呂氏春秋 / 分職⑤
白公勝得荊國,不能以其府庫分人。七日,石乞曰:「患至矣。不能分人則焚之,毋令人以害我。」白公又不能。九日,葉公入,乃發太府之貨予眾,出高庫之兵以賦民,因攻之。十有九日而白公死。國非其有也而欲有之,可謂至貪矣;不能為人,又不能自為,可謂至愚矣。譬白公之嗇,若梟之愛其子也。
新字:白公勝得荊国,不能以其府庫分人。七日,石乞曰:「患至矣。不能分人則焚之,毋令人以害我。」白公又不能。九日,葉公入,乃発太府之貨予衆,出高庫之兵以賦民,因攻之。十有九日而白公死。国非其有也而欲有之,可謂至貪矣;不能為人,又不能自為,可謂至愚矣。譬白公之嗇,若梟之愛其子也。
書き下し
白公勝、荊國を得、其の府庫を以て人に分つ能わず。七日にして、石乞曰く、「患至れり。人に分つこと能わずんば、則ち之を焚き、人をして以て我を害せしむること毋かれ。」白公又能わず。九日にして、葉公入り、乃ち太府の貨を發して衆に予え、高庫の兵を出だして以て民に賦え、因りて之を攻む。十有九日にして白公死す。國は其の有に非ざるなり、而るに之を有せんと欲するは、至貪と謂う可し。人の為にすること能わず、又自ら為にすること能わざるは、至愚と謂う可し。譬うるに白公の嗇は、梟の其の子を愛するが若きなり。
現代語訳
白公勝は楚の国を手に入れたが、その蔵の財を人に分け与えられなかった。七日後、石乞が「危機が迫っています。人に分けられないなら焼いてしまい、人がそれで我々を害することのないように」と言った。白公はそれもできなかった。九日後、葉公が入り、大府の財を出して民衆に与え、高庫の武器を出して民に与え、それで白公を攻めた。十九日目に白公は死んだ。国は自分の物でないのにこれを我が物にしようとするのは、極めて貪欲というべきだ。人のためにも使えず、自分のためにも使えないのは、極めて愚かというべきだ。喩えれば白公の吝嗇は、梟が我が子を愛する(甘やかして育て、その子が長じて母を食う)ようなものだ。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『淮南子』道應訓白公勝 荊國を得るも、府庫を以て人に分かつ能わず。七日、石乙 入りて曰く、「不義にして之を得、又た佈施する能わずんば、患い 必ず至らん。人に予うる能わずんば、之を焚くに若かず。人をして我を害せしむる毋かれ」と。白公 聽かざるなり。九日、葉公 入り、乃ち大府の貨を發して以て衆に予え、髙庫の兵を出だして以て民に賦し、因りて之を攻む。十有九日にして白公を禽にす。夫れ國は其の有に非ざるに、而も之を有たんと欲するは、至貪と謂う可し。人の爲にする能わず、又た以て自ら爲す無きは、至愚と謂う可し。白公の嗇なるを譬うれば、何を以て梟の其の子を愛するに異ならんや。故に老子曰く、「持して之を盈たすは、其の已むるに如かず。揣して之を鋭くするは、長く保つ可からざるなり」と。
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史記 伍子胥列伝伍子胥初め与に倶に亡げし所の故の楚の太子建の子の勝は、呉に在り。呉王夫差の時、楚の恵王勝を召して楚に帰さんと欲す。葉公諫めて曰く、「勝は勇を好みて陰かに死士を求む、殆ど私有らんか」と。恵王聴かず。遂に勝を召し、楚の辺邑鄢に居らしめ、号して白公と為す。白公楚に帰りて三年にして呉子胥を誅す。白公勝既に楚に帰り、鄭の其の父を殺せしを怨み、乃ち陰かに死士を養ひて鄭に報いんことを求む。楚に帰りて五年、鄭を伐たんことを請ふ。楚の令尹子西之を許す。兵未だ発せざるに晋鄭を伐ち、鄭救ひを楚に請ふ。楚子西をして往きて救はしめ、盟を与へて還る。白公勝怒りて曰く、「鄭の仇に非ず、乃ち子西なり」と。勝自ら剣を礪ぐ。人問ひて曰く、「何を以て為す」と。勝曰く、「以て子西を殺さんと欲す」と。子西之を聞き、笑ひて曰く、「勝は卵のごときのみ、何ぞ能く為さん」と。
