都鄙問答 / 卷之二・或學者、商人ノ學問ヲ譏ノ段
曰、然ラバ賣物ニ利ヲ取ラズ、元金ニ賣渡スコトヲ敎ルヤ、習フ者、外ニハ利ヲ取ラヌコトヲ學ビ、內證ニテハ利ヲ取レバ、實ノ敎ニアラズシテ、反テ詐リヲ敎ルト云者ナリ、如何トナレバ、元來ナラヌコトヲ强ニヨリテ、加樣ニ前後合ザルコトアリ、商人利欲ナクシテスムコトハ、終聞ザルコトナリ、
新字:曰、然ラバ売物ニ利ヲ取ラズ、元金ニ売渡スコトヲ教ルヤ、習フ者、外ニハ利ヲ取ラヌコトヲ学ビ、内証ニテハ利ヲ取レバ、実ノ教ニアラズシテ、反テ詐リヲ教ルト云者ナリ、如何トナレバ、元来ナラヌコトヲ強ニヨリテ、加様ニ前後合ザルコトアリ、商人利欲ナクシテスムコトハ、終聞ザルコトナリ、
書き下し
曰く、然らば売物に利を取らず、元金に売り渡すことを教ゆるや。習ふ者、外には利を取らぬことを学び、内証にては利を取れば、実の教にあらずして、反りて詐りを教ゆると云ふ者なり。如何となれば、元来ならぬことを強ふるによりて、かやうに前後合はざることあり。商人利欲なくしてすむことは、終に聞かざることなり。
現代語訳
学者は言いました。「それなら品物に利を乗せず、仕入れ値で売り渡せと教えるのですか。習う者が、表では利を取らないことを学び、裏では利を取るのなら、それは本当の教えではなく、かえって偽りを教えているというものです。なぜなら、もともとできないことを無理強いするから、こうして前後の食い違いが生じるのです。商人が利を求めずにやっていけるなどとは、ついぞ聞いたことがありません。」
解説
学者の追及は鋭くなります。無欲を教えるなら、利を取らずに仕入れ値で売れと教えるのか。それができないなら、表向きの建前と裏の実態が食い違い、結局は偽りを教えることになる、という論理です。建前の道徳を押しつけると現場は面従腹背になる、という指摘は今の企業倫理にもそのまま当てはまります。梅岩はここで利を否定するのではなく、利を取ること自体の正当性を論じる方向へ議論を進めます。次の単位から、商人の利を武士の俸禄にたとえる有名な主張が出てきます。
この章句が説くこと
利建前偽り商人元金
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