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政談 / 遊女河原者の種姓の分事並に乞食の締りの事

乞食の朽ちたる木を拾ひ、火事塲の燒釘を拾ふをも昔はかまふ人無りしを、近頃はせいとうすると云ふ、鰥寡孤獨のたぐひの究民は箇樣のをちこぼれをひろひてこそ渡世をはすへけん、火を付けたる故にせいとうするはずになることなれども、鰥寡孤獨のたぐひの取りはからひなくて、一こと出來ればそのことをせいとうすれば後には彼等は立枯に成てやはつべき、

新字:乞食の朽ちたる木を拾ひ、火事塲の焼釘を拾ふをも昔はかまふ人無りしを、近頃はせいとうすると云ふ、鰥寡孤独のたぐひの究民は箇様のをちこぼれをひろひてこそ渡世をはすへけん、火を付けたる故にせいとうするはずになることなれども、鰥寡孤独のたぐひの取りはからひなくて、一こと出来ればそのことをせいとうすれば後には彼等は立枯に成てやはつべき、

書き下し

乞食の朽ちたる木を拾ひ、火事塲の焼釘を拾ふをも昔はかまふ人無りしを、近頃はせいとうすると云ふ、鰥寡孤独のたぐひの究民は箇様のをちこぼれをひろひてこそ渡世をはすへけん、火を付けたる故にせいとうするはずになることなれども、鰥寡孤独のたぐひの取りはからひなくて、一こと出来ればそのことをせいとうすれば後には彼等は立枯に成てやはつべき、

現代語訳

乞食が朽ちた木を拾い、火事場の焼け釘を拾うのも、昔は咎める人がいなかったのに、近頃は取り締まるという。鰥寡孤独の類いの窮民は、こうした落ちこぼれを拾ってこそ暮らしを立てるのである。放火があったので取り締まるはずになったのであろうが、鰥寡孤独の類いへの手当てをしないまま、一つ事が起これば、その事を取り締まるというのでは、しまいに彼らは立ち枯れて果ててしまうだろう。

解説

前条を受け、事件が起こるたびに取り締まりを重ねる対症療法を戒めた条である。放火があったから焼け跡の釘拾いを禁じるという処置は、一見もっともだが、窮民の最後の生活の糧を奪う。徂徠は、根本の手当てをせずに禁令だけを積み上げれば、弱い人々は立ち枯れるしかないと警告する。組織でも、不祥事のたびに禁止事項やチェックを足していくと、現場は息苦しくなり、本来の働きが細っていく。禁止を足す前に、その行動を生んだ根本の事情に手を打つべきである。

この章句が説くこと

取締窮民根本禁令弱者政治

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