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『春秋左氏伝』哀公十六年 白公の乱秋七月、子西・子期を朝に殺して、惠王を劫かす。子西、袂を以て面を掩ひて死す。子期曰く、「昔者吾、力を以て君に事ふ。以て終へざる可からず」と。豫章を抉きて以て人を殺し、而る後に死す。石乞曰く、「庫を焚き王を弒せん。然らずんば濟らず」と。白公曰く、「不可なり。王を殺すは不祥なり。庫を焚かば聚無し。將た何を以て守らんや」と。乞曰く、「楚國を有ちて其の民を治め、敬を以て神に事へば、以て祥を得可し。且つ聚有らん。何ぞ從はざるを患へん」と。葉公、蔡に在り。方城の外、皆曰く、「以て入る可し」と。子高曰く、「吾之を聞く、險を以て幸を徼むる者は、其の求むること饜く無し、と。偏重なれば必ず離れん」と。其の齊の管脩を殺すを聞きて、而る後に入る。白公、子閭を以て王と為さんと欲す。子閭可かず。遂に劫かすに兵を以てす。子閭曰く、「王孫若し楚國を安靖し、王室を匡正して、而る後に焉を庇はば、啟の願なり。敢へて聽從せざらんや。若し將に利を專らにして、以て王室を傾け、楚國を顧みざらんとせば、死有るとも能はず」と。
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史記 伍子胥列伝其の後四歳、白公勝、石乞と与に楚の令尹子西・司馬子綦を朝に襲殺す。石乞曰く、「王を殺さずんば不可なり」と。乃ち王を劫して高府に如く。石乞の従者屈固、楚の恵王を負ひて亡げ、昭夫人の宮に走る。葉公、白公の乱を為すを聞き、其の国人を率ゐて白公を攻む。白公の徒敗れ、亡げて山中に走り、自殺す。而して石乞を虜にし、白公の尸處を問ふも、言はず、将に亨んとす。石乞曰く、「事成らば卿と為り、成らずして亨らるるは、固より其の職なり」と。終に其の尸處を告ぐるを肯ぜず。遂に石乞を亨、而して恵王を求めて復た之を立つ。太史公曰く、「怨毒の人に於けるや甚だしきかな。王者すら尚ほ之を臣下に行ふ能はず、況んや同列をや。向に伍子胥をして奢に従ひて倶に死せしめば、何ぞ螻蟻に異ならん。小義を棄てて大恥を雪ぎ、名を後世に垂る、悲しいかな。子胥の江上に窘み、道に食を乞ふに方り、志豈に嘗て須臾も郢を忘れんや。故に隠忍して功名を就すは、烈丈夫に非ずんば孰か能く此れを致さん。白公の如き自ら立ちて君と為らざる者は、其の功謀も亦た勝げて道ふ可からざる者なるかな」と。
