韓非子 / 外儲說左下第三十三
桓公問置吏於管仲,管仲曰:「辯察於辭,清潔於貨,習人情,夷吾不如絃商,請立以爲大理。登降肅讓,以明禮待賓,臣不如隰朋,請立以爲大行。墾草仞邑,辟地生粟,臣不如甯戚,請以爲大田。三軍既成陣,使士視死如歸,臣不如公子成父,請以爲大司馬。犯顔極諫,臣不如東郭牙,請立以爲諫臣。
新字:桓公問置吏於管仲,管仲曰:「弁察於辞,清潔於貨,習人情,夷吾不如絃商,請立以為大理。登降粛譲,以明礼待賓,臣不如隰朋,請立以為大行。墾草仞邑,辟地生粟,臣不如甯戚,請以為大田。三軍既成陣,使士視死如帰,臣不如公子成父,請以為大司馬。犯顔極諫,臣不如東郭牙,請立以為諫臣。
書き下し
桓公吏を置くことを管仲に問ふ、管仲曰く、「辞に弁察し、貨に清潔にして、人情に習ふこと、夷吾は絃商に如かず、請ふ立てて以て大理と為さん。登降粛譲し、以て礼を明らかにして賓を待つこと、臣は隰朋に如かず、請ふ立てて以て大行と為さん。草を墾き邑を仞め、地を辟き粟を生ずること、臣は甯戚に如かず、請ふ以て大田と為さん。三軍既に陣を成し、士をして死を視ること帰するが如くならしむること、臣は公子成父に如かず、請ふ以て大司馬と為さん。顔を犯し諫を極むること、臣は東郭牙に如かず、請ふ立てて以て諫臣と為さん。
現代語訳
斉の桓公が官吏の配置について管仲に尋ねた。管仲は言った。「言葉をよく聞き分けて明察し、財貨に潔白で、人情に通じていることでは、私(夷吾)は弦商に及びません。どうか彼を大理(司法長官)に立ててください。朝廷での進退の作法が厳かで謙譲であり、礼を明らかにして賓客をもてなすことでは、私は隰朋に及びません。どうか彼を大行(外交・儀礼の長官)に立ててください。荒れ地を開墾して町を広げ、土地を切り開いて穀物を実らせることでは、私は甯戚に及びません。どうか彼を大田(農政の長官)にしてください。全軍が陣を整えたうえで、兵士に死を故郷へ帰るように恐れなくさせることでは、私は公子成父に及びません。どうか彼を大司馬(軍事の長官)にしてください。主君の顔色を恐れずに徹底して諫めることでは、私は東郭牙に及びません。どうか彼を諫臣に立ててください。
解説
関連する章句
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『新序』雜事第四管仲齊の桓公に言いて曰く、夫れ田を墾き邑を剏り、土を闢き穀を殖え、地の利を盡くすは、則ち臣は寗戚に若かず。請う、置きて以て田官と爲せ。登降揖讓、進退閑習なるは、臣は隰朋に如かず。請う、置きて以て大行と爲せ。蚤く入り晏く出で、君の顔色を犯し、諫を進むること必ず忠、富貴を重んぜず、死亡を避けざるは、則ち臣は東郭牙に若かず。請う、置きて以て諫臣と爲せ。獄を决し中を折り、無罪を誣いず、無辜を殺さざるは、則ち臣は□寧に若かず。請う、置きて以て大理と爲せ。平原廣囿、車軌を結ばず、士踵を旋らさず、之を鼓して三軍の士、死を視ること歸するが若きは、則ち臣は王子成甫に若かず。請う、置きて以て大司馬と爲せ。君如し國を治め兵を強くせんと欲さば、則ち此の五子なる者にて足れり。如し霸王たらんと欲さば、則ち夷吾此に在り、と。夫れ管仲能く人を知り、桓公能く賢に任ず。九たび諸侯を合わせ、一たび天下を匡し、兵車を用いざる所以は、管仲の功なり。詩に曰く、濟濟たる多士、文王以て寧し、と。桓公其れ之に似たり。
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『管子』小匡相たること三月、百官を論ぜんことを請う。公曰く、「諾」と。管仲曰く、「升降揖讓、進退閑習、辭を辨ずるの剛柔、臣は隰朋に如かず、請う立てて大行と為さん。草を墾き邑に入れ、土を辟き粟を聚め、衆を多くし、地の利を盡くす、臣は戚に如かず、請う立てて大司田と為さん。平原廣牧、車轍を結ばず、士踵を旋らさず、之を鼓して三軍の士死を視ること歸するが如し、臣は王子城父に如かず、請う立てて大司馬と為さん。獄を決し中を折り、不辜を殺さず、無罪を誣いず、臣は賓胥無に如かず、請う立てて大司理と為さん。君の顔色を犯し、諫を進めて必ず忠、死亡を辟けず、富貴に撓まず、臣は東郭牙に如かず、請う立てて以て大諫の官と為さん。此の五子なる者は、夷吾一つも如かず、然り而して以て夷吾に易うるは、夷吾は為さざるなり。君若し國を治め兵を彊くせんと欲せば、則ち五子なる者存す。若し霸王たらんと欲せば、夷吾此に在り」と。桓公曰く、「善し」と。
