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柳子新論抄録 / 天民・農民を苦しめる重税と官の無策

莫邪爲之鈍。況彼固是。而此固非。雖欲克。其可得乎。且夫商之於富也。居貨萬計。奴婢千數。居廬器用。錦繡珠玉。皆我所不足。而彼則有餘。是以封君俛首。敬如父兄。先王之所命。爵位安在哉。德義之敎輟矣。是無它。官無其制也。夫農者。能播百穀。春耕秋穫。艸處露宿。手足胼胝。作役以奉上。餘力以養父母及妻子。亹々不怠者。農夫之事也。夫人無食則不生。貴爲王公。富有四海。而爲司命者。非農乎。故先王命司農職。勸男稼穡。敎女紡績。薄稅斂以富之。省力役以安之親之愛之。嬛寡咸被其德。後世則不然。磽碻之地。斥鹵之田。日竭其力。月加其功。才納擔石。則姦吏爭其利。所稅什六七。與庸調併收。不盡不已。偶有肥壤所入可以當食者。盡而計之。校而正之。與課役並賦。不竭不置。窮乏至死。曾無回顧。夫如此則土無肥瘠。歲無豐險。凍餒相依。遂廢其業。計盡術窮。則有販鬻逐末者。有奔走乞食者。有散轉溝壑者。亡命竊盜者。攻略相殺者。人愈少地愈荒。負郭二頃之田。所收不過斗升。加以水旱之災。則有束手俟斃者矣。故民之在閭巷。善鬻者富。善耕者饑。視之先王之典。豈不異乎。且其爲策者。不學無術。

新字:莫邪為之鈍。況彼固是。而此固非。雖欲克。其可得乎。且夫商之於富也。居貨万計。奴婢千数。居廬器用。錦繍珠玉。皆我所不足。而彼則有余。是以封君俛首。敬如父兄。先王之所命。爵位安在哉。徳義之教輟矣。是無它。官無其制也。夫農者。能播百穀。春耕秋穫。艸処露宿。手足胼胝。作役以奉上。余力以養父母及妻子。亹々不怠者。農夫之事也。夫人無食則不生。貴為王公。富有四海。而為司命者。非農乎。故先王命司農職。勧男稼穡。教女紡績。薄税斂以富之。省力役以安之親之愛之。嬛寡咸被其徳。後世則不然。磽碻之地。斥鹵之田。日竭其力。月加其功。才納担石。則姦吏争其利。所税什六七。与庸調併収。不尽不已。偶有肥壤所入可以当食者。尽而計之。校而正之。与課役並賦。不竭不置。窮乏至死。曽無回顧。夫如此則土無肥瘠。歳無豊険。凍餒相依。遂廃其業。計尽術窮。則有販鬻逐末者。有奔走乞食者。有散転溝壑者。亡命窃盗者。攻略相殺者。人愈少地愈荒。負郭二頃之田。所収不過斗升。加以水旱之災。則有束手俟斃者矣。故民之在閭巷。善鬻者富。善耕者饑。視之先王之典。豈不異乎。且其為策者。不学無術。

書き下し

莫邪も之が爲に鈍る。況んや彼固より是にして、此固より非なり。克たんと欲すと雖も、其れ得べけんや。且つ夫れ商の富に於けるや、貨を居くこと萬もて計へ、奴婢は千もて數へ、居廬器用、錦繡珠玉、皆我が足らざる所にして、彼は則ち餘り有り。是を以て封君も首を俛れ、敬ふこと父兄の如し。先王の命ぜし所の爵位、安くにか在る。德義の敎、輟みぬ。是れ它無し、官に其の制無ければなり。夫れ農は、能く百穀を播き、春耕し秋穫り、艸に處り露に宿り、手足胼胝す。役を作して以て上に奉じ、餘力は以て父母及び妻子を養ふ。亹々として怠らざるは、農夫の事なり。夫れ人は食無ければ則ち生きず。貴きこと王公たり、富めること四海を有つも、司命たる者は、農に非ずや。故に先王は司農の職を命じ、男に稼穡を勸め、女に紡績を敎へ、稅斂を薄くして以て之を富まし、力役を省きて以て之を安んじ、之を親しみ之を愛し、嬛寡も咸く其の德を被る。後世は則ち然らず。磽碻の地、斥鹵の田、日に其の力を竭くし、月に其の功を加へ、才かに擔石を納むれば、則ち姦吏其の利を爭ふ。稅する所は什の六七、庸調と併せ收め、盡くさざれば已まず。偶たま肥壤の入る所、以て食に當つべき者有れば、盡くして之を計へ、校べて之を正し、課役と並べ賦し、竭くさざれば置かず。窮乏して死に至るも、曾て回顧する無し。夫れ此くの如くなれば、則ち土に肥瘠無く、歲に豐險無く、凍餒相ひ依り、遂に其の業を廢す。計盡き術窮まれば、則ち販鬻して末を逐ふ者有り、奔走して乞食する者有り、溝壑に散轉する者有り、亡命して竊盜する者有り、攻略して相殺す者有り。人愈いよ少なく地愈いよ荒れ、負郭二頃の田も、收むる所は斗升に過ぎず。加ふるに水旱の災を以てすれば、則ち手を束ねて斃れんことを俟つ者有り。故に民の閭巷に在るや、善く鬻ぐ者は富み、善く耕す者は饑う。之を先王の典に視れば、豈に異ならずや。且つ其の策を爲す者、學ばず術無く、

