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政談 / 誓詞の事

唯若き御主人なとの虛病の疑ひ甚しきを、時の執政其の疑ひを晴さんために誓文を立てさせたるか、今の世には例となりたるなるへし、されども當分埓を明けたるまての仕方にて、誓文には虛實は知れぬことなれは詮もなきことなる上に、跡の殘りを見れは僞りを敎へ神明をなきものと思はすることになりて、甚宜しからさることなり、其の支配頭組子の治めを職分の第一とすることならは、誓文狀を出さすとも自から虛病は少しは仕方あるへきなり、

新字:唯若き御主人なとの虚病の疑ひ甚しきを、時の執政其の疑ひを晴さんために誓文を立てさせたるか、今の世には例となりたるなるへし、されども当分埓を明けたるまての仕方にて、誓文には虚実は知れぬことなれは詮もなきことなる上に、跡の残りを見れは偽りを教へ神明をなきものと思はすることになりて、甚宜しからさることなり、其の支配頭組子の治めを職分の第一とすることならは、誓文状を出さすとも自から虚病は少しは仕方あるへきなり、

書き下し

唯若き御主人なとの虚病の疑ひ甚しきを、時の執政其の疑ひを晴さんために誓文を立てさせたるか、今の世には例となりたるなるへし、されども当分埓を明けたるまての仕方にて、誓文には虚実は知れぬことなれは詮もなきことなる上に、跡の残りを見れは偽りを教へ神明をなきものと思はすることになりて、甚宜しからさることなり、其の支配頭組子の治めを職分の第一とすることならは、誓文状を出さすとも自から虚病は少しは仕方あるへきなり、

現代語訳

ただ、若い御主人などが仮病の疑いをひどく抱いたのを、時の執政がその疑いを晴らすために誓文を立てさせたのが、今の世では先例となったのであろう。けれども、それはその場のけりをつけただけのやり方であって、誓文では虚実はわからないのだから意味がないうえに、後に残ったものを見れば、偽りを教え、神明をないものと思わせることになって、はなはだよろしくない。その支配頭が組の者を治めることを職分の第一とするならば、誓文状を出させなくても、自然と仮病には少しは手の打ちようがあるはずである。

解説

病気届けへの誓文は、若い主君の疑いを晴らすために執政が一度だけ取った措置が先例として残ったものだろうと徂徠は推測する。その場は収まっても、誓文で真偽はわからず、残るのは偽りに慣れ神を軽んじる風だけである。本当の対策は、組頭が組の者を治めることを職分の第一とし、日頃から一人一人の事情を知ることだという。書類による証明に頼るのは、管理者が部下を知らないことの裏返しである。応急措置が恒久ルールに化ける過程にも注意を促している。

この章句が説くこと

誓文先例職分管理仮病政談

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