論衡 / 『論衡』量知篇第三十五・学ばぬ者は銭なしで市に行く
手中無錢之市、使貨主問曰「錢何在」、對曰「無錢」、貨主必不與也。夫胸中不學、猶手中無錢也。欲人君任使之、百姓信向之、奈何也!
新字:手中無銭之市、使貨主問曰「銭何在」、対曰「無銭」、貨主必不与也。夫胸中不学、猶手中無銭也。欲人君任使之、百姓信向之、奈何也!
書き下し
手中に銭無くして市に之き、貨主をして問わしめて「銭は何くにか在る」と曰わしめ、対えて「銭無し」と曰わば、貨主は必ず与えざるなり。夫れ胸中に学ばざるは、猶お手中に銭無きがごときなり。人君の之を任使し、百姓の之を信向せんことを欲するも、奈何ぞや。
現代語訳
手に銭を持たずに市場へ行ったとします。売り手が「銭はどこにあるのか」と尋ね、「銭はない」と答えれば、売り手は必ず品物を渡しません。胸の中に学びがないのは、手に銭がないのと同じです。それでいて、君主に任用されたい、民に信頼されたいと願っても、どうにもなりません。
解説
量知篇の結びにある、学問を貨幣にたとえた一節です。王充は、学問を積まずに官職や信頼だけを得ようとするのは、銭を持たずに買い物をするようなものだと言います。批判の相手は、筆と帳簿の技術だけで仕えようとする文吏で、経書の学びを持つ儒生との対比で語られています。読み替えれば、仕事で信頼を得たい、任されたいと望むなら、先に差し出せる中身を蓄えておく必要がある、ということです。肩書や人脈より前に、手持ちの知識と経験という元手を点検する視点が得られます。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
学問元手信頼任用胸中儒生
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