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省諐録 / 第30条

今之當將帥之任者。非公侯貴人。卽膏梁氏族。平日以飮酒歌舞爲娛。不知兵謀師律爲何事。一旦有國家之急。誰能爲軍士之所服。而遏敵人之衝突。是今之深患也。故予嘗欲倣西洋武備之大略。於天下兵籍外。結故家世族忠勇剛毅。一可當十者。以爲義會。一以保國護民爲志。其初入會。校試稽攷。果不憚艱苦。方始聽入焉。推有韜略謀猷統馭之才者。爲之長。遇警急之日。則鳩集成師。以待官之指揮。庶乎攘寇植勳。或居於在兵籍者之上也。

新字:今之当将帥之任者。非公侯貴人。即膏梁氏族。平日以飲酒歌舞為娯。不知兵謀師律為何事。一旦有国家之急。誰能為軍士之所服。而遏敵人之衝突。是今之深患也。故予嘗欲倣西洋武備之大略。於天下兵籍外。結故家世族忠勇剛毅。一可当十者。以為義会。一以保国護民為志。其初入会。校試稽攷。果不憚艱苦。方始聴入焉。推有韜略謀猷統馭之才者。為之長。遇警急之日。則鳩集成師。以待官之指揮。庶乎攘寇植勲。或居於在兵籍者之上也。

書き下し

今の將帥の任に當たる者は、公侯貴人に非ざれば、卽ち膏梁の氏族なり。平日は飮酒歌舞を以て娛しみと爲し、兵謀師律の何事たるかを知らず。一旦國家の急有らば、誰か能く軍士の服する所と爲りて、敵人の衝突を遏めん。是れ今の深患なり。故に予嘗て西洋武備の大略に倣ひ、天下の兵籍の外に、故家世族の忠勇剛毅、一にして十に當たるべき者を結び、以て義會を爲さんと欲す。一に保國護民を以て志と爲し、其の初めて入會するや、校試稽攷し、果たして艱苦を憚らざれば、方に始めて入るを聽す。韜略謀猷統馭の才有る者を推して、之が長と爲し、警急の日に遇はば、則ち鳩集して師を成し、以て官の指揮を待つ。庶はくは寇を攘ひ勳を植つること、或いは兵籍に在る者の上に居らんか。

現代語訳

今、将帥の任に当たっている者は、公侯や貴人でなければ、裕福な家柄の者です。ふだんは酒を飲み歌い踊ることを楽しみとして、兵の謀や軍の規律が何であるかを知りません。ひとたび国に急が起これば、誰が兵士たちから慕われ従われて、敵の突進を食い止められるでしょうか。これが今の深刻な憂いです。そこで私はかつて、西洋の武備の大略にならって、天下の兵籍の外に、旧家や名門の出で忠義・勇気・剛毅を備え、一人で十人に当たるほどの者を集めて、義会を作ろうと考えました。ひたすら国を保ち民を護ることを志とし、入会の際には試験をして調べ、苦労をいとわないことを確かめてから、初めて入ることを許します。兵法や謀略、人を統率する才のある者を推して長とし、急を告げる日には集まって部隊を編成し、官の指揮を待ちます。そうすれば、賊を払い手柄を立てることでは、あるいは兵籍にある者の上に出られるかもしれません。

解説

象山は、将帥の座にある者が高貴な身分か裕福な家柄ばかりで、日ごろは酒と歌舞に興じ、兵法を知らないと批判します。そこで、兵籍の外に旧家や名門の出の有志を試験で選んで集め、保国護民を志とする義会を作る構想を述べます。身分に頼る人事への不信と、試験で選ぶ実力主義への志向が見えます。ただし構想の担い手を旧家名門に限る点には当時の身分観が残っています。現代の組織でも、肩書や家柄に当たる経歴だけで責任者を決めると、いざという時に人がついてきません。普段の選抜が有事に効いてくるという視点は、管理職の登用に引き寄せて読めます。

この章句が説くこと

将帥人選義会有事実力省諐録

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