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論衡 / 『論衡』治期篇第五十三・治まる世と乱れる世の錯覚

賢君之立、偶在當治之世、德自明於上、民自善於下、世平民安、瑞佑并至、世則謂之賢君所致。無道之君、偶生於當亂之時、世擾俗亂、災害不絕、遂以破國亡身滅嗣、世皆謂之為惡所致。若此、明於善惡之外形、不見禍福之內實也。

新字:賢君之立、偶在当治之世、徳自明於上、民自善於下、世平民安、瑞佑并至、世則謂之賢君所致。無道之君、偶生於当乱之時、世擾俗乱、災害不絶、遂以破国亡身滅嗣、世皆謂之為悪所致。若此、明於善悪之外形、不見禍福之内実也。

書き下し

賢君の立つや、偶たま治まるべきの世に在り、徳は自ずから上に明らかに、民は自ずから下に善く、世平らかに民安く、瑞佑并び至れば、世は則ち之を賢君の致す所と謂う。無道の君は、偶たま乱るべきの時に生まれ、世擾れ俗乱れ、災害絶えず、遂に国を破り身を亡ぼし嗣を滅ぼすに至れば、世は皆之を悪を為せるの致す所と謂う。此くの若きは、善悪の外形に明らかにして、禍福の内実を見ざるなり。

現代語訳

賢い君主が立つのが、たまたま治まるはずの時代に当たり、上では徳が自然に明らかになり、下では民が自然に善くなって、世が平らかで民が安らぎ、めでたい兆しが重なると、世間はそれを賢君が招いたものだと言います。道に外れた君主が、たまたま乱れるはずの時代に生まれ、世の中が騒がしく風俗が乱れ、災害が絶えず、ついに国を破り、わが身を亡ぼし、跡継ぎを絶やすに至ると、世間はみな悪を行ったせいだと言います。こう見るのは、善悪という外側の姿を見て、禍福の内側の実情を見ていないのです。

解説

王充は、国の治乱は君主の徳より、巡り合わせた時の数によると考える立場で、この一節ではその錯覚の仕組みを描きます。治まる時代に賢君が立てば手柄にされ、乱れる時代に暗君が立てば全責任を負わされる、という指摘です。治期篇は、治乱は命や時で決まり政治の善悪では決まらないとする篇ですが、努力を軽んじる面もあり、そのまま受け取る必要はありません。現代の経営でも、好況期に着任した経営者が名経営者とされ、不況期の人が無能とされることがあります。結果だけでなく、置かれた局面を差し引いて評価すると、人の見方が公平になります。
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この章句が説くこと

賢君時運治乱外形と内実評価巡り合わせ

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