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論語と算盤 / 理想と迷信・人生観の両面

換言すれば、それが孔子の処世上の覚悟であるが、余も亦人生の意義は此くあるべき筈だと思ふ。

書き下し

換言すれば、それが孔子の処世上の覚悟であるが、余もまた人生の意義はかくあるべき筈だと思う。

現代語訳

言い換えれば、それが孔子の世に処するうえでの覚悟であるが、私もまた、人生の意義はこうあるべきはずだと思う。

解説

章の結びの一文である。この直前の段で、渋沢は「仁者は己れ立たんと欲して先づ人を立て、己れ達せんと欲して先づ人を達す」(『論語』雍也篇)を引き、これを見返りを求める取引ではなく、君子の行いの順序だと読んだ。そのうえで、それが孔子の処世の覚悟であり、自分もまた人生の意義はそうあるべきだと思う、と締めくくる。短い一文だが、渋沢がこの論を自分自身の生き方として引き受けていることがわかる。彼は幕臣から大蔵官僚、そして民間の実業家へと立場を大きく変えたが、どの立場でも、自分が立つことより先に、人を立て、事業を立てることを考えて動いた。五百余の会社に関わりながら財閥をつくらなかったことは、その表れとしてよく語られる。人生の意義を抽象的に論じるのではなく、「処世上の覚悟」、つまり日々の行いの構えとして語る点に、実践の人としての渋沢が表れている。自分の成功と周りの成功の順序をどう置くかは、リーダーの覚悟そのものである。

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