は南方の異民族に生まれましたが、功績は斉や秦に及び、徳は諸夏に立ち、良い名声は書物に載り、今に至るまで消えません。張儀は中国の人、衛鞅は康叔の孫でしたが、いずれも讒言とへつらいで二心があり、四海を乱しました。これによって見れば、人の善悪は必ずしも家柄ではなく、性質の賢愚は必ずしも世間の風習によりません。堂の中に負苞(悪草)が生え、山野に蘭や芷(香草)が生えます。和氏の璧は原石から出て、隨侯の珠は大蛤から産まれました。《詩》に「かぶや大根を採るのに、根の部分だけで判断するな」とあります。ですから、もし大いなる美点があって世に尊ぶべきなら、細かな行いや小さな瑕があっても、どうして足を引っ張る理由になるでしょうか。そこで士を用いるときは、国士でないことを心配せず、その人が中庸でないことを心配します。世は臣下がいないことを心配せず、その人が賢でないことを心配します。結局、手綱をつけて制するものはありません。陳平・韓信は楚の捕虜でしたが、高祖は藩輔として用い、実際に四海を平らげて漢室を安んじました。衛青・霍去病は平陽公主の私的な家人でしたが、武帝は司馬に任じ、実際に北狄を退け河西に郡を置きました。それは任用の問題であって、身分が低く遠いかどうかは関係ありません。そうであれば、難しいのは、この士ではない人、将相の家柄ではない者が、その能力がないのにその位に居り、その徳がないのにその貴さに居り、自分を尊ぶ者がないのに自分の勢いをつかまないことにあるのではありません。

解説

家柄や出身で人を選ぶことの誤りを、前段に続いてさらに事例で示す段です。由余・越象のような辺境の出身者が功を立て、張儀・衛鞅のような中華の名門が乱を起こした例、そして陳平・韓信・衛青・霍去病のように出自が低くとも抜擢されて功を成した例が並びます。論点は出身より任用、すなわち登用する側の目と度量が人材の価値を決める、という点です。最後の一文は原文が難しく、意味を確定しにくい箇所です。現代の組織に当てはめれば、中途採用者や外部人材、非主流の経歴を持つ人を登用できるかが問われます。小さな欠点を理由に大きな長所を捨てない、という人材登用の基本を示す段です。

この章句が説くこと

論栄出身登用抜擢人材潜夫論

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る