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政談 / 金銀錢員數減少する仔細の事

金銀の數減少したるか爲め世界の困究になることは、金銀大分に持ちたる者は半身代に成るに依りて金を出して米を買ふことならす、之によりて米價下直になる故武家も百姓も皆半身代に成りて世界困窮したるなり、然るを一年至極豐年なる故米價至極に安くなりたりと云ふ人あれとも、夫は世界の全體を呑込まぬ愚眼の人の云ふことなり、尤も豐年なれは米價は安く成るは其事左樣なる筋も少しは手傳ふたるへけれとも、全躰の所左樣なることにてはなし、

新字:金銀の数減少したるか為め世界の困究になることは、金銀大分に持ちたる者は半身代に成るに依りて金を出して米を買ふことならす、之によりて米価下直になる故武家も百姓も皆半身代に成りて世界困窮したるなり、然るを一年至極豊年なる故米価至極に安くなりたりと云ふ人あれとも、夫は世界の全体を呑込まぬ愚眼の人の云ふことなり、尤も豊年なれは米価は安く成るは其事左様なる筋も少しは手伝ふたるへけれとも、全体の所左様なることにてはなし、

書き下し

金銀の数減少したるか為め世界の困究になることは、金銀大分に持ちたる者は半身代に成るに依りて金を出して米を買ふことならす、之によりて米価下直になる故武家も百姓も皆半身代に成りて世界困窮したるなり、然るを一年至極豊年なる故米価至極に安くなりたりと云ふ人あれとも、夫は世界の全体を呑込まぬ愚眼の人の云ふことなり、尤も豊年なれは米価は安く成るは其事左様なる筋も少しは手伝ふたるへけれとも、全体の所左様なることにてはなし、

現代語訳

金銀の数が減ったために世の中が困窮するというのは、金銀を多く持っている者は身代が半分になるので、金を出して米を買うことができない。これによって米価が安くなるので、武家も百姓もみな身代が半分になって、世の中が困窮したのである。それなのに、この一年はこの上ない豊作なので米価がこの上なく安くなったのだ、と言う人があるが、それは世の中の全体を呑み込まない愚かな目の人の言うことである。もっとも豊作であれば米価が安くなるのはそのとおりで、そういう筋も少しは手伝ったであろうが、全体のところはそういうことではない。

解説

正徳の改鋳で金銀の数が半分以下に減ると、金持ちも身代が半分になって米を買えず、米価が下がり、米で暮らす武家も百姓も困窮した。徂徠は、米価安を豊作のせいにする説を、世の全体を見ない愚眼の論として退ける。豊作の影響も少しはあると認めたうえで、主因は通貨の収縮だと見抜いた点は、貨幣量と物価の関係を捉えた先駆的な洞察として評価されている。現代でも、目立つ一つの原因に飛びつかず、全体の仕組みから現象を説明する目が判断の質を決める。

この章句が説くこと

通貨米価困窮全体金銀判断

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