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潜夫論 / 務本

今學問之士,好語虛無之事,爭著雕麗之文,以求見異於世。品人鮮識,從而高之,此傷道德之實,而或蒙夫之大者也。詩賦者,所以頌善醜之德,泄哀樂之情也。故溫雅以廣文,興喻以盡意。今賦頌之徒,苟為饒辯屈蹇之辭,競陳誣罔無然之事。以索見怪於世,愚夫戇士,從而奇之,此悖孩童之思,而長不誠之言者也。內孝悌於父母,正操行於閨門,所以烈士也。今多務交遊以結黨,助偷世竊名以取濟渡,誇末之徒,從而尚之,此逼貞士之節,而衒世俗之心者也。養生順志,所以為孝也。今多違志儉養,約生以待終,終沒之後,乃崇飾喪紀以言孝,盛饗賓旅以求名,誣善之徒,從而稱之,此亂孝悌之真行,而誤後生之痛者也。忠正以事君,信法以理下,所以居官也。

新字:今学問之士,好語虚無之事,争著雕麗之文,以求見異於世。品人鮮識,従而高之,此傷道徳之実,而或蒙夫之大者也。詩賦者,所以頌善醜之徳,泄哀楽之情也。故温雅以広文,興喩以尽意。今賦頌之徒,苟為饒弁屈蹇之辞,競陳誣罔無然之事。以索見怪於世,愚夫戇士,従而奇之,此悖孩童之思,而長不誠之言者也。内孝悌於父母,正操行於閨門,所以烈士也。今多務交遊以結党,助偸世窃名以取済渡,誇末之徒,従而尚之,此逼貞士之節,而衒世俗之心者也。養生順志,所以為孝也。今多違志倹養,約生以待終,終没之後,乃崇飾喪紀以言孝,盛饗賓旅以求名,誣善之徒,従而称之,此乱孝悌之真行,而誤後生之痛者也。忠正以事君,信法以理下,所以居官也。

書き下し

今学問の士、好んで虚無の事を語り、争いて雕麗の文を著し、以て世に異を見われんことを求む。品人識ること鮮く、従いて之を高しとす、此れ道徳の実を傷い、而して蒙を或う大なる者なり。詩賦は、善醜の徳を頌え、哀楽の情を泄す所以なり。故に温雅にして以て文を広め、興喩して以て意を尽くす。今賦頌の徒は、苟くも饒弁屈蹇の辞を為し、競いて誣罔無然の事を陳ぶ。以て怪を世に見われんことを索め、愚夫戇士、従いて之を奇とす、此れ孩童の思いに悖り、而して不誠の言を長ずる者なり。内に父母に孝悌し、操行を閨門に正すは、士を烈しくする所以なり。今多く交遊を務めて以て党を結び、偷世竊名を助けて以て済渡を取る、誇末の徒、従いて之を尚ぶ、此れ貞士の節に逼り、而して世俗の心を衒う者なり。生を養い志に順うは、以て孝と為す所以なり。今多く志に違い養を儉にし、生を約して以て終わるを待ち、終没の後、乃ち喪紀を崇飾して以て孝を言い、盛んに賓旅を饗して以て名を求む、誣善の徒、従いて之を称す、此れ孝悌の真行を乱し、而して後生の痛みを誤る者なり。忠正以て君に事え、信法以て下を理むるは、官に居る所以なり。

現代語訳

今の学問の士は、好んで虚無の事を語り、競って飾り立てた文を書き、世に変わった者として現れようとします。人を品定めする者に見識が乏しく、それに従って持ち上げるので、道徳の実を傷つけ、人々を惑わす大きな害になっています。詩賦は、善悪の徳をたたえ、喜びや悲しみの情を表す手段です。ですから穏やかで雅やかに文を広げ、たとえによって意を尽くします。ところが今の賦頌の徒は、いやしくも口達者でひねくれた言葉を作り、競って偽りでとりとめのない事を並べています。世に奇異を見せようとし、愚かな者がそれを珍しがるのは、子どもの思いにも背き、不誠実な言葉を増やすことです。家では父母に孝悌を尽くし、閨門で行いを正すのが、士を輝かせる道です。ところが今は多くが交遊に努めて徒党を結び、世を欺き名を盗む手助けをして渡世の足がかりを得ており、末の事を誇る者がそれを尊びます。これは貞士の節操を圧迫し、世俗の心を見せびらかすものです。生を養い志に従うのが孝です。ところが今は多くが親の志に背いて生前は倹約し、生を切り詰めて死を待ち、没した後に葬儀を盛大に飾って孝を言い、客を盛んにもてなして名を求めます。善を偽る者がそれを称えますが、孝悌の真の行いを乱し、後の世代の悲しみを誤らせるものです。忠と正をもって君に仕え、信と法をもって下を治めるのが、官に居る者のあり方です。

解説

前段の本末論を、学問・詩賦・交遊・孝・官という五つの領域に及ぼした続きです。王符が批判するのは、見かけを飾り、人目を引くために本来の務めから外れる風潮で、学問は奇をてらう文章に、孝は派手な葬儀に、交遊は徒党づくりに傾いたと見ます。注目されるのは、そうした人を持ち上げる側の見識の乏しさにも責任があるとする点です。評価する側が見かけに流されれば、実のある人が育たなくなります。現代の人事評価でも、発信力や人脈の見栄えが成果や誠実さより重く扱われることがあります。何を評価の基準にするかが組織の風土を決める、という管理職への警告として読めます。文は次の段へ続きます。

この章句が説くこと

務本虚飾評価孝交遊潜夫論

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