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論衡 / 『論衡』佚文篇第六十一・金や情で筆を曲げない

揚子雲作《法言》、蜀富人齎錢千萬、願載於書、子云不聽。夫富無仁義之行、〔猶〕圈中之鹿、欄中之牛也、安得妄載!班叔皮續《太史公書》、載鄉里人以為惡戒。邪人枉道、繩墨所彈、安得避諱?是故子云不為財勸、叔皮不為恩撓。文人之筆、獨已公矣。

新字:揚子雲作《法言》、蜀富人齎銭千万、願載於書、子云不聴。夫富無仁義之行、〔猶〕圏中之鹿、欄中之牛也、安得妄載!班叔皮続《太史公書》、載郷里人以為悪戒。邪人枉道、縄墨所弾、安得避諱?是故子云不為財勧、叔皮不為恩撓。文人之筆、独已公矣。

書き下し

揚子雲『法言』を作るに、蜀の富人銭千万を齎し、書に載せられんことを願うも、子雲聴かず。夫れ富みて仁義の行い無きは、猶お圏中の鹿、欄中の牛のごときなり、安んぞ妄りに載す可けんや。班叔皮『太史公書』を続ぎ、郷里の人を載せて以て悪戒と為す。邪人は道を枉げ、縄墨の弾く所なり、安んぞ避諱するを得ん。是の故に子雲は財の為に勧まず、叔皮は恩の為に撓まず。文人の筆は、独り已に公なり。

現代語訳

揚子雲が『法言』を著したとき、蜀の富豪が銭一千万を持ってきて、書に名を載せてほしいと願いましたが、子雲は聞き入れませんでした。富んでいても仁義の行いがない者は、囲いの中の鹿や柵の中の牛のようなもので、どうして軽々しく書に載せられましょうか。班叔皮は『太史公書』を続けて書き、郷里の人を載せて悪事への戒めとしました。邪な人は道を曲げ、縄墨の裁きを受ける者ですから、どうして遠慮して名を伏せられましょうか。こうして、子雲は財に動かされて書かず、叔皮は恩義に曲げられず書きました。文人の筆は、ただ公正でなければなりません。

解説

学者の筆を金や情に曲げさせない姿勢を、王充は揚雄と班叔皮の例で示します。『論衡』は、記録に値するかどうかを、肩書きや財力でなく行いの実質で決めるべきだと考える書です。広報や評価の現場に置き換えれば、広告費を払う相手や親しい人を良く書きたい誘惑は、どの組織にもあります。人事評価や社内報、取引先の紹介で、金や恩義が判断を曲げていないか。記録する側の独立が、組織の信用を支えるという点を考えさせます。
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この章句が説くこと

揚子雲班叔皮公正記録誘惑文人の筆

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