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政談 / 御徒士衆與力を頭の心儘に入るゝ事並に御旗本諸役人に召出さるゝ事

故に聖人の道にも賢才を擧けよと有りて、下より立つることを宣ひ、又歷代を考ふるに賢才の人は皆な下より出たることにて、代々大祿の人には至りて稀なること前記の如し、代々大祿高官なる人も、其の元祖は何れも戰國のとき生死の塲を經て樣々の難義に遭ひたるより才智生して、夫故功を立てゝ大祿高官になりたれとも、其子孫は代々大祿高官なる故、生れからの上人にて何の難義をせねは才智の生すへきやうなし、

新字:故に聖人の道にも賢才を挙けよと有りて、下より立つることを宣ひ、又歴代を考ふるに賢才の人は皆な下より出たることにて、代々大禄の人には至りて稀なること前記の如し、代々大禄高官なる人も、其の元祖は何れも戦国のとき生死の塲を経て様々の難義に遭ひたるより才智生して、夫故功を立てゝ大禄高官になりたれとも、其子孫は代々大禄高官なる故、生れからの上人にて何の難義をせねは才智の生すへきやうなし、

書き下し

故に聖人の道にも賢才を挙けよと有りて、下より立つることを宣ひ、又歴代を考ふるに賢才の人は皆な下より出たることにて、代々大禄の人には至りて稀なること前記の如し、代々大禄高官なる人も、其の元祖は何れも戦国のとき生死の塲を経て様々の難義に遭ひたるより才智生して、夫故功を立てゝ大禄高官になりたれとも、其子孫は代々大禄高官なる故、生れからの上人にて何の難義をせねは才智の生すへきやうなし、

現代語訳

だから聖人の道にも「賢才を挙げよ」とあって、下から引き立てることをおっしゃり、また歴代を考えても、賢才の人はみな下から出たのであって、代々大禄の家の人にはきわめてまれであることは前に記したとおりである。代々大禄高官の人も、その元祖はいずれも戦国の時に生死の場を経て、さまざまな難儀に遭ったことから才知が生じ、それゆえ功を立てて大禄高官になったのだが、その子孫は代々大禄高官であるので、生まれながらの上の人であって、何の難儀もしないから、才知の生じようがない。

解説

『論語』子路篇に、仲弓が政を問うと孔子が「賢才を挙げよ」と答える一節がある。徂徠はこれを下から人を引き立てよという意味に読み、歴史を見ても賢才は下から出て、代々の大禄の家からはまれだとする。大名や重臣の元祖は戦国の生死の場で苦難を経て才知を得たが、その子孫は生まれながらに上にいて苦労を知らないので、才知の育ちようがない。現代の同族企業でも、創業者の苦労を知らない後継者が経営を担うとき、同じ課題が生まれる。意図して苦労の場を経験させる工夫が要る。

この章句が説くこと

賢才論語登用世襲後継者政談

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