驢鞍橋 / 卷上
一日去る國の太守、師を請して法要を問ふ。師示して曰く、一國を呑込んて治め給ふ事肝要也。心くどついて叶ふべからず。如何にも心をはつしと用ひ、慈悲を以て仕置等成さるべし。扨亦づんと打上り、人々の性をよく見分けて御下知あるべし。大略は主人の心せまくして、人の性を見分け得すして、我機に合はさる事多し。然るときんば我機徃いて彼が機と戰ふ者也。是れかつたいと棒打ちしたるに非ずや。亦國下の公事沙汰を聞き玉ふにも、物上と成りて聞き玉ふべし。必ず物の下と成り、渠か云分に追付つてさばく時は、政道正からさる物也。然る間心を能く用ゐ、一國を引布いて御下知あるべしと也。
新字:一日去る国の太守、師を請して法要を問ふ。師示して曰く、一国を呑込んて治め給ふ事肝要也。心くどついて叶ふべからず。如何にも心をはつしと用ひ、慈悲を以て仕置等成さるべし。扨亦づんと打上り、人々の性をよく見分けて御下知あるべし。大略は主人の心せまくして、人の性を見分け得すして、我機に合はさる事多し。然るときんば我機往いて彼が機と戦ふ者也。是れかつたいと棒打ちしたるに非ずや。亦国下の公事沙汰を聞き玉ふにも、物上と成りて聞き玉ふべし。必ず物の下と成り、渠か云分に追付つてさばく時は、政道正からさる物也。然る間心を能く用ゐ、一国を引布いて御下知あるべしと也。
書き下し
一日去る国の太守、師を請して法要を問ふ。師示して曰く、一国を呑込んて治め給ふ事肝要也。心くどついて叶ふべからず。如何にも心をはつしと用ひ、慈悲を以て仕置等成さるべし。扨亦づんと打上り、人々の性をよく見分けて御下知あるべし。大略は主人の心せまくして、人の性を見分け得すして、我機に合はさる事多し。然るときんば我機往いて彼が機と戦ふ者也。是れかつたいと棒打ちしたるに非ずや。亦国下の公事沙汰を聞き玉ふにも、物上と成りて聞き玉ふべし。必ず物の下と成り、渠か云分に追付つてさばく時は、政道正からさる物也。然る間心を能く用ゐ、一国を引布いて御下知あるべしと也。
現代語訳
ある日、ある国の太守が師を招いて、法の要を尋ねた。師は示して言われた。一国を呑み込んで治められることが肝要である。心がくどくどしていてはかなわない。どこまでも心をはっしと用いて、慈悲をもって政治をなさるべきである。さてまた、ずんと高みに立って、人々の性分をよく見分けてご命令なさるべきである。たいていは、主人の心が狭くて、人の性分を見分けられず、自分の気に合わないことが多い。そうなると、自分の気が行って相手の気と戦うことになる。これは病人同士が棒で打ち合うようなものではないか。また国の訴訟を聞かれるときも、物の上に立ってお聞きなさい。決して物の下になって、相手の言い分に追いついて裁くときは、政道は正しくならないものだ。だから心をよく用いて、一国を敷き広げてご命令なさるべきである、と。
解説

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『墨子』號令國を安んずるの道は、道、地に任ずるより始まる。地、其の任を得れば則ち功成り、地、其の任を得ざれば則ち勞して功無し。人も亦た此を為す。備え、先に具えざる者は以て主を安んずる無し。吏卒民、多く心の一ならざる者は、皆な其の将長に在り。諸そ賞罰を行い及び治むること有る者は、必ず公より出づ。王、數しば人をして行き勞わしめ、邉城關塞を守り、蠻夷に備うるの勞苦なる者に賜い、其の守率の財用の餘り有ると足らざるとを舉げ、地形の當に邉を守るべき者、其の器備の常に多き者を舉ぐ。邉の縣邑は、其の樹木の惡しきを視れば、則ち用を少なくす。田、辟けざれば、食を少なくす。大屋・草盖無ければ、乗を用うるを少なくす。財多ければ、民、食を好む。内堞を為り、内に行棧し、器備を其の上に置く。城上の吏・卒・養は、皆な舍を道の内に為り、各おの其の隔部に當たる。養は十二人。符を為る者を養吏一人と曰い、諸門を辦護す。門者及び守禁有る者は、皆な事無き者をして其の旁らに稽留するを得しむる無かれ。令に従わざる者は戮す。敵人、但だ至らば、千丈の城は、必ず郭、之に近づき、主人、利し。千丈を盡くさざる者は迎うる勿かれ。敵の居曲、衆少を視て之に應ず。此れ守城の大體なり。其の此の中に在らざる者は、皆な心術と人事と之を參う。
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史記 高祖本紀田栄怒り、因りて自ら立ちて斉王と為り、田都を殺して楚に反す。彭越に将軍の印を予へ、梁の地に反せしむ。楚蕭公角をして彭越を撃たしむ、彭越大いに之を破る。陳余項羽の己を王とせざるを怨み、夏説をして田栄に説かしめ、兵を請ひて張耳を撃たんとす。斉陳余に兵を予へ、常山王張耳を撃破す、張耳亡げて漢に帰す。趙王歇を代に迎へ、復た立てて趙王と為す。趙王因りて陳余を立てて代王と為す。項羽大いに怒り、北のかた斉を撃つ。八月、漢王韓信の計を用ゐ、故道より還り、雍王章邯を襲ふ。邯漢を陳倉に迎撃す、雍の兵敗れ、還り走る。止まりて好畤に戦ふ、又復た敗れ、廃丘に走る。漢王遂に雍の地を定む。東して咸陽に至り、兵を引きて雍王を廃丘に囲み、而して諸将を遣はして隴西・北地・上郡を略定せしむ。