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政談 / 妾を隱し物とする事

妾と云ふものはなくて叶はさる者なり、當時は妾をは隱し者のやうにすること習はしの惡しきなり、古は天子諸侯ともに一娶る女とて姪娣八人付き來る、皆な妾なり、何れも其の后の親類にて、而かも家來の娘なり、卿大夫のことは見えす、古は世官にてなけれは其の法なきなるへし、されとも子なけれは妾を置くことは通法なり、今の世は表向き一妻一妾と高下共に立て置き候故、妾は隱し者になりて却て色々の惡事生するなり、

新字:妾と云ふものはなくて叶はさる者なり、当時は妾をは隠し者のやうにすること習はしの悪しきなり、古は天子諸侯ともに一娶る女とて姪娣八人付き来る、皆な妾なり、何れも其の后の親類にて、而かも家来の娘なり、卿大夫のことは見えす、古は世官にてなけれは其の法なきなるへし、されとも子なけれは妾を置くことは通法なり、今の世は表向き一妻一妾と高下共に立て置き候故、妾は隠し者になりて却て色々の悪事生するなり、

書き下し

妾と云ふものはなくて叶はさる者なり、当時は妾をは隠し者のやうにすること習はしの悪しきなり、古は天子諸侯ともに一娶る女とて姪娣八人付き来る、皆な妾なり、何れも其の后の親類にて、而かも家来の娘なり、卿大夫のことは見えす、古は世官にてなけれは其の法なきなるへし、されとも子なけれは妾を置くことは通法なり、今の世は表向き一妻一妾と高下共に立て置き候故、妾は隠し者になりて却て色々の悪事生するなり、

現代語訳

妾というものは、なくてはならないものである。今は妾を隠し者のように扱うのが、ならわしの悪いところである。古は天子も諸侯も、一人の女を娶ると姪や妹など八人が付いて来た。みな妾である。いずれもその后の親類で、しかも家来の娘である。卿・大夫のことは書物に見えない。古は世襲の官でなかったので、その法がなかったのだろう。それでも子がなければ妾を置くのは通例である。今の世は、表向きは一妻一妾と身分の上下ともに立てているので、妾は隠し者になって、かえって色々な悪事が生じるのである。

解説

徂徠は、跡継ぎを得るために妾は必要だという当時の通念に立ったうえで、問題は妾を表向き認めず「隠し者」にしていることだとする。古代中国では后の親類が付き従って嫁ぐ制度があり、妾の存在が礼の中に位置づけられていた。建前と実態がずれると、管理されない領域で不正が生まれるという指摘である。当時の家と婚姻の観念は時代の制約として読むべきだが、現実に存在するものを公式の仕組みの外に置くことの危うさは、現代の組織管理にも通じる洞察である。

この章句が説くこと

建前実態礼妾制度管理

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