論語 / 公冶長篇
子路有聞,未之能行,唯恐有聞。
書き下し
子路聞くこと有りて、未だ之を行うこと能わざれば、唯だ聞くこと有らんことを恐る。
現代語訳
子路は教えを聞いて、それをまだ実行できないでいるあいだは、次の教えを聞くことだけを恐れた。
解説
たった十数字で、一人の人物の生き方が刻まれている。子路は新しい教えを聞くのが怖かった。前に聞いたことをまだ実行できていないのに、また一つ借りが増えるからである。学びを蓄積ではなく債務として数えた人だと言ってよい。現代はこの逆に振れやすい。本を読み、講座に出て、記事を保存する。インプットの量は増え続け、実行に移した数は誰も数えない。聞いた瞬間の高揚が、実行したときの手応えの代わりになってしまう。子路の恐れは、この代替を許さない設計である。実務に落とすなら簡単だ。学んだことを一つ実行するまで、次の新しいものに手を出さないと決める。読める本の数は減る。だが、変わったことの数は増える。