省諐録 / 第34条
不知彼。不知己。每戰必敗。固也。然知彼知己。在今時。未可言戰。悉善彼之所善。而不喪己之所能。然後始可以言戰。
新字:不知彼。不知己。毎戦必敗。固也。然知彼知己。在今時。未可言戦。悉善彼之所善。而不喪己之所能。然後始可以言戦。
書き下し
彼を知らず、己を知らざれば、戰ふ毎に必ず敗る。固よりなり。然れども彼を知り己を知るも、今時に在りては、未だ戰を言ふべからず。悉く彼の善くする所を善くして、己の能くする所を喪はず、然る後に始めて以て戰を言ふべし。
現代語訳
相手を知らず、自分も知らなければ、戦うたびに必ず敗れます。これはもとより当然のことです。けれども、相手を知り自分を知っただけでは、今の時勢では、まだ戦いを口にすることはできません。相手の得意とするところをことごとく自分も得意にし、そのうえで自分の持つ能力を失わない。そうしてはじめて、戦いを語ることができます。
解説
孫子で名高い「彼を知り己を知る」を、今の時勢では足りないとする条です。相手と自分の実情を知るだけでは戦いを言えず、相手の長所をすべて身につけたうえで、自分の持ち味も失わないことが必要だと説きます。語られているのは、洋式の武備を学ぶことと自国の長所を守ることの両立です。現代の仕事に置き換えると、競合を分析しただけでは勝てず、相手の強みを取り込みながら自社の持ち味を損なわない、という二段構えが問われます。真似るだけでも守るだけでも足りないことを、この条は具体的な順序で示しています。
この章句が説くこと
知彼知己競合取り入れる持ち味戦省諐録
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