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柳子新論抄録 / 勧士・良民と芸人を混ぜた弊害

柳子曰。農商工賈之謂民之良。所謂良者。利用厚生。相輔相養。以有益於國家者也。故先王立師以敎之。正官以治之。愛之親之。視之如子。編伍有制。使役有法。推以與士相齒。謂之四民。所以爲良也。若夫倡優戲子。則由人之利。受人之財。以悅人耳目。徒養其口腹。不能爲人衣食。存之無益於國家。不存無害於國家。故先王斥之。不與四民伍。戶籍相別。婚姻不通。是其視民。愛有等。親有差。類分群聚。使之各專其業。以遂其生者。仁道在焉。後世則不然。薰猶同器。溜澠一流。良雜相混。戚族無分。編戶之法疏矣。先王之政歇矣。甚則倡優或受士祿。無功而富。無德而貴。卒至變其業。立服官政者。原其所由。無非佞幸嬖寵之冀旨。汲々乎求之。戚々乎去之。故其行也。逞私智以欺王公。縱私欲以虐庶民。讒慝諂諛。暴戾誣罔。適賊夫良家之子。豈可不悲乎。且士之輕薄。每與倡伎之徒居。數入雜戲之場。目見其冶容、耳聞其婉言。則謂人材無彼若者。歆羨歎慕。遂失廉潔之心。便佞口給。但優之倣。壯强者爲比老。幼弱者爲燕支。久而化之。則士氣爲之萎薾。鄙俚猥雜。以釀成乎宣淫之俗矣。況倡伎之操音。非淫娃則殺伐。奪人心志。盪人情性。其傷中和之德。不特鴆與斧斤乎。即今之士大夫。亦不徒聽其音。視其容動。學其伎。習其曲。甚者至於郊廟朝廷祭祀典禮。用之以易韶舞。王侯舞之。卿相奏之。稱美善盡于此也。觀夫其爲音也。無節無制。聲律不愜。宮商無序。非和非應。相喚相叫。曾烏啼猿嘯之不若也。舞則不文不武。進退無法。周旋無度。歌則侏離缺舌。無與無趣。無景無情。託夢託妖。亦何意義之有。若其絲竹可和者。則繁手數節。

新字:柳子曰。農商工賈之謂民之良。所謂良者。利用厚生。相輔相養。以有益於国家者也。故先王立師以教之。正官以治之。愛之親之。視之如子。編伍有制。使役有法。推以与士相歯。謂之四民。所以為良也。若夫倡優戯子。則由人之利。受人之財。以悦人耳目。徒養其口腹。不能為人衣食。存之無益於国家。不存無害於国家。故先王斥之。不与四民伍。戸籍相別。婚姻不通。是其視民。愛有等。親有差。類分群聚。使之各専其業。以遂其生者。仁道在焉。後世則不然。薫猶同器。溜澠一流。良雑相混。戚族無分。編戸之法疏矣。先王之政歇矣。甚則倡優或受士禄。無功而富。無徳而貴。卒至変其業。立服官政者。原其所由。無非佞幸嬖寵之冀旨。汲々乎求之。戚々乎去之。故其行也。逞私智以欺王公。縦私欲以虐庶民。讒慝諂諛。暴戻誣罔。適賊夫良家之子。豈可不悲乎。且士之軽薄。毎与倡伎之徒居。数入雑戯之場。目見其冶容、耳聞其婉言。則謂人材無彼若者。歆羨嘆慕。遂失廉潔之心。便佞口給。但優之倣。壮強者為比老。幼弱者為燕支。久而化之。則士気為之萎薾。鄙俚猥雑。以醸成乎宣淫之俗矣。況倡伎之操音。非淫娃則殺伐。奪人心志。盪人情性。其傷中和之徳。不特鴆与斧斤乎。即今之士大夫。亦不徒聴其音。視其容動。学其伎。習其曲。甚者至於郊廟朝廷祭祀典礼。用之以易韶舞。王侯舞之。卿相奏之。称美善尽于此也。観夫其為音也。無節無制。声律不愜。宮商無序。非和非応。相喚相叫。曽烏啼猿嘯之不若也。舞則不文不武。進退無法。周旋無度。歌則侏離欠舌。無与無趣。無景無情。託夢託妖。亦何意義之有。若其糸竹可和者。則繁手数節。

