留魂録 / 第九条
一、東口揚屋ニ居ル水戶ノ郷士堀江克之助、余未タ一面ナシト雖トモ眞ニ知己ナリ、眞ニ益友ナリ、余ニ謂テ曰、昔シ矢部駿州ハ桑名矦ヘ御預ケノ日ヨリ絕食シテ敵讎ヲ詛テ死シ、果シテ敵讎ヲ退ケタリ、今足下モ自ラ一死ヲ期スルカラハ祈念ヲ籠テ内外ノ敵ヲ拂ハレヨ、一心ヲ殘置テ給ハレヨト、丁寧ニ告戒セリ、吾誠ニ此言ニ感服ス、
新字:一、東口揚屋ニ居ル水戸ノ郷士堀江克之助、余未タ一面ナシト雖トモ真ニ知己ナリ、真ニ益友ナリ、余ニ謂テ曰、昔シ矢部駿州ハ桑名矦ヘ御預ケノ日ヨリ絶食シテ敵讎ヲ詛テ死シ、果シテ敵讎ヲ退ケタリ、今足下モ自ラ一死ヲ期スルカラハ祈念ヲ籠テ内外ノ敵ヲ払ハレヨ、一心ヲ残置テ給ハレヨト、丁寧ニ告戒セリ、吾誠ニ此言ニ感服ス、
書き下し
一、東口揚屋に居る水戸の郷士堀江克之助、余未だ一面なしと雖も、真に知己なり、真に益友なり。余に謂ひて曰く、「昔し矢部駿州は桑名侯へ御預けの日より絶食して敵讎を詛ひて死し、果して敵讎を退けたり。今足下も自ら一死を期するからは、祈念を籠めて内外の敵を払はれよ、一心を残し置いて給はれよ」と、丁寧に告戒せり。吾誠に此の言に感服す。
現代語訳
東口の揚屋にいる水戸の郷士、堀江克之助は、私とは一度も顔を合わせたことがないが、まことの知己であり、まことに益になる友である。彼は私にこう言った。「昔、矢部駿河守は桑名侯へお預けとなった日から食を絶ち、仇敵を呪って死に、果たして仇敵を退けた。今あなたも自ら死を覚悟するからには、念を込めて国の内外の敵を払ってほしい。一心をこの世に残しておいてほしい」と、ねんごろに教え戒めてくれた。私はまことにこの言葉に感服した。
解説
この章句が説くこと
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尚書・泰誓上亶(まこと)に聡明なるもの、元后と作り、元后は民の父母と作る。今商王受、上天を敬せず、災を下民に降し、沈湎して色を冒し、敢て暴虐を行ふ。人を罪するに族を以てし、人を官するに世を以てす。惟れ宮室・台榭・陂池・侈服、以て爾万姓を残害す。忠良を焚炙し、孕婦を刳剔(こてき)す。皇天震怒し、我が文考に命じ、粛みて天威を将(おこな)はしむるも、大勛未だ集(な)らず。肆(ゆゑ)に予小子発、爾友邦の冢君を以て、政を商に観るに、惟れ受悛(あらた)むる心有る罔く、乃ち夷居して、上帝神祗に事へず、厥の先の宗廟を遺てて祀らず。犧牲粢盛(しせい)、既に兇盗に于(ゆ)く。乃ち曰く、『吾民有り命有り』と、其の侮を懲らす罔し。天下民を佑け、之が君を作り、之が師を作る。惟れ其れ克く上帝を相け、四方を寵綏せしむ。罪有ると罪無きと、予曷ぞ敢て厥の志を越ゆること有らん。力を同じくすれば徳を度り、徳を同じくすれば義を度る。受臣億万有れども、惟れ億万心なり。予臣三千有り、惟れ一心なり。商の罪貫盈し、天命じて之を誅す、予天に順はずんば、厥の罪惟れ鈞(ひと)し。予小子夙夜祗み懼れ、命を文考に受け、上帝に類し、冢土に宜し、爾有衆を以て、天の罰を厎(いた)さん。天民を矜(あはれ)み、民の欲する所、天必ず之に従ふ。爾尚はくは予一人を弼(たす)け、永く四海を清めよ。時なるかな、失ふべからず。」
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『不動智神妙録』一心の明らめやう神道、歌道、儒道とて道多く候へども、皆この一心の明なる所を申し候、言葉にて心を講釈したぶんにてはこの一心人と我身にあたりて、昼夜善事悪事とも業により家を離れ国を亡し其身の程々にしたがひ、善し悪しともに心の業にて候へども、此心を如何やうなるものぞと悟り明らむる人なく候て、皆心に感され候、
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孫子・作戦篇故に敵を殺すは怒なり、敵の利を取るは貨なり。故に車戦、車十乗以上を得ば、其の先ず得たる者を賞し、其の旌旗を更め、車は雑えて之に乗り、卒は善くして之を養う。是を敵に勝ちて益々強しと謂う。
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呂氏春秋・論威③凡そ軍は其の衆きを欲し、心は其の一なるを欲す。三軍心を一にすれば、則ち令、敵無からしむ可し。令能く敵無き者は、其の兵の天下に於けるや、亦た敵無し。古の至兵、民の令を重んずること、天下より重く、天子より貴し。其の民心に藏せられ、肌膚に捷するや、深痛執固にして、搖蕩す可からず、物の之を能く動かすもの莫し。此の若ければ則ち敵胡ぞ勝つに足らん。故に曰く、其の令彊き者は其の敵弱く、其の令信なる者は其の敵詘す、と。先づ之に此に勝てば、則ち必ず之に彼に勝つ。
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『驢鞍橋』卷上一日强く陀羅尼を誦する人来るに示して曰く、他念無く咒をくらるゝ事なにより好き事也。功を積まば業障尽き、病もぬけ寿も延び、心の苦も休み、臨終も正念なるべし、因に去る者曰く、某殿修行精に入られけるが、此比は機軽く体迄若やぎて見ゆると云ふ。師聞て曰く、中々さなくては、是非を思ふ念薄くなり、童に成るほとに若く見ゆへし。我も七十に余れとも、機また十八九にて居る也。
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尚書・泰誓中百姓過ち有らば、予一人に在り。今朕必ず往かん、我が武惟れ揚がり、之の疆(さかひ)に侵し、彼の兇残を取らん、我が伐用て張り、湯に于いて光有らん。勖(つと)めよや夫子、或いは畏るる無きこと罔かれ、寧ろ敵に非ずと執れ。百姓檁檁(りんりん)として、厥の角を崩すが若し。嗚呼(ああ)、乃ち一徳一心、立ちて厥の功を定めば、惟れ克く世を永くせん。」
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