現代語訳

(算盤に長けた商人の弁舌に)莫邪(古の名剣)も鈍ります。まして、相手はもとより理にかなっていて、こちらはもとより理にかなっていないのです。勝とうとしても、できるはずがありません。そもそも商人の富は、蓄えた財貨は万で数え、奴婢は千で数え、住居や器物、錦の刺繍や珠玉まで、私たち(士)に足りないものを彼らは余らせています。そのため諸侯も頭を下げ、父や兄のように敬います。先王が定めた爵位の意味は、どこにあるのでしょう。徳義の教えは途絶えてしまいました。これは他でもなく、官にそれを正す制度がないからです。農とは、様々な穀物を播き、春に耕して秋に収穫し、草の上に暮らし露に宿り、手足にたこを作り、労役で上に仕え、余力で父母や妻子を養うものです。たゆまず励むのが農夫の仕事です。人は食がなければ生きられません。地位が王公であり、富が天下を持つほどであっても、命をつかさどるのは農ではありませんか。ですから先王は司農の職を命じ、男に耕作をすすめ、女に紡織を教え、税を軽くして豊かにし、労役を減らして安んじ、親しみ愛し、寡夫・寡婦に至るまで皆がその徳を受けました。後の世はそうではありません。やせた土地や塩分の多い田で、日々力を尽くし、月々功を重ねて、わずかな穀物を納めると、悪い役人がその利を奪い合います。税は収穫の六、七割、その上に庸・調を併せて取り立て、尽くさなければやみません。たまたま肥えた土地の収穫で食を賄えるほどの者がいれば、すべて数え上げ、査定して正し、課役とともに課し、搾り尽くさなければ置きません。困窮して死に至っても、振り返ることもありません。こうなれば土地に肥えた痩せたの別はなく、年に豊作凶作の別はなく、飢えと寒さに苦しむ者同士が寄り添い、ついには農業をやめてしまいます。策が尽き手立てが窮まると、商いに走る者、あちこち走り回って乞食をする者、溝や谷に転がり倒れる者、亡命して盗みをする者、略奪して殺し合う者が出ます。人は減り、地はいよいよ荒れ、町の近くの二頃の田でも収穫は斗升に過ぎません。そこへ水害や旱魃が加われば、手をこまねいて死を待つ者も出ます。ですから庶民の間では、うまく売る者は富み、うまく耕す者は飢えます。これを先王の法に照らせば、まるで異なっているではありませんか。しかも、その策を立てる者は、学ばず術もなく、

解説

この節は、食を支える農を最も重んじ、重税と役人の収奪が人を離散させると描きます。当時の社会への批判として書かれた部分ですが、歴史的な論として淡々と読めば、現場を支える人の負担を見ずに取り立てを強めれば、基盤そのものが痩せていくという指摘です。現代の組織でも、成果を生む現場の疲弊に気づかず、目標や負担を上乗せし続ければ、人材も実績も失われます。現場の実情を数字だけでなく声で確かめ、負担の見直しを検討する観点で読めます。

この章句が説くこと

柳子新論抄録山県大貳農現場重税負担

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