書き下し

柳子曰く、農商工賈、之を民の良と謂ふ。所謂良なる者は、用を利し生を厚くし、相輔け相養ひて、以て國家に益有る者なり。故に先王は師を立てて以て之を敎へ、官を正して以て之を治め、之を愛し之を親しみ、視ること子の如くす。編伍に制有り、使役に法有り。推して以て士と相齒し、之を四民と謂ふ。良たる所以なり。若し夫れ倡優戲子は、則ち人の利に由り、人の財を受け、以て人の耳目を悅ばせ、徒だ其の口腹を養ふのみ。人の爲に衣食する能はず、存するも國家に益無く、存せざるも國家に害無し。故に先王之を斥け、四民の伍に與せず。戶籍は相別かち、婚姻は通ぜず。是れ其の民を視るに、愛に等有り、親に差有り。類分ち群聚め、之をして各おの其の業を專らにし、以て其の生を遂げしむ。仁道焉に在り。後世は則ち然らず。薰猶器を同じくし、溜澠一流す。良雜相混じ、戚族分つ無し。編戶の法疏し、先王の政歇む。甚だしきは則ち倡優或いは士祿を受け、功無くして富み、德無くして貴く、卒に其の業を變ずるに至る。立ちて官政に服する者、其の由る所を原ぬれば、佞幸嬖寵の旨を冀ふに非ざる無し。汲々として之を求め、戚々として之を去る。故に其の行ふや、私智を逞しくして以て王公を欺き、私欲を縱にして以て庶民を虐げ、讒慝諂諛、暴戾誣罔、適に夫の良家の子を賊す。豈に悲しまざるべけんや。且つ士の輕薄なる、每に倡伎の徒と居り、數しば雜戲の場に入り、目に其の冶容を見、耳に其の婉言を聞けば、則ち人材彼の若きは無しと謂ひ、歆羨歎慕して、遂に廉潔の心を失ふ。便佞口給にして、但だ優の倣ひをなし、壯强なる者は老に比し、幼弱なる者は燕支と爲る。久しくして之に化すれば、則ち士氣之が爲に萎薾し、鄙俚猥雜、以て宣淫の俗を釀成す。況んや倡伎の操る音は、淫娃に非ざれば則ち殺伐、人の心志を奪ひ、人の情性を盪かし、其の中和の德を傷つくること、特だに鴆と斧斤とのみならず。即今の士大夫も、亦徒だに其の音を聽くのみならず、其の容動を視、其の伎を學び、其の曲を習ひ、甚だしきは郊廟朝廷祭祀典禮に至りて、之を用ゐて以て韶舞に易へ、王侯之を舞ひ、卿相之を奏し、美善此に盡くせりと稱するなり。夫の其の音爲るを觀るに、節無く制無く、聲律愜はず、宮商序無く、和に非ず應に非ず、相喚び相叫び、曾て烏啼猿嘯の若かざるなり。舞は則ち文ならず武ならず、進退法無く、周旋度無し。歌は則ち侏離缺舌にして、與無く趣無く、景無く情無く、夢に託し妖に託し、亦何の意義か之有らん。若し其の絲竹の和すべき者は、則ち繁手數節、

現代語訳

柳子は言います。農・商・工・賈を、民の良と呼びます。良とは、器物を便利にし暮らしを豊かにし、互いに助け養って、国家に益のある者のことです。ですから先王は師を立てて教え、官を正して治め、愛し親しみ、我が子のように見ました。戸籍の編成には定めがあり、使役には法がありました。これを士と並べて年次を同じくし、四民と呼んだのです。良とされる理由です。一方、芸人や役者は、人の利に頼り、人の財を受け、人の耳目を喜ばせ、ただ自分の口と腹を養うだけで、人のために衣食を作ることはできません。いても国家に益はなく、いなくても国家に害はありません。ですから先王はこれを退け、四民の列に入れませんでした。戸籍を分け、婚姻も通じませんでした。これは民に対する愛に等級があり、親しみに差があるということで、類で分け群で集めて、各々がその業に専念して生を遂げさせるためです。仁の道はそこにあります。後の世はそうではありません。香草と臭草が同じ器に入り、清い川と濁った川が一つに流れるように、良い者と雑な者が混じり、親族の区別もなくなりました。戸籍の編成の法は粗くなり、先王の政は途絶えました。ひどい場合は、芸人が士の俸禄を受け、功がなくて富み、徳がなくて貴くなり、ついに本来の業を変えるに至ります。立って官政に服する者の来歴をたずねると、取り入って寵愛を得ようとするものばかりです。あくせくとそれを求め、苦しみ憂えてそれを離れます。ですからその行いは、私的な知恵をほしいままにして王公を欺き、私欲をほしいままにして庶民を虐げ、讒言・へつらい・乱暴・偽りで、良家の子をそこないます。悲しまずにいられましょうか。しかも士が軽薄で、いつも芸人の仲間と一緒にいて、しばしば雑多な芝居の場に入り、目に彼らの艶めかしい姿を見、耳に彼らのなまめいた言葉を聞くと、人材にあれほどの者はないと思い、うらやみ慕って、ついに廉潔の心を失います。口先巧みでへつらい上手になり、ただ役者の真似をして、壮健な者は老人の真似をし、幼弱な者は紅をつけた者の真似をします。長く染まれば、士の気風は萎えしぼみ、野卑で雑多な風が淫らな習俗をつくりあげます。まして芸人の奏でる音は、淫らでなければ殺伐としており、人の心志を奪い、人の気質を揺さぶり、中和の徳を傷つけること、毒酒と斧に劣りません。現今の士大夫も、ただその音を聴くだけでなく、その姿や動きを見、その芸を学び、その曲を習い、ひどい場合は郊廟・朝廷での祭祀や典礼で、これを用いて古の舜の舞楽に替え、王侯がこれを舞い、卿相がこれを奏し、美と善はここに尽くされたと称しています。その音を観察すると、節がなく制がなく、音律に合わず、宮商(音階)に順序がなく、調和も呼応もなく、互いに呼び叫び、鳥の鳴き声や猿の叫びにも及びません。舞は文でも武でもなく、進退に法がなく、振る舞いに節度がありません。歌は意味の通らぬ聞き取りにくい声で、趣も情景も感情もなく、夢や妖怪にことよせるだけで、何の意義があるでしょうか。また、その琴や笛の合うものでも、細かい手数が多く、

解説

この節は、良民(農商工賈)と芸人を区別して扱う先王の制度を理想とし、混ざり合うことで士の気風が衰えたと論じます。身分や職業を貴賤で分ける見方は当時の価値観であり、現代の私たちが受け入れるものではありません。ただ読み取れる要点は、ふさわしい役割を持つ人材が、取り入りや人気取りで抜擢されると、組織の気風が傷むという懸念です。人事や登用では、実績や徳に基づく基準を明確にし、周囲の評判や耳に心地よい言葉に流されないよう、公平な評価の仕組みを意識したいところです。

この章句が説くこと

柳子新論抄録山県大貳勧士登用士気評価基準

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