政談 / 貴賤共に女の所業の事
又上總の國の百姓のならはしにて、女嫁入をして二十日ばかりも過くれは里へ歸りて三十日ほと里に居るに、里へ歸るへきとき木綿一段織るへきなと、我夫の家にて貰ひて持ち行き、卅日の內に糸にとり木綿一段織りて持ちて夫の家へ歸り、之を夫に着すること定まりたる風俗にて、皆々斯の如くする、百姓の家なとには箇樣の古禮遺りて殊勝の事なるに、大名武家には何も尤もなる古禮はなきは、むげに百姓に劣りたることならすや、
新字:又上総の国の百姓のならはしにて、女嫁入をして二十日ばかりも過くれは里へ帰りて三十日ほと里に居るに、里へ帰るへきとき木綿一段織るへきなと、我夫の家にて貰ひて持ち行き、卅日の内に糸にとり木綿一段織りて持ちて夫の家へ帰り、之を夫に着すること定まりたる風俗にて、皆々斯の如くする、百姓の家なとには箇様の古礼遺りて殊勝の事なるに、大名武家には何も尤もなる古礼はなきは、むげに百姓に劣りたることならすや、
書き下し
又上総の国の百姓のならはしにて、女嫁入をして二十日ばかりも過くれは里へ帰りて三十日ほと里に居るに、里へ帰るへきとき木綿一段織るへきなと、我夫の家にて貰ひて持ち行き、卅日の内に糸にとり木綿一段織りて持ちて夫の家へ帰り、之を夫に着すること定まりたる風俗にて、皆々斯の如くする、百姓の家なとには箇様の古礼遺りて殊勝の事なるに、大名武家には何も尤もなる古礼はなきは、むげに百姓に劣りたることならすや、
現代語訳
また上総の国の百姓のならわしでは、女が嫁入りして二十日ばかり過ぎると里へ帰って三十日ほど里にいるが、里へ帰るときに木綿一反を織るためのものなどを夫の家でもらって持って行き、三十日のうちに糸に取り、木綿一反を織って夫の家へ持ち帰り、これを夫に着せるのが定まった風俗で、みなこのようにする。百姓の家などにはこのような古礼が残っていて殊勝なことなのに、大名や武家にはもっともな古礼が何もないのは、むやみに百姓に劣っていることではないか。
解説
この章句が説くこと
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