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政談 / 譜代者の事

年久しき用足しなとは譜代者のやうなれとも請狀にて置きたる故是譜代のものにはあらさるなり、田舍の百姓へも御城下の風儀移りて面倒なることを嫌ひ、さつはりとしたるを好む風俗になり、譜代は損なり出替りものよしと了簡して今は是も譜第少なき故、大百姓も田地を殘らす手前にて作るには作男の數入り、切りまいにもの入るとて多くは入作にして手前にせぬことになり、これより小作百姓の方に奸曲出來して百姓の身の上惡しくなれとも今は詮方なし、

新字:年久しき用足しなとは譜代者のやうなれとも請状にて置きたる故是譜代のものにはあらさるなり、田舎の百姓へも御城下の風儀移りて面倒なることを嫌ひ、さつはりとしたるを好む風俗になり、譜代は損なり出替りものよしと了簡して今は是も譜第少なき故、大百姓も田地を残らす手前にて作るには作男の数入り、切りまいにもの入るとて多くは入作にして手前にせぬことになり、これより小作百姓の方に奸曲出来して百姓の身の上悪しくなれとも今は詮方なし、

書き下し

年久しき用足しなとは譜代者のやうなれとも請状にて置きたる故是譜代のものにはあらさるなり、田舎の百姓へも御城下の風儀移りて面倒なることを嫌ひ、さつはりとしたるを好む風俗になり、譜代は損なり出替りものよしと了簡して今は是も譜第少なき故、大百姓も田地を残らす手前にて作るには作男の数入り、切りまいにもの入るとて多くは入作にして手前にせぬことになり、これより小作百姓の方に奸曲出来して百姓の身の上悪しくなれとも今は詮方なし、

現代語訳

長年勤める用足し(使用人)などは譜代者のようであるが、請状(保証の証文)で置いているので、これは譜代の者ではない。田舎の百姓にも城下の風儀が移って、面倒なことを嫌い、さっぱりしたものを好む風俗になり、譜代は損で出替り者がよいと考えて、今はこれも譜代が少ないので、大百姓も田地を残らず自分の手で耕作するには作男が大勢要り、その切米(給金)にも費用がかかるといって、多くは入作(他村の者に小作させること)にして自分では作らないようになった。これによって小作百姓の側に不正が生じて、百姓の暮らし向きが悪くなったが、今はどうしようもない。

解説

城下の風儀が農村にも及び、大百姓まで譜代を手放して小作に頼るようになった結果を述べた条である。人件費を嫌って耕作を外に任せた結果、小作の側に不正が生じ、農村全体が悪くなったという。徂徠は、長く勤めていても保証人付きの契約で置く者は譜代ではないと区別している点も興味深い。勤続年数ではなく、関係の結び方が本質だという見方である。自社で担うべき中核業務まで外に出すと、品質や規律の管理が難しくなる。何を内に持ち何を任せるかの線引きは慎重であるべきだ。

この章句が説くこと

外注小作農村譜代規律経営

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