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政談 / 制度の事

是れ町人百姓憎むにあらす、頭か身上右の如くの奢りによりて物入り多く、暮しに物入ること今は常に成りたれは、此の制法出しぬること頭か爲めにもよき事なり、第一右の諸物を町人百姓心の儘に用ゆる故、諸色の直段日を逐ふて高直なり、然れとも此の吟味竿の先きに鈴を付けたるやうなることにては仲々參り屆くましきなり、當時吉利支丹の如く嚴密にさかすへきことなり、されとも畢竟武家を知行所に置くにあらされは此の法田舍迄行渡りかたかるへし、先つ武家には制度を立てす、唯々斯の如く百姓町人に計り制度を立つるときは、諸色特の外に下直になるへし、左樣に四五年もして武家に息をつかせ、其の上にて武家にも制度を委細に立ては御政道滯ほりなく行きわたるへし、是れ緩急先後の仕掛なり、

新字:是れ町人百姓憎むにあらす、頭か身上右の如くの奢りによりて物入り多く、暮しに物入ること今は常に成りたれは、此の制法出しぬること頭か為めにもよき事なり、第一右の諸物を町人百姓心の儘に用ゆる故、諸色の直段日を逐ふて高直なり、然れとも此の吟味竿の先きに鈴を付けたるやうなることにては仲々参り届くましきなり、当時吉利支丹の如く厳密にさかすへきことなり、されとも畢竟武家を知行所に置くにあらされは此の法田舎迄行渡りかたかるへし、先つ武家には制度を立てす、唯々斯の如く百姓町人に計り制度を立つるときは、諸色特の外に下直になるへし、左様に四五年もして武家に息をつかせ、其の上にて武家にも制度を委細に立ては御政道滞ほりなく行きわたるへし、是れ緩急先後の仕掛なり、

書き下し

是れ町人百姓憎むにあらす、頭か身上右の如くの奢りによりて物入り多く、暮しに物入ること今は常に成りたれは、此の制法出しぬること頭か為めにもよき事なり、第一右の諸物を町人百姓心の儘に用ゆる故、諸色の直段日を逐ふて高直なり、然れとも此の吟味竿の先きに鈴を付けたるやうなることにては仲々参り届くましきなり、当時吉利支丹の如く厳密にさかすへきことなり、されとも畢竟武家を知行所に置くにあらされは此の法田舎迄行渡りかたかるへし、先つ武家には制度を立てす、唯々斯の如く百姓町人に計り制度を立つるときは、諸色特の外に下直になるへし、左様に四五年もして武家に息をつかせ、其の上にて武家にも制度を委細に立ては御政道滞ほりなく行きわたるへし、是れ緩急先後の仕掛なり、

現代語訳

これは町人・百姓を憎むのではない。彼らの身代も、右のような奢りによって物入りが多く、暮らしに物が要ることが今は当たり前になっているので、この制法を出すことは彼らのためにもよいことである。第一に、右の諸物を町人・百姓が心のままに用いるので、諸色の値段が日を追って高くなるのである。けれどもこの吟味が、竿の先に鈴を付けたようなことでは、なかなか行き届かないであろう。今の切支丹改めのように厳密に探すべきである。けれども結局、武家を知行所に置くのでなければ、この法は田舎まで行き渡りにくいであろう。まず武家には制度を立てず、ただこのように百姓・町人にだけ制度を立てるときは、諸色はことのほか安くなるであろう。そのように四五年もして武家に息をつかせ、そのうえで武家にも制度を詳細に立てれば、御政道は滞りなく行き渡るであろう。これが緩急先後の仕掛けである。

解説

町人百姓への奢侈禁止は彼らを憎むからではなく、贅沢が当たり前になって家計が苦しい彼ら自身のためでもあると徂徠は言う。そして需要が抑えられれば物価が下がる。ただし形だけの取り締まりでは効かず、切支丹改めのような厳しさが要り、最終的には武家の土着がなければ田舎まで届かないとも認める。まず町人百姓の制度で物価を下げ、四五年して武家が息をついてから武家の制度に進む。改革の負担をどこから先にかけるかという順序の設計であり、現代の組織改革でも、最も疲弊した部門に先に余力を戻す配慮が成否を分ける。

この章句が説くこと

物価緩急制度改革土着政談

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