論衡 / 『論衡』自然篇第五十四・苗を引き抜く宋人の愚
然雖自然、亦須有為輔助。耒耜耕耘、因春播種者、人為之也;及谷入地、日夜長(夫)〔大〕、人不能為也。或為之者、敗之道也。宋人有閔其苗之不長者、就而揠之、明日枯死。夫欲為自然者、宋人之徒也。
書き下し
然れども自然と雖も、亦た有為の輔助を須つ。耒耜もて耕耘し、春に因りて播種するは、人の之を為すなり。谷の地に入りて、日夜長大するに及びては、人の為す能わざるなり。或いは之を為すは、敗るの道なり。宋人に其の苗の長ぜざるを閔う者有り、就きて之を揠き、明日枯死す。夫れ自然を為さんと欲する者は、宋人の徒なり。
現代語訳
とはいえ、物事が自然に成るといっても、人が手を加えて助けることも必要です。すき・くわで耕し草を取り、春に合わせて種をまくのは、人のすることです。しかし、種が地に入ってから、昼も夜も育って大きくなるのは、人にはできません。それをなお手出ししようとするのは、だめにする道です。宋の人に、苗が伸びないことを心配する者がいて、行って苗を引っ張り、翌日には枯れてしまいました。自然のはたらきを自分で作り出そうとする者は、この宋の人の仲間です。
解説
『孟子』公孫丑上の、苗を引っ張って助け伸ばそうとして枯らした宋の人のたとえを、王充が自然と人為の分担を説くために使う箇所です。耕して種をまくまでは人の仕事、芽が育つのは人にはできない、という線引きが要点です。自然篇は、天は意志を持たず自ずから万物が成るとする篇です。人材育成や組織づくりにも通じます。環境を整え、機会を与えるのは管理職の務めですが、成長そのものを急かして引っ張ると、かえって潰してしまいます。何を自分が整え、何を相手の成長に任せるのか、線を引く目安になります。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
揠苗自然と人為宋人育成種まき手を出さない
関連する章句
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『論語と算盤』常識と習慣・親切らしき不親切孟子自身は浩然の気を養ってこの修養に資したが、凡人はとかく所作に間違いを来しやすい。孟子はその例として「宋人有閔其苗之不長而揠之者、芒芒然帰、謂其人曰、今日病矣、予助苗長矣、其子趨而往視之、苗則槁矣云々」と、大いに告子を罵倒している。
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『論語と算盤』常識と習慣・親切らしき不親切苗を長ぜしめるには水の加減、肥料の加減、草を刈り除くことによらなければならぬのに、これを引き抜いて長ぜしめようとするのはいかにも乱暴である。孟子の不動心術の可否はともかく、世間おうおうにして苗を助けて長ぜしむるの行為あることは争われぬ事実である。苗を長ぜしめたいというその志は誠に善であるが、これを抜くという所作が悪である。この意味を拡充して考えると、志がいかに善良で忠恕の道に適っていても、その所作がこれに伴わなければ、世の信用を受けることが出来ぬ訳である。
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『呻吟語』外篇・廣喻・皆な揠苗の見なり卜築を問ふ者も亦た然り。天下豈に兒の下迫せざるに強ひて自ら催生するの理有らんや。大抵皆な揠苗の見なり。
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言志四録・言志録 第五十条 財成輔相は耕作に似たり五穀は自ら生ず。耒耜を仮りて以て之を助く。人君の財成輔相も、亦此れと似たり。
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『淮南子』原道訓夫れ峭法刻誅なる者は、霸王の業に非ざるなり。箠策繁く用うる者は、遠きを致すの術に非ざるなり。離朱の明は、箴末を百歩の外に察するも、淵中の魚を見る能わず。師曠の聰は、八風の調を合するも、十里の外を聽く能わず。故に一人の能に任ずるは、三畝の宅を治むるに足らざるなり。道理の數を脩め、天地の自然に因らば、則ち六合も均するに足らず。是の故に禹の瀆を決するや、水に因りて以て師と為し、神農の穀を播くや、苗に因りて以て教えと為す。夫れ萍は根を水に樹て、木は根を土に樹て、鳥は虛を排して飛び、獸は實を蹠みて走り、蛟龍は水に居り、虎豹は山に處るは、天地の性なり。兩木相い摩して然え、金火相い守りて流れ、員なる者は常に轉じ、窾なる者は浮くを主るは、自然の勢なり。是の故に春風至れば則ち甘雨降り、萬物を生育し、羽ある者は嫗伏し、毛ある者は孕育し、草木榮華し、鳥獸卵胎するも、其の為す者を見る莫くして、功既に成る。秋風霜を下せば、倒生挫傷し、鷹鵰搏鷙し、昆蟲蟄藏し、草木根に註ぎ、魚鱉淵に湊るも、其の為す者を見る莫くして、滅して形無し。木に處る者は榛巢し、水に居る者は窟穴し、禽獸に芄有り、人民に室有り、陸處は牛馬に宜しく、舟行は水多きに宜しく、匈奴は穢裘を出だし、於越は葛絺を生ず。各ミ急とする所を生じて以て燥溼に備え、各ミ處る所に因りて以て寒暑を禦ぎ、並びに其の宜しきを得て、物は其の所に便なり。此に由りて之を觀れば、萬物は固より以て自然なり、聖人又た何をか事とせんや。
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論語・子罕篇子曰く、苗にして秀でざる者有るかな。秀でて実らざる者有るかな。