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政談 / 目付並に百日目付の事

又京都百日目付と云ふは何の目付なるやらん寺々のゑんき寶物を見てありくを役とす、埓も無きことなり、是は京都と云ふ所堂上方の在所にて長袖はかりの所なる故、一々に目くらしを立てゝ惡事を見出たすやうにする時は却て治めの害となるとて、昔日智惠ある老中の斯くさせたるか今例と成りたるなるへし、されとも何事も唯々形計りになりて、其の身も何の御用にてのぼりたると云ふことをも知らぬは如何なることやらん、伏見奈良山田等の奉行頭助允目あり度こと也、

新字:又京都百日目付と云ふは何の目付なるやらん寺々のゑんき宝物を見てありくを役とす、埓も無きことなり、是は京都と云ふ所堂上方の在所にて長袖はかりの所なる故、一々に目くらしを立てゝ悪事を見出たすやうにする時は却て治めの害となるとて、昔日智恵ある老中の斯くさせたるか今例と成りたるなるへし、されとも何事も唯々形計りになりて、其の身も何の御用にてのぼりたると云ふことをも知らぬは如何なることやらん、伏見奈良山田等の奉行頭助允目あり度こと也、

書き下し

又京都百日目付と云ふは何の目付なるやらん寺々のゑんき宝物を見てありくを役とす、埓も無きことなり、是は京都と云ふ所堂上方の在所にて長袖はかりの所なる故、一々に目くらしを立てゝ悪事を見出たすやうにする時は却て治めの害となるとて、昔日智恵ある老中の斯くさせたるか今例と成りたるなるへし、されとも何事も唯々形計りになりて、其の身も何の御用にてのぼりたると云ふことをも知らぬは如何なることやらん、伏見奈良山田等の奉行頭助允目あり度こと也、

現代語訳

また京都の百日目付というのは何の目付であろうか。寺々の縁起や宝物を見て歩くのを役としている。とりとめもないことである。これは、京都という所が堂上方(公家)の住む所で、長袖(公家や僧侶)ばかりの所なので、いちいち目を光らせて悪事を見つけ出すようにすると、かえって治めの害になるとして、昔の知恵ある老中がこうさせたのが、今では先例となっているのであろう。しかし何事もただ形ばかりになって、当人も何の御用で上京したのかも知らないのは、どうしたことであろうか。伏見・奈良・山田などの奉行には、頭・助・允・目(長官から下役までの四等の役)を置きたいものである。

解説

京都の百日目付は、公家や僧侶の町で監視を厳しくしすぎれば治めの妨げになるという、昔の老中の配慮から生まれた役だろうと徂徠は推測する。ところが今では寺の縁起や宝物を見て回るだけで、本人も何のための役か知らない。目的が忘れられ、形だけが先例として残った典型である。続けて伏見・奈良・山田の奉行には四等官のような組織を整えよと短く提言する。現代でも、前任者の意図が引き継がれず形式だけが残る仕事は多い。役の目的を書き残し、引き継ぐことが大切である。

この章句が説くこと

目付先例形骸目的京都政談

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