論語と算盤 / 実業と士道・摸倣時代に別れよ
次に我々は奨励会の事業を選択して置く必要がある、奨励は其の声ばかりでも効益は少ないが、折角会組織にしたのであるから、是非目的を貫徹する為に実際の事業に着手し、範を天下に示すべきである、目下の所では会報を発行する以外、具体的に決定したものはないが、規則書にもある通り、今後は国産の調査研究、共進会の開催、講話会の開催、商品陳列場の完備、一般の質疑応答、輸出奨励策等を実施して行くのである、特に研究所の設立、産業上の注意、市場又は製品の紹介、試験分析、証明の依頼に応ずることなどは裨益する所大なるものがあらうと思ふ、而して事業の成否は一に係つて各人の双肩にあるのだから、御互にこの会の発展と利用とに力を注がねばならぬ。
書き下し
次に我々は奨励会の事業を選択して置く必要がある。奨励はその声ばかりでも効益は少ないが、せっかく会組織にしたのであるから、是非目的を貫徹するために実際の事業に着手し、範を天下に示すべきである。目下の所では会報を発行する以外、具体的に決定したものはないが、規則書にもある通り、今後は国産の調査研究、共進会の開催、講話会の開催、商品陳列場の完備、一般の質疑応答、輸出奨励策等を実施して行くのである。特に研究所の設立、産業上の注意、市場または製品の紹介、試験分析、証明の依頼に応ずることなどは裨益する所大なるものがあろうと思う。そして事業の成否は一に係って各人の双肩にあるのだから、お互いにこの会の発展と利用とに力を注がねばならぬ。
現代語訳
次に我々は、奨励会の事業を選んでおく必要がある。奨励は掛け声だけでも少しの効果はあるが、せっかく会の組織にしたのだから、ぜひ目的を貫くために実際の事業に取りかかり、世の中に手本を示すべきである。今のところ会報を発行する以外に具体的に決まったものはないが、規則書にもあるとおり、今後は国産品の調査研究、共進会(品評会)の開催、講話会の開催、商品陳列場の整備、一般からの質問への応答、輸出奨励策などを実施していくのである。とくに研究所の設立、産業上の注意、市場や製品の紹介、試験・分析、証明の依頼に応じることなどは、役に立つところが大きいだろうと思う。そして事業の成否はひとえに各人の双肩にかかっているのだから、互いにこの会の発展と活用に力を注がなければならない。
解説
関連する章句
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『論語と算盤』実業と士道・摸倣時代に別れよ最後に当局者に一言して置きたい事は、奨励は大いにこれを努めねばならぬが、不自然不相応の奨励を行えばついに無理ができる。親切なやり方もかえって不親切な結果となり、保護したつもりが干渉束縛となる。ことに商品の試験および紹介をする際には、私利私情を離れて一に邦家のためを念い、公平と親切とを忘れざらん事を切望して置く。さらにまた日本品使用の機運が動いたのを奇貨として、つまらぬ物を粗製濫造し、忠良なる国民を欺瞞し、一時の私腹を肥やさんと試むる商売人もあろう。このごときもまた国産の発達を阻害すること尠少でないから、相警めてかかる不逞漢の輩出を防がねばならぬのである。
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『論語と算盤』実業と士道・摸倣時代に別れよ維新以来早くも半世紀になろうとする今日、かつまた東洋の盟主、世界の一等国をもって任じている今日の日本国たるもの、いつまで欧米心酔の夢を見ているのであろう。いつまで自国軽蔑の不見識をあえてするつもりであろう。実に意気地のない話である。外国のレッテルが貼ってあるからこの石鹸は良いぞと威かされたり、外国品だからこのウイスキーを飲まなければ、時勢後れの人間に見られると怖れるようで、それで独立国の権威と大国民の襟度がどうして保たれて行かれよう。私は実に国民の大自覚を望むのである。我々は今日ただ今、心酔の時代と袂別せねばならぬ。模倣の時代から去って、自発自得の域に入らねばならぬ。
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『論語と算盤』実業と士道・文明人の貪戻吾人はすべからく進んで支那の富源を開発し、その産業を進め、その販路を拡めて、通商上の利益を増加するように心掛けねばならぬ。我が国民の今日まで支那に対する商工業経営の態度を見るに、とかく個々別々であって、その間に少しも聯絡がない。ドイツの政治経済機関が統一して密接な関係を保っているのを見るにつけても、我が国民がこの歴史的においても、はたまた人種的においても、幾多の便宜を有する国柄なるにかかわらず、彼らの後えに瞠若たるようではならぬ。そしてこの覚悟は特に我が青年に対して最も望ましき所である。どうか今日の青年諸氏はかかる所に注目して力を入れてもらいたいのである。
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『論語と算盤』立志と学問・勇猛心の養成法要するに、我が国今日の状態は、姑息なる考えをもって、従来の事業を謹直に継承して足れりとすべき時代ではない。まだ創設の時代であって、先進国の発展に企及し、さらに凌駕せねばならぬのであるから、一般に一大覚悟をもって、万難を排し勇往猛進すべき時である。それには不断心身の健全なる発達を促し、潑溂たる活動をなし得る活力を旺盛ならしむる心掛けを忘れてはならぬ。青年に対してことにこの点を望んでやまぬ次第である。
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『論語と算盤』実業と士道・相愛忠恕の道を以て交はるべしこれについてまず試みるべきは開拓事業であって、すなわち支那の富源を拓き天与の宝庫を展開して、その国富を増進せしむるにある。そしてこれが経営の方法は、両国民の共同出資による合弁事業となすが最良法である。ひとり開拓事業にとどまらず、その他の事業においてもまたその組織は日支合弁事業とするのである。かくするにおいては日支間に緊密なる経済的連鎖を生じ、したがって両国間に真個の提携をなし得るのである。余の関係せる中日実業会社は、この意味において発起設立せられたるものにて、その成功を期せんとする所以もまたここに存するのである。
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『論語と算盤』実業と士道・摸倣時代に別れよたびたび識者が力説する通り、我が国民の思想には忌むべき弊習がある。それはすなわち外国品偏重の悪風である。外国品だからとて別段排斥する必要がないように、これを偏重するのあまり内地品を卑下する理由もないはずである。しかるに舶来品といえばすべて優秀なものばかりとの観念が、深く国民の上下に普及しているのは誠に慨嘆に堪えない。もっとも日本の文明は最近の発達で、しかも欧米諸国からの移植に負う所がすこぶる多いために、かつては欧化主義の流行に苦しみ、今もなおその余弊として、この舶来品愛重の勢いをなしていることと思われる。けれども
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