政談 / 制度の事
制度の事は右所々に云ひたる如く、上下儉約を守り奢りなきやうにする仕方之に越ゆることなし、公儀に御儉約ありて世界の手本と遊はさるゝ御心にても、制度立てられさるときは下たるもの守るへきやうなく、唯々上には御物好きにても斯の如しと存することになり、いたらぬものは金をたむることか御物好きなりなとゝ取沙汰するまてにて下の爲にはならす、上の御身上も制度立たぬときは御代も移りては亦上の御物好きにて皆破るゝことになること故、畢竟詮もなきことゝなるへし、
新字:制度の事は右所々に云ひたる如く、上下倹約を守り奢りなきやうにする仕方之に越ゆることなし、公儀に御倹約ありて世界の手本と遊はさるゝ御心にても、制度立てられさるときは下たるもの守るへきやうなく、唯々上には御物好きにても斯の如しと存することになり、いたらぬものは金をたむることか御物好きなりなとゝ取沙汰するまてにて下の為にはならす、上の御身上も制度立たぬときは御代も移りては亦上の御物好きにて皆破るゝことになること故、畢竟詮もなきことゝなるへし、
書き下し
制度の事は右所々に云ひたる如く、上下倹約を守り奢りなきやうにする仕方之に越ゆることなし、公儀に御倹約ありて世界の手本と遊はさるゝ御心にても、制度立てられさるときは下たるもの守るへきやうなく、唯々上には御物好きにても斯の如しと存することになり、いたらぬものは金をたむることか御物好きなりなとゝ取沙汰するまてにて下の為にはならす、上の御身上も制度立たぬときは御代も移りては亦上の御物好きにて皆破るゝことになること故、畢竟詮もなきことゝなるへし、
現代語訳
制度のことは、右の所々で言ったように、上下が倹約を守り奢りのないようにする方法としてこれに越えるものはない。公儀に御倹約があって世の中の手本となさるお心であっても、制度が立てられないときは下の者は守りようがなく、ただ上にはお好みでこのようにしていらっしゃると思うことになり、至らない者は、金を貯めることがお好みなのだなどと取り沙汰するまでで、下のためにはならない。上のお暮らし向きも、制度が立たないときは、御代が移ればまた上のお好み次第で皆崩れることになるので、結局は甲斐のないことになるであろう。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
孫子・始計篇法とは、曲制・官道・主用なり。
-
『政談』誓詞の事国方なとにては組頭と云ふものは、其の一組の士を病気も幼少も息災にて勤むるも皆同く支配し、偖江戸の勤めは別に番頭と云ふ者ありて、其の下知を受て勤むることにて、其の組頭の支配の内より番替を以て番頭下へつかはすとき、病気幼少のものにあたれは一組の内より外の人を代りに出たし、その本人よりわり合はせをつかはす故、身上のならぬものは病気幼少の代りを願ひて、ひたものつとむること御当地の取り人の如し、さてわり合ひを出たすこと故勝手に宜しからされは自から虚病は少きと承はる、箇様なる仕方能く詮議せは有るへきことなり、兎角当時の誓詞は御作法のやうに成りて詮なきことなれは、一向に停止なりて唯大名の国なとへ御目付けに行くなと、其の外にも時にとりて当座きりの御用にばかり大切なることに誓詞仰せ付られ然るへき也、
-
『政談』國の締り一篇の發端の事総して国の治めと云ふは、譬へば碁盤の目を盛るが如し、目を盛らざる盤にては、何ほどの上手にても碁はうたれぬなり、洪水を静むるには、川筋を付るなり、川筋を付ざれば、禹王再び生れ出たまふとも、水を静むることは叶はざるなり、当時火災の事上の御世話にて塗屋土蔵造に成りたれば、火災自然と少なし、是明かなる証拠なり、其外の御政務には、此訳を申し立る人なきにや、是によりて和漢の古法を考へ愚案の量見を左に記す、
-
『講孟余話』離婁上 首章此の章、徒善にても徒法にても用を済まさず、法と善と兼備するに非ざれば不可なることを云ひて、重きを法に帰し、仁心仁聞ありて民其の沢を被らざるを議る。孟子の所謂法は即ち王政なり、仁政なり、五畝の宅・百畝の田・庠序学校の設けの類なり。然れども後世政を執る者深く察せず、却つて此の語に誤らるる者あり。宋の王安石、明の方孝孺の如き皆是れなり。安石・孝孺皆謂へらく、政の要は法の善悪にありと。故に務めて法度を紛更変易せんと欲す。是れ大いに非なり。大凡道に汚隆あり徳に厚薄ありと云へども、創業垂統の主は必ず百世に伝ふるの制度ある者なり。故に守成の臣子たる者は務めて祖宗の法制を講究し、且つ徒法にならざる様にするは徳を修むるにあるのみ。若し己の徳を修むるを知らず、祖宗の法制あるをも知らず、別に先王の法を求め周室の制に倣ふ時は、必ず枘鑿矛盾して大害大変を生ずること必せり。是れ安石・孝孺の誤る所なり。然らば孟子の説は非か。云ふ、否。治を為すは太甚を去るべし。孟子の時諸国の政大いに乱る。故に其の太甚を去りて是れを成周の旧に復せんと欲するなり。且つ孟子の時大いに乱ると雖も、猶周家の余緒を承く。宋明の周制を用ひ旧制を変じ、大いに人情に戾り衆目を駭かす如きに非ざるなり。是れ知らざるべからず。
-
『講孟余話』滕文公上 第三章余をして横渠の時に生れしめば、必ず此の事を成さん者をと思へども、幽明道遥かにして詮方なし。況や今囹圄の囚となり、志ありと云へども遂ぐべき様なし。徒に横渠の説を読みて感涙胸を沽すのみ。但し横渠の説は田を画し井となすか最も用意の所と見えたり。仁政は経界より始まるとあれば、此の事固より要務にはあるべけれど、是れは法制に係りたることにて、万一人情に合し土俗に宜からぬことあれば、大いに民間を擾乱するに至る。故に夫れよりは此の一節に云ふ所の実を主として行ひ度きことなり。
-
『政談』金銀錢員數減少する仔細の事元禄の時分も金銀殖えたる勢に乗して世界の旅宿を改め、物の制度を立てたらは世は箇様に成るましきなり、当時先々も同しく旅宿の境界を已めて、物の制度を立てゝ、よくとくとゆりすわりたらは、金銀正徳の半減になるとても世界も困窮すましきことなれとも、既に斯の如く困窮したるを直さすしては、旅宿の境界を巳むることも物の制度を立つることも甚た以て難きことなり、総して世界の有様を仕替ゆることは人々の仕慣れたる筋を引換ゆることなれは人々心赴むき難きことなり、騒動に成りて世界愈々困窮になり行く、先の善き事は持ち難かるへし、唯々当分世界の甚た久く賑ふことを執行はすんはあるへからす、当時如何様のことをして世界を賑はすへきと工夫するに、銭を鋳るに若くはなかるへし、
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る