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『長短経』任長管仲曰く「昇降揖譲、進退閑習なるは、臣は隰朋に如かず。請う、立てて以て大行と為せ。土を闢き粟を聚め、地の利を尽くすは、臣は甯戚に如かず。請う、立てて以て司田と為せ。平原広牧、車は轍を結ばず、士は踵を旋らさず、之を鼓して三軍の士、死を視ること帰するが如きは、臣は王子城父に如かず。請う、立てて以て大司馬と為せ。獄を決し中を折り、不辜を殺さず、不罪を誣いざるは、臣は賓胥無に如かず。請う、立てて以て大理と為せ。君の顔色を犯し、諫を進めて必ず忠、死亡を避けず、富貴に撓まざるは、臣は東郭牙に如かず。請う、立てて以て大諫と為せ。君若し国を治め兵を強くせんと欲せば、則ち五子なる者存す。若し覇王たらんと欲せば、則ち夷吾此に在り」と。
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『韓非子』外儲說左下第三十三襄主曰く、「子の処は、人の欲する所なり、何為れぞ徐子を言ひて以て自ら代らしむる。」曰く、「臣は力を以て君に事ふる者なり。今徐子の力臣より多し、臣以て自ら代らしめずんば、恐らくは他人之を言ひて罪と為さん。」一に曰く、少室周襄主の驂乗と為り、晋陽に至る、力士牛子耕有り、与に角力して勝たず。周主に言ひて曰く、「主の臣をして驂乗たらしむる所以の者は、臣の力多きを以てなり。今臣より力多き者有り、願はくは之を進めん。」二。斉の桓公将に管仲を立てんとし、群臣に令して曰く、「寡人将に管仲を立てて仲父と為さんとす。善しとする者は門に入りて左せよ、善しとせざる者は門に入りて右せよ。」東郭牙門に中して立つ。公曰く、「寡人管仲を立てて仲父と為さんとし、令して曰く、善しとする者は左せよ、善しとせざる者は右せよ、と。今子何為れぞ門に中して立つ。」牙曰く、「管仲の智を以て、能く天下を謀ると為すか。」公曰く、「能くす。」「断を以て、敢て大事を行ふと為すか。」
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呂氏春秋・勿躬③管子、桓公に復して曰く、「田を墾き邑を大にし、土を辟き粟を藝え、地力の利を盡くすは、臣、甯遬に若かず。請う置きて以て大田と為さん。登降辭讓にして、進退閑習なるは、臣、隰朋に若かず。請う置きて以て大行と為さん。蚤に入り晏く出で、君の顏色を犯し、諫めを進むること必ず忠に、死亡を辟けず、貴富を重んぜざるは、臣、東郭牙に若かず。請う置きて以て大諫臣と為さん。平原廣域、車は軌を結ばず、士、踵を旋らさず、之に鼓すれば、三軍の士、死を視ること歸るが如きは、臣、王子城父に若かず。請う置きて以て大司馬と為さん。獄を決するに中を折め、不辜を殺さず、無罪を誣いざるは、臣、弦章に若かず。請う置きて以て大理と為さん。君若し國を治め兵を彊くせんと欲せば、則ち五子の者にして足りなん。君、霸王たらんと欲せば、則ち夷吾此に在り。」桓公曰く、「善し。」五子をして皆其の事に任ぜしめ、以て令を管子に受けしむ。十年にして、諸侯を九合し、天下を一匡せしは、皆夷吾と五子の能なり。管子は人臣なり、己の不能に任ぜずして、以て五子の能を盡くせり。況んや人主に於いてをや。人主、能不能の以て民に君たる可きを知れば、則ち幽詭愚險の言、職らざる無く,百官有司の事、力を畢くし智を竭くす。五帝三皇の民に君たるや、下固より力を畢くし智を竭くすに過ぎざるなり。夫れ人に君たりて、其の能・勇・力・誠・信を恃む無きを知れば、則ち之に近し。凡そ君なる者は、平靜に處り、德化に任じて以て其の要を聽く。此くの若くなれば則ち形性彌々羸ちて、耳目愈々精に、百官職を慎みて、敢て愉綖すること莫く、人其の事を事として、以て其の名を充たす。名實相保つ、之を道を知ると謂う。
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呂氏春秋・貴公③管仲、病有り。桓公往きて之に問いて曰く、「仲父の病めり、漬むこと甚だし、國人諱まず。寡人将た誰にか國を屬せん。」管仲對えて曰く、「昔者、臣力を盡くし智を竭くせしも、猶ほ未だ以て之を知るに足らざるなり。今病朝夕の中に在り。臣奚ぞ能く言わん。」桓公曰く、「此れ大事なり。願わくは仲父の寡人に教えんことを。」管仲敬みて諾す。曰く、「公誰をか相にせんと欲する。」公曰く、「鮑叔牙可ならんか。」管仲對えて曰く、「不可なり。夷吾、鮑叔牙と善し。鮑叔牙の人と為りや、清廉潔直、己に若かざる者を視れば人に比せず、一たび人の過ちを聞けば終身忘れず。」「已むこと勿くんば、則ち隰朋其れ可ならんか。」「隰朋の人と為りや、上志して下求し、黄帝に若かざるを醜じて己に若かざる者を哀れむ。其の國に於けるや聞かざること有り、其の物に於けるや知らざること有り、其の人に於けるや見ざること有り。已むこと勿からんか、則ち隰朋可なり。」夫れ相は大官なり。大官に處る者は、小察を欲せず、小智を欲せず。故に曰く、「大匠は斲らず、大庖は豆せず、大勇は鬭わず、大兵は寇せず。」桓公、公を行い私惡を去り、管子を用いて五伯の長と為る。私を行い愛する所に阿り、豎刁を用いて、蟲、戸より出づ。