将軍薛欧・王吸をして武関を出でしめ、王陵の兵の南陽に在るに因り、以て太公・呂后を沛に迎へしむ。楚之を聞き、兵を発して之を陽夏に距ぐ、前むを得ず。故の呉の令鄭昌をして韓王と為し、漢の兵を距がしむ。二年、漢王東のかた地を略す、塞王欣・翟王翳・河南王申陽皆降る。韓王昌聴かず、韓信をして撃ちて之を破らしむ。是に於て隴西・北地・上郡・渭南・河上・中地の郡を置く。関外に河南郡を置く。更めて韓の太尉信を立てて韓王と為す。諸将の万人若しくは一郡を以て降る者は、万戸に封ず。河上の塞を繕治す。諸々の故の秦の苑囿園池は、皆人をして之を田(たがや)すを得しむ。正月、雍王の弟章平を虜にす。大いに罪人を赦す。漢王の関を出でて陝に至るや、関外の父老を撫し、還るに、張耳来り見ゆ、漢王厚く之を遇す。二月、秦の社稷を除き、更めて漢の社稷を立てしむ。三月、漢王臨晋より渡る、魏王豹兵を将ゐて従ふ。河内を下し、殷王を虜にし、河内郡を置く。南のかた平陰津を渡り、雒陽に至る。
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史記 礼書故に堅革利兵は以て勝つと為すに足らず、高城深池は以て固しと為すに足らず、厳令繁刑は以て威と為すに足らず。其の道に由れば則ち行はれ、其の道に由らざれば則ち廃る。楚人は鮫革犀兕、以て甲と為す所、堅きこと金石の如し。宛の鉅鉄の施、鉆きこと蜂蠆の如く、軽利剽遬、卒かなること熛風の如し。然れども兵は垂涉に殆く、唐昧死す。荘蹻起こり、楚分かれて四参と為る。是れ豈に堅革利兵無からんや、其の之を統ぶる所以の者其の道に非ざるが故なり。汝潁以て険と為し、江漢以て池と為し、之を阻むに鄧林を以てし、之を縁らすに方城を以てす。然れども秦師鄢郢に至り、挙ぐること槁を振るふが若し。是れ豈に固塞険阻無からんや、其の之を統ぶる所以の者其の道に非ざるが故なり。紂は比干を剖き、箕子を囚へ、炮格を為り、無辜を刑殺し、時の臣下懍然として、其の命を必する莫し。然れども周師至りて、令下に行はれず、其の民を用ふる能はず。是れ豈に令厳ならず、刑陖ならざらんや、其の之を統ぶる所以の者其の道に非ざるが故なり。古者の兵は、戈矛弓矢のみ、然れども敵国試みるを待たずして詘す。城郭集めず、溝池掘らず、固塞樹てず、機変張らず、然れども国晏然として外を畏れずして固き者は、他の故無し、道を明らかにして之を均分し、時に使ひて誠に之を愛すれば、則ち下之に応ずること景響の如し。命に由らざる者有りて、然る後に之を俟つに刑を以てすれば、則ち民罪を知る。故に一人を刑して天下服す。罪人其の上を尤めず、罪の己に在るを知ればなり。是の故に刑罰省きて威行はるること流るるが如し、他の故無し、其の道に由るが故なり。故に其の道に由れば則ち行はれ、其の道に由らざれば則ち廃る。古者帝堯の天下を治むるや、蓋し一人を殺し二人を刑して天下治まる。伝に曰く、「威厲しくして試みず、刑措きて用ひず」と。
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尉繚子・兵教下其の利を喪うこと無く、其の時を奪うこと無く、其の政を寛にし、其の業を夷らかにし、其の弊を救わば、則ち以て天下に施すに足る。
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『驢鞍橋』卷上一日語て曰く、あはれ仏法にて天下の仕置を仰付けあらば、只畜生一つを以て治めんと思ふ也。太閤の時代迄は、喧嘩横死死罪の者一年に三千程の積り也。御当代には政道正く世□める故に、横死死罪の者千人程の積りと云ふ人あり。是れを以て思ふに如何に人暗くして聞かずとも、仏法を以てせば慥に五百六百には成るべし。然れば亦大なる太平の基也。しかも大分に所領を取る役人も入らず治るべき也。
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『潜夫論』德化上聖は気を和して以て民心を化し、表儀を正して以て群下を率い、故に能く民をして比屋封ずべからしむ、堯舜是れなり。其の次は道徳を躬らし慈愛を敦くし、教訓を美しくし礼譲を崇び、故に能く民をして争心無からしめて刑錯を致す、文武是れなり。其の次は好悪を明らかにし法禁を顕らかにし、賞罰を平らかにして阿私無く、故に能く民をして奸邪を辟けて公正に趨かしめ、弱乱を理めて以て治強を致す、中興是れなり。天下を治むるに、身は汙に処りて情を放にし、民事を怠りて酒楽を急にし、頑童に近づきて賢才を遠ざけ、諂諛に親しみて正直を疎んじ、賦税を重くして以て無功を賞し、妄りに喜怒を加えて以て無辜を傷つくる、故に能く其の政を乱して以て其の民を敗り、其の身を弊して以て其の国を喪う者は、幽厲是れなり。孔子曰く、「三人行えば必ず我が師有り。其の善き者を択びて之に従い、其の不善なる者は、我則ち之を改む」と。詩に美す「宜しく殷に鑑みて、自ら多福を求むべし」と。是の故に世主誠に能く六合の内、世を挙げての人をして咸な方厚の情を懐き、浅薄の悪無からしめ、各おの公政の心を奉じて、奸陬の慮無からしむれば、則ち羲農の俗復た茲に見われ、麟龍鸞鳳復た郊に畜われん。