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三十六計 / 第二套 敵戰計・第 十 計・笑里藏刀

信而安之,陰以圖之,備而後動,勿使有變。剛中柔外也。 【按語】兵書云:「辭卑而益備者,進也;……無約而請和者,謀也。」故凡敵人之巧言令色,皆殺機之外露也。宋曹瑋知渭州,號令明肅,西夏人憚之。一日瑋方對客奕棋,會有叛誇數千,亡奔夏境。堠騎(騎馬的探子)報至,諸將相顧失色,公言笑如平時。徐謂騎日:「吾命也,汝勿顯言。」西夏人聞之,以為襲己,盡殺之。此臨機應變之用也。若勾踐之事夫差,則意使其久而安之矣。

新字:信而安之,陰以図之,備而後動,勿使有変。剛中柔外也。 【按語】兵書云:「辞卑而益備者,進也;……無約而請和者,謀也。」故凡敵人之巧言令色,皆殺機之外露也。宋曹瑋知渭州,号令明粛,西夏人憚之。一日瑋方対客奕棋,会有叛誇数千,亡奔夏境。堠騎(騎馬的探子)報至,諸将相顧失色,公言笑如平時。徐謂騎日:「吾命也,汝勿顕言。」西夏人聞之,以為襲己,尽殺之。此臨機応変之用也。若勾践之事夫差,則意使其久而安之矣。

書き下し

信じて之を安んじ、陰かに以て之を圖り、備へて後に動き、變有らしむる勿かれ。剛中柔外なり。 【按語】兵書に云ふ、「辭卑くして備へを益す者は進むなり。……約無くして和を請ふ者は謀なり」と。故に凡そ敵人の巧言令色は、皆な殺機の外に露るるなり。宋の曹瑋、渭州に知たり。號令明肅にして、西夏人之を憚る。一日、瑋、方に客に對して奕棋す。會たま叛誇數千有り、亡げて夏の境に奔る。堠騎(騎馬の探子)報じ至り、諸將相ひ顧みて色を失ふ。公、言笑すること平時の如し。徐ろに騎に謂ひて曰く、「吾が命なり、汝顯言する勿かれ」と。西夏人之を聞き、以て己を襲ふと爲し、盡く之を殺せり。此れ臨機應變の用なり。勾踐の夫差に事ふるが若きは、則ち意、其れをして久しく安んぜしむるなり。

現代語訳

相手に信じさせて安心させ、裏ではひそかにこれを図り、備えを整えてから動き、事態に変化が起こらないようにする。内面は剛く、外面は柔らかい。 【按語】兵書にはこうあります。「言葉づかいがへりくだっているのに備えを増している者は、進撃しようとしている。……約束もないのに和を請う者は、謀りごとがある」と。だからおよそ敵の巧みな言葉や愛想のよい顔は、すべて殺意が外に現れたものです。宋の曹瑋が渭州の知事だったとき、号令は明快で厳しく、西夏の人々は彼を恐れていました。ある日、曹瑋がちょうど客に向かって碁を打っていたとき、反乱の兵数千人が逃げて西夏の国境へ走るという事態が起こりました。物見の騎兵(騎馬の探子)が報告に来ると、諸将は顔を見合わせて青ざめました。曹瑋は普段と変わらず談笑していました。そして静かに騎兵に言いました。「私が命じたことだ。お前は余計なことを言うな」と。西夏の人々はこれを聞き、自分たちを襲うために送り込まれたのだと思い、彼らをすべて殺しました。これは臨機応変の使い方です。勾践が夫差に仕えたような場合は、相手を長く安心させておくことを狙ったものでした。

解説

第十計「笑里藏刀」は、親しげな態度で相手を安心させつつ、裏で備えを進める計です。按語は、兵書の言葉を引いて、へりくだった言葉や、約束のない和睦の申し出の裏に殺意が潜むことがあると、敵の甘言を疑う面を強調します。曹瑋の例は、動揺せずに碁を打ち続けて敵の不信を誘った臨機応変の例で、勾践と夫差の例は長期の安心を狙ったものです。仕事の場面では、友好的な関係の裏で利害がぶつかる交渉相手への警戒として読めます。相手の甘い言葉を鵜呑みにせず備えを怠らない姿勢として読むのがよいでしょう。

この章句が説くこと

笑里蔵刀巧言令色剛中柔外曹瑋勾践臨機応変

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