導師導古典を学びたいすべての人に

政談 / 武家旅宿の境遇を改むる事

大勢の武家御城下に集まり居る故火災も繁く、其の上常の居住なる故妻子足手まとひになり、財寶に心引れ、火を消すこともならす、町人の風俗と傾城町野郞町の風儀武家へ移り風俗惡くなり、慰み多き所なれは武藝學文の嗜みも輕くなる、又不斷御城下に在てなれこになる故公儀をも鵜呑にして上を恐るゝ心も薄く、行儀をたしなますれは公家上ろうのやうになり、行儀に搆はされは町奴のやうになる、

新字:大勢の武家御城下に集まり居る故火災も繁く、其の上常の居住なる故妻子足手まとひになり、財宝に心引れ、火を消すこともならす、町人の風俗と傾城町野郎町の風儀武家へ移り風俗悪くなり、慰み多き所なれは武芸学文の嗜みも軽くなる、又不断御城下に在てなれこになる故公儀をも鵜呑にして上を恐るゝ心も薄く、行儀をたしなますれは公家上ろうのやうになり、行儀に搆はされは町奴のやうになる、

書き下し

大勢の武家御城下に集まり居る故火災も繁く、其の上常の居住なる故妻子足手まとひになり、財宝に心引れ、火を消すこともならす、町人の風俗と傾城町野郎町の風儀武家へ移り風俗悪くなり、慰み多き所なれは武芸学文の嗜みも軽くなる、又不断御城下に在てなれこになる故公儀をも鵜呑にして上を恐るゝ心も薄く、行儀をたしなますれは公家上ろうのやうになり、行儀に搆はされは町奴のやうになる、

現代語訳

大勢の武家が城下に集まっているので火災も多く、そのうえ常の住まいなので妻子が足手まといになり、財宝に心を引かれて、火を消すこともできない。町人の風俗や遊里・野郎町の風儀が武家に移って風俗が悪くなり、慰みの多い所なので、武芸や学問のたしなみも軽くなる。またふだんから城下にいて慣れっこになるので、公儀をも鵜呑みにして上を恐れる心も薄くなり、行儀をたしなめば公家や上臈(宮仕えの女)のようになり、行儀に構わなければ町奴のようになる。

解説

城下暮らしが武士の心身をどう変えたかを列挙した条である。火事では妻子と財宝に気を取られて働けず、遊興の町の風儀に染まり、娯楽が多いので武芸も学問も疎かになる。さらに、権力の近くにいすぎて慣れが生じ、上を恐れる心が薄れる。行儀よくすれば公家風に柔弱になり、構わなければ町の無頼のようになるという指摘は辛辣である。快適で刺激の多い環境は、本業の鍛錬を妨げやすい。慣れによる緊張感の喪失も含めて、環境が人に与える影響を管理する視点を持ちたい。

この章句が説くこと

環境武芸学問慣れ城下風俗

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る