省諐録 / 第56条
苟得其心。五州之人。皆可得而使也。厚而利之。導而舍之。敵閒之來閒我者。亦爲我用矣。何況我民。
新字:苟得其心。五州之人。皆可得而使也。厚而利之。導而舎之。敵閒之来閒我者。亦為我用矣。何況我民。
書き下し
苟くも其の心を得ば、五州の人、皆得て使ふべきなり。厚くして之を利し、導きて之を舎す。敵閒の来たりて我を閒する者も、亦た我が用と為らん。何ぞ況んや我が民をや。
現代語訳
もしその心を得られたなら、五州の人はみな使うことができます。手厚く遇して利を与え、導いて身を落ち着けさせる。そうすれば、敵の間者が来てこちらを探ろうとしても、こちらの役に立つ者になります。まして我が民ならなおさらです。
解説
民の心を得れば、世界のどの地の人でも使うことができる、と象山は言います。手厚く遇して利を与え、導いて身を落ち着かせれば、こちらを探りに来た敵の間者さえ役に立つ者になる。まして自国の民ならなおさらだ、と結びます。「五州」は世界の各地をさす語で、当時の外国観を背景にしつつも、人を動かすのは力や命令でなく、心を得ることだという原理が述べられています。現代の職場でも、部下や取引先を動かすのは立場ではなく、相手に利と居場所を与える姿勢です。成果が出ないとき、命令を強める前に、相手の心を得られているかを点検する視点を与えてくれます。
この章句が説くこと
人心厚遇導く間者心を得る省諐録
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