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言志四録 / 言志録 第百十四条 孝子を賞するの道

近代賞孝子。賜金帛粟米以旌之。於風勵頽俗之意則得矣。但其賞之。當原諸孝子之心爲可。孝子之心。愛親之外無他念。其身之艱苦。且甘受之。况敢求名乎。故金帛粟米之賜。宜厚於其親而薄於其子。葢非薄於其子。所以厚於其親者。即所以厚於其子也。賞親之辭曰。庭訓有素。賞子之辭曰。能從庭訓。如此則孝子之素願足矣。

新字:近代賞孝子。賜金帛粟米以旌之。於風励頽俗之意則得矣。但其賞之。当原諸孝子之心為可。孝子之心。愛親之外無他念。其身之艱苦。且甘受之。況敢求名乎。故金帛粟米之賜。宜厚於其親而薄於其子。葢非薄於其子。所以厚於其親者。即所以厚於其子也。賞親之辞曰。庭訓有素。賞子之辞曰。能従庭訓。如此則孝子之素願足矣。

書き下し

近代孝子を賞するに、金帛粟米を賜ひて以て之を旌す。頽俗を風励するの意に於ては則ち得たり。但だ其の之を賞するは、当に諸を孝子の心に原ぬべくして可なり。孝子の心は、親を愛するの外に他念無し。其の身の艱苦すら、且つ甘んじて之を受く。況んや敢へて名を求めんや。故に金帛粟米の賜は、宜しく其の親に厚くして其の子に薄くすべし。蓋し其の子に薄くするに非ず。其の親に厚くする所以の者は、即ち其の子に厚くする所以なり。親を賞するの辞に曰く、「庭訓素有り」と。子を賞するの辞に曰く、「能く庭訓に従ふ」と。此くの如くんば則ち孝子の素願足れり。

現代語訳

近ごろ孝行な子を表彰するのに、金銭や絹、穀物を下賜してその行いを顕彰している。これは廃れた風俗を励まし改めるという意味では、目的にかなっている。ただ、表彰するにあたっては、孝子の心に立ち返って考えるのがよい。孝子の心には、親を愛すること以外に何の思いもない。自分の身の苦労さえ、甘んじて受け入れている。まして名誉を求めたりするはずがない。だから金銭や穀物の下賜は、親に手厚くし、子には薄くするのがよい。それは子を軽んじるのではない。親に手厚くすることが、そのまま子に手厚くすることになるのである。親を表彰する言葉には「日ごろから家庭での教えが行き届いていた」と言い、子を表彰する言葉には「よく家庭の教えに従った」と言う。このようにすれば、孝子のかねてからの願いは満たされるであろう。

解説

幕府や諸藩が行っていた孝子表彰のあり方に、具体的な提案をした一条です。江戸時代には孝行者を顕彰し褒美を与える政策が盛んで、幕府は『官刻孝義録』も編んでいます。一斎はその意義を認めつつ、孝子の心に照らして考えよと言います。孝子は親を思うばかりで名誉など求めていないのだから、褒美は親に厚くし、表彰の言葉も親の「庭訓」、すなわち家庭の教えを称えるほうが、孝子の本当の願いにかなうというのです。「庭訓」は『論語』で孔子が庭で子の鯉に教えた故事に由来します。人を評価し報いるとき、相手が何を喜ぶのかを本人の動機から考えることの大切さを示す一条です。

この章句が説くこと

孝賞評価動機為政

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