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『新序』義勇第八白公勝既に令尹・司馬を殺し、王子閭を立てて以て王と爲さんと欲す。王子閭肯ぜず。之を劫かすに刃を以てす。王子閭曰く、王孫楚國を輔相し、王室を匡正して、后に自ら庇わん。閭の願いなり。今子威を假りて以て王室を暴し、殺伐して以て國家を亂す。吾死すと雖も、子に從わざるなり、と。白公勝曰く、楚國の重き、天下に有る無し。天以て子に與う。子何ぞ受けざる、と。王子閭曰く、吾聞く、天下を辭する者は、其の利を輕んずるに非ざるなり。以て其の德を明らかにするなり。諸侯と爲らざる者は、其の位を惡むに非ざるなり。以て其の行を潔くするなり、と。今吾國を見て主を忘るるは、不仁なり。白刃に劫かされて義を失うは、不勇なり。子我に吿ぐるに利を以てし、我を威すに兵を以てすと雖も、吾爲さざるなり、と。白公之を强う。可ならず。遂に之を殺す。葉公高衆を率いて白公を誅し、惠王を國に反す。
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国語・楚語下子西曰く、「徳は其れ怨みを忘れしめんか。余之を善くせば、夫れ乃ち其れ寧(やす)からん」と。子高曰く、「然らず。吾之を聞く、唯仁者のみ好(よみ)すべく、悪(にく)むべく、高くすべく、下すべきなり。之を好すれども偪(せま)らず、之を悪めども怨まず、之を高くすれども驕らず、之を下せども懼れず。不仁者は則ち然らず。人之を好すれば則ち偪り、之を悪めば則ち怨み、之を高くすれば則ち驕り、之を下せば則ち懼る。驕れば欲有り、懼るれば悪有り。欲・悪・怨・偪は、詐謀を生ずる所以なり。子将に若何(いかん)せんとする。若し召して之を下さば、将に戚(うれ)えて懼れんとす。之が上と為さば、将に怒りて怨まんとす。詐謀の心、靖(やす)んずる所無からん。一の不義有るも、猶お国家を敗る。今五六を壹(いつ)にして、必ず之を用いんと欲す。亦難からずや。吾聞く、国家将に敗れんとすれば、必ず姦人を用いて、其の疾味を嗜むと。其れ子の謂いか。 「夫れ誰か疾眚(しっせい)無からん。能者は早く之を除く。旧怨ありて宗を滅ぼされしは、国の疾眚なり。之が為に関籥(かんやく)・蕃籬(はんり)して遠く備えて之を閑(ふせ)ぐも、猶お其の至らんことを恐る。是を之れ日に惕(おそ)ると為す。若し召して之を近づけば、死すること日無からん。人言える有り、曰く、『狼子(ろうし)は野心あり、怨賊の人なり』と。其れ又何をか善くせん。若し子我を信ぜずんば、盍(なん)ぞ若敖氏(じゃくごうし)と子干(しかん)・子皙(しせき)の族とを求めて之を近づけざる。安(いずく)んぞ勝を用いん。其れ能く幾何ぞ。 「昔斉の騶馬繻(すうばじゅ)は胡公を以て具水に入れ、邴歜(へいしょく)・閻職(えんしょく)は懿公(いこう)を囿竹(ゆうちく)に戕(そこな)い、晋の長魚矯(ちょうぎょきょう)は三郤(さんげき)を榭(しゃ)に殺し、魯の圉人(ぎょじん)犖(らく)は子般(しはん)を次(じ)に殺せり。夫れ是れ誰の故ぞや、唯旧怨に非ずや。是れ皆子の聞く所なり。人多く善敗を聞かんことを求むるは、以て監戒せんとなり。今子聞きて之を棄つるは、猶お耳を蒙(おお)うがごとし。吾子に語るも何の益かあらん。吾は逃るるを知るのみ」と。 子西笑いて曰く、「子の勝(まさ)るを尚ぶや」と。従わず、遂に白公と為さしむ。子高疾を以て蔡に閑居す。白公の乱に及び、子西・子期死す。葉公之を聞きて曰く、「吾其の吾が言を棄てしを怨むも、其の楚国を治めしを徳とす。楚国の能く平均にして以て先王の業に復せしは、夫子なり。小怨を以て大徳を寘(お)くは、吾不義なり。将に入りて之を殺さんとす」と。方城の外を帥いて以て入り、白公を殺して王室を定め、二子の族を葬る。

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