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政談 / 制度の事

制度を立つる仕方上大名より下小身の諸士に至るまて、衣服より家居器物食事供廻はり役席官祿のかぎりを以て立つへし、役儀の品席の高下官の高下祿の多少によりて其法極まるときは分に過きたる奢りは仕たくてもならぬことなり、器物家居は永久のものなれは祿によるへし、衣服供廻はりは役席官によりて變り有へし、座敷の上は衣服の品によりて役席官祿明かに見ゆるときは自から無禮なし、途中は供廻はりの裝束乗物馬具道具の品にて役席官祿明かに見ゆる時は是れ亦自から途中の無禮なし、當時の如く供廻り大勢連れて込み合ひ騒かしく無用の日用傭ひ者にて備へを立つるやうなること自から已むへし、但し衣服の制度は鳥帽子直垂を用ゆるにあらずんは制度は立たぬなり、其の仔細は當時の姿、上下長上下と雖も皆白衣の姿なり、上下を着ても小袖も見ゆる、小袖はひやくえなり、地も色々ありて人々の物好き世のはやりことにて變るは制度立ぬなり、

新字:制度を立つる仕方上大名より下小身の諸士に至るまて、衣服より家居器物食事供廻はり役席官禄のかぎりを以て立つへし、役儀の品席の高下官の高下禄の多少によりて其法極まるときは分に過きたる奢りは仕たくてもならぬことなり、器物家居は永久のものなれは禄によるへし、衣服供廻はりは役席官によりて変り有へし、座敷の上は衣服の品によりて役席官禄明かに見ゆるときは自から無礼なし、途中は供廻はりの装束乗物馬具道具の品にて役席官禄明かに見ゆる時は是れ亦自から途中の無礼なし、当時の如く供廻り大勢連れて込み合ひ騒かしく無用の日用傭ひ者にて備へを立つるやうなること自から已むへし、但し衣服の制度は鳥帽子直垂を用ゆるにあらずんは制度は立たぬなり、其の仔細は当時の姿、上下長上下と雖も皆白衣の姿なり、上下を着ても小袖も見ゆる、小袖はひやくえなり、地も色々ありて人々の物好き世のはやりことにて変るは制度立ぬなり、

書き下し

制度を立つる仕方上大名より下小身の諸士に至るまて、衣服より家居器物食事供廻はり役席官禄のかぎりを以て立つへし、役儀の品席の高下官の高下禄の多少によりて其法極まるときは分に過きたる奢りは仕たくてもならぬことなり、器物家居は永久のものなれは禄によるへし、衣服供廻はりは役席官によりて変り有へし、座敷の上は衣服の品によりて役席官禄明かに見ゆるときは自から無礼なし、途中は供廻はりの装束乗物馬具道具の品にて役席官禄明かに見ゆる時は是れ亦自から途中の無礼なし、当時の如く供廻り大勢連れて込み合ひ騒かしく無用の日用傭ひ者にて備へを立つるやうなること自から已むへし、但し衣服の制度は鳥帽子直垂を用ゆるにあらずんは制度は立たぬなり、其の仔細は当時の姿、上下長上下と雖も皆白衣の姿なり、上下を着ても小袖も見ゆる、小袖はひやくえなり、地も色々ありて人々の物好き世のはやりことにて変るは制度立ぬなり、

現代語訳

制度を立てる方法は、上は大名から下は小身の諸士に至るまで、衣服から家居・器物・食事・供回り・役席・官禄の限度をもって立てるべきである。役儀の品・席の高下・官の高下・禄の多少によってその法が決まるときは、分に過ぎた奢りはしたくてもできないことになる。器物や家居は永久のものなので禄によるべきである。衣服や供回りは役席や官によって変わりがあるべきである。座敷では衣服の品によって役席・官禄がはっきり見えるときは、おのずから無礼がない。道中では供回りの装束・乗物・馬具・道具の品で役席・官禄がはっきり見えるときは、これもまたおのずから道中の無礼がない。今のように供回りを大勢連れて込み合い騒がしく、無用の日雇い者で行列を立てるようなことは、おのずからやむであろう。ただし衣服の制度は烏帽子・直垂を用いるのでなければ制度は立たない。その子細は、今の姿は裃・長裃といっても皆白衣(下着姿)である。裃を着ても小袖が見える。小袖は白衣である。生地もいろいろあって、人々の好みや世の流行で変わるのは、制度が立っていないのである。

解説

制度の具体案として、徂徠は衣服・住居・器物・食事・供回りを、役職・席次・官位・禄高に応じて定めよと説く。家や器物は長く使うので禄高に、衣服や行列は役職に連動させる。そうすれば身なりを見ただけで相手の立場がわかり、無礼も起きず、見栄の張り合いもやむ。さらに、当時の裃姿は下着である小袖が見える白衣姿にすぎず、流行で変わるから制度にならないとし、烏帽子・直垂を正装にせよと主張する。現代でも肩書や権限が外から見えないと、余計な摩擦や過剰な見栄が生まれる。役割を見える形にすることは秩序の基本である。

この章句が説くこと

制度衣服分限奢り礼政談

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