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論語と算盤 / 算盤と権利・競争の善意と悪意

之を要するに、何業に拘はらず、自己の商売に勉強は飽くまでせねばならぬ、また注意も飽くまでせねばならぬ、進歩は飽くまでせねばならぬのであるが、それと同時に悪競争をしては為らぬといふことを、強く深く心に留めて置かねば為らぬのである。

書き下し

これを要するに、何業にかかわらず、自己の商売に勉強はあくまでせねばならぬ。また注意もあくまでせねばならぬ。進歩はあくまでせねばならぬのであるが、それと同時に悪競争をしてはならぬということを、強く深く心に留めておかねばならぬのである。

現代語訳

要するに、どんな業種であれ、自分の商売に励むことはあくまでもしなければならない。また注意もあくまでもしなければならない。進歩もあくまでもしなければならないのであるが、それと同時に、悪い競争をしてはならないということを、強く深く心に留めておかなければならないのである。

解説

章の結論である。渋沢は競争を否定しない。勉強も注意も進歩も「飽くまで」せよ、と三度繰り返す。そのうえで、同時に悪い競争をしてはならないことを強く深く心に留めよ、と言う。競争の熱意と道徳の抑制を両方とも最大にせよ、という要求である。どちらかを弱めて釣り合いを取るのではない点が大切である。道徳を持ち出すと、競争を控えめにせよという話に聞こえがちだが、渋沢の言う道徳は勝負から降りることではない。精一杯に励み、そのうえで勝ち方を選ぶことである。第一国立銀行をはじめ多くの会社を興し、激しい競争の中で事業を育ててきた渋沢だからこそ、この両立を当然のこととして語ることができた。売上や市場占有率を追う現代の企業にとっても、全力で競うことと、競い方を誤らないことは、同じ一つの務めである。

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