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政談 / 諸役人職分支配を分つ事

御當家の御定めなきと云ふは、土地を治むる人只年貢にても取ることはかりを我か役と覺え治めと云ふことをは夢にも知らす、偶然として暮したる故なり、其の惡弊皆下より申し出てぬことは搆はぬと云たるより出てゝ、其下より申し出てぬことは搆はぬと立つることは、上は下を咎むるものとばかり覺え居る也、これによりて世上に樣々の公事六ケ敷は絕えさること也、

新字:御当家の御定めなきと云ふは、土地を治むる人只年貢にても取ることはかりを我か役と覚え治めと云ふことをは夢にも知らす、偶然として暮したる故なり、其の悪弊皆下より申し出てぬことは搆はぬと云たるより出てゝ、其下より申し出てぬことは搆はぬと立つることは、上は下を咎むるものとばかり覚え居る也、これによりて世上に様々の公事六ケ敷は絶えさること也、

書き下し

御当家の御定めなきと云ふは、土地を治むる人只年貢にても取ることはかりを我か役と覚え治めと云ふことをは夢にも知らす、偶然として暮したる故なり、其の悪弊皆下より申し出てぬことは搆はぬと云たるより出てゝ、其下より申し出てぬことは搆はぬと立つることは、上は下を咎むるものとばかり覚え居る也、これによりて世上に様々の公事六ケ敷は絶えさること也、

現代語訳

御当家の御定めがないというのは、土地を治める人がただ年貢でも取ることばかりを自分の役と心得て、治めということは夢にも知らず、漫然として暮らしたからである。その悪弊は皆、下から申し出ないことは構わないと言ったことから出ていて、その「下から申し出ないことは構わない」と立てることは、上は下を咎めるものとばかり心得ているのである。これによって世の中にさまざまな訴訟のややこしいことが絶えないのである。

解説

なぜ当代の定めがないのか。土地を支配する者が年貢を取ることだけを自分の役目と心得、治めることを夢にも知らず漫然と暮らしてきたからだと徂徠は断ずる。下から言ってこなければ構わないという姿勢は、上の役目を下を咎めることだと取り違えているところから生まれる。その結果、訴訟の種が絶えない。統治とは取り立てと処罰ではなく、先回りして秩序を作ることだという徂徠の統治観がよく表れている。現代の管理職も、数字を回収し失敗を咎めるだけでは、組織の問題は増え続けるばかりである。

この章句が説くこと

統治治め年貢役目咎め政談

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