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政談 / 遊女河原者の種姓の分事並に乞食の締りの事

されは右の乞食非人と云ふものは畢竟鰥寡孤獨のともからにて天下の究民なり、如何なる聖人の御代にも鰥寡孤獨はある事なる故、文王の仁政と云ふは此の鰥寡孤獨を憫れみ救ふことを第一と仕玉へるなり、况して今の代の乞食非人は世の風俗の惡しきと世のつまりたるより生したる者なれは、畢竟上の治めの届かぬ所あるに歸することなる故、之を救ふ道あるへきことなり、然るに何のをもひまはしもなく善七手下になすこと唯々仕方に困りてのことなれは、奉行御役人の才智の拙きと云ふへし、

新字:されは右の乞食非人と云ふものは畢竟鰥寡孤独のともからにて天下の究民なり、如何なる聖人の御代にも鰥寡孤独はある事なる故、文王の仁政と云ふは此の鰥寡孤独を憫れみ救ふことを第一と仕玉へるなり、況して今の代の乞食非人は世の風俗の悪しきと世のつまりたるより生したる者なれは、畢竟上の治めの届かぬ所あるに帰することなる故、之を救ふ道あるへきことなり、然るに何のをもひまはしもなく善七手下になすこと唯々仕方に困りてのことなれは、奉行御役人の才智の拙きと云ふへし、

書き下し

されは右の乞食非人と云ふものは畢竟鰥寡孤独のともからにて天下の究民なり、如何なる聖人の御代にも鰥寡孤独はある事なる故、文王の仁政と云ふは此の鰥寡孤独を憫れみ救ふことを第一と仕玉へるなり、況して今の代の乞食非人は世の風俗の悪しきと世のつまりたるより生したる者なれは、畢竟上の治めの届かぬ所あるに帰することなる故、之を救ふ道あるへきことなり、然るに何のをもひまはしもなく善七手下になすこと唯々仕方に困りてのことなれは、奉行御役人の才智の拙きと云ふへし、

現代語訳

そうであれば、先の乞食・非人というものは、結局は鰥寡孤独(妻を失った男・夫を失った女・親のない子・子のない老人)の人々で、天下の窮民である。どれほどの聖人の御代にも鰥寡孤独はあるものなので、文王の仁政というのは、この鰥寡孤独を憐れみ救うことを第一となさったのである。まして今の世の乞食・非人は、世の風俗が悪いことと世の中が詰まったことから生じた者なので、結局は上の治めの届かないところがあることに帰するのだから、これを救う道があるべきである。ところが何の思案もなく善七の手下にしてしまうのは、ただ扱いに困ってのことなので、奉行や役人の才智が拙いというべきである。

解説

乞食・非人を鰥寡孤独の窮民と定義し直し、救済を政治の第一義に据えた条である。根拠は『孟子』梁恵王下に見える、文王が鰥寡孤独を先にしたという仁政の話で、徂徠は先王の道の具体像としてこれを引く。そのうえで、窮民を非人頭の下に回すだけの処置を、思案のない役人の才智の拙さだと批判する。困った案件を別部署へ回して終わりにするのは、問題の処理ではなく先送りである。弱い立場の人をどう支えるかに、組織と指導者の力量が最もよく表れる。

この章句が説くこと

仁政救済窮民文王孟子役人

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