政談 / 代官と云ふ役の事
願くは二三千石以上の人を申し付け役儀の名をかへ下役に今の代官位の人を申し付け置き、武備も自から備はるやうにし、刑罰をも輕きことは其の所にて執行はせ、專ら民間の治めを第一とし、農業の筋をも民の知らぬこと有るをは之を敎へ、川除け堤普請のたくひをも申し付け、盜賊博奕等邪宗邪法のたくひをも之をおさへさすへし、
新字:願くは二三千石以上の人を申し付け役儀の名をかへ下役に今の代官位の人を申し付け置き、武備も自から備はるやうにし、刑罰をも軽きことは其の所にて執行はせ、専ら民間の治めを第一とし、農業の筋をも民の知らぬこと有るをは之を教へ、川除け堤普請のたくひをも申し付け、盗賊博奕等邪宗邪法のたくひをも之をおさへさすへし、
書き下し
願くは二三千石以上の人を申し付け役儀の名をかへ下役に今の代官位の人を申し付け置き、武備も自から備はるやうにし、刑罰をも軽きことは其の所にて執行はせ、専ら民間の治めを第一とし、農業の筋をも民の知らぬこと有るをは之を教へ、川除け堤普請のたくひをも申し付け、盗賊博奕等邪宗邪法のたくひをも之をおさへさすへし、
現代語訳
願わくは、二、三千石以上の人を任じて役儀の名を改め、下役に今の代官くらいの人を任じておき、武備も自然に備わるようにし、刑罰も軽いことはその土地で執行させ、専ら民間の治めを第一とし、農業の筋でも民の知らないことがあればそれを教え、川除けや堤の普請の類いも申し付け、盗賊・博奕・邪宗邪法の類いもこれを取り締まらせるべきである。
解説
ここで徂徠は代官改革の具体案を示す。二、三千石以上の格の高い人を据え、今の代官を下役にし、武備と軽い刑罰の執行権を与え、農業指導や治水、治安維持まで任せるという。中央に指示を仰がずに現地で完結できるよう、権限と格をそろえて渡す発想である。現代の組織でいえば、地方拠点や現場の責任者に十分な権限と地位を与え、採用、育成、品質、安全までを一体で任せる設計に近い。権限のない責任では現場は動かない、ということを徂徠はよく知っていた。
この章句が説くこと
代官権限委任治め農業政談
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