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政談 / 官位爵祿の次第並に勳階頭助允目の事

惣して役儀は其人の得手不得手ある事なり、不得手なる役に申付たるときは役儀の捌き宜しからさるなり、さるに依て之を替んとすれは席を上くるか下くるかせねは役替られぬなり、上かりの役に申付たるは立身になる、下かりの役に申付たるは、その人のいつくするもとより褒美歟、又は懲しめのためならは、あけてもよけんとも、只其人の得手なるむきに、換ゆるまてのことにて、別に褒美にても、懲しめにてもなきに、席を上け下けすること、詮もなきこと、又害も有なり、然れは同席の役をいくつも拵へ置く時は此の差支なきなり、されとも當時は席に名無く、唯〻此役の席と云ふことなる故、役と席とを別々にすへきやうなし、其上席に名を付け置さる故、混亂して、紛はしかるへし、

新字:惣して役儀は其人の得手不得手ある事なり、不得手なる役に申付たるときは役儀の捌き宜しからさるなり、さるに依て之を替んとすれは席を上くるか下くるかせねは役替られぬなり、上かりの役に申付たるは立身になる、下かりの役に申付たるは、その人のいつくするもとより褒美歟、又は懲しめのためならは、あけてもよけんとも、只其人の得手なるむきに、換ゆるまてのことにて、別に褒美にても、懲しめにてもなきに、席を上け下けすること、詮もなきこと、又害も有なり、然れは同席の役をいくつも拵へ置く時は此の差支なきなり、されとも当時は席に名無く、唯〻此役の席と云ふことなる故、役と席とを別々にすへきやうなし、其上席に名を付け置さる故、混乱して、紛はしかるへし、

書き下し

惣して役儀は其人の得手不得手ある事なり、不得手なる役に申付たるときは役儀の捌き宜しからさるなり、さるに依て之を替んとすれは席を上くるか下くるかせねは役替られぬなり、上かりの役に申付たるは立身になる、下かりの役に申付たるは、その人のいつくするもとより褒美歟、又は懲しめのためならは、あけてもよけんとも、只其人の得手なるむきに、換ゆるまてのことにて、別に褒美にても、懲しめにてもなきに、席を上け下けすること、詮もなきこと、又害も有なり、然れは同席の役をいくつも拵へ置く時は此の差支なきなり、されとも当時は席に名無く、唯〻此役の席と云ふことなる故、役と席とを別々にすへきやうなし、其上席に名を付け置さる故、混乱して、紛はしかるへし、

現代語訳

総じて役儀にはその人の得手・不得手があるものである。不得手な役に申し付けたときは役儀の捌きがよくない。それでこれを替えようとすれば、席を上げるか下げるかしなければ役を替えられない。上の役に申し付けたのは立身になる。下の役に申し付けたのは、その人の勤めぶりによる褒美か、または懲らしめのためならば、上げても下げてもよいけれども、ただその人の得手な方面に替えるまでのことで、別に褒美でも懲らしめでもないのに席を上げ下げすることは、甲斐もないことであり、また害もあるのである。それならば同じ席の役をいくつもこしらえておくときは、この差し支えはない。けれども今は席に名がなく、ただ「この役の席」ということなので、役と席とを別々にしようがない。そのうえ席に名を付けておかないので、混乱して紛らわしいであろう。

解説

人には得手不得手があり、不得手な役に就けた人を向く役に替えたいことはよくある。ところが一役一席の制度では、替えるには席を上げるか下げるかしかない。褒美や懲罰でもないのに処遇が上下するのは無意味であり、害もあると徂徠は言う。解決策は同じ席次の役職を複数用意することだが、今は席次に名前がなく「この役の席」としか言えないため分離できない。現代の等級制度やジョブローテーションの設計論に直結する指摘で、適材適所の異動を評価と切り離せる仕組みがあってこそ、人は得手を活かせる。

この章句が説くこと

適材適所得手異動等級人事政談

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