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論語と算盤 / 立志と学問・社会と学問との関係

此の一例は、学問と社会との関係の上に応用して考へて見ると、直ちに了解し得る事と思ふが、兎に角、社会の事物の複雑なることを、前以て充分に会得して、如何に用意して居ても、実際には意外なことが多いものであるから、学生は平常一層の注意を払つて研究して置かねばならぬのである。

書き下し

この一例は、学問と社会との関係の上に応用して考えて見ると、直ちに了解し得る事と思うが、とにかく、社会の事物の複雑なることを、前もって充分に会得して、いかに用意していても、実際には意外なことが多いものであるから、学生は平常一層の注意を払って研究しておかねばならぬのである。

現代語訳

この一例は、学問と社会との関係に当てはめて考えてみれば、すぐに理解できることと思う。ともかく、社会の物事が複雑であることを前もって十分に心得て、どれほど用意していても、実際には意外なことが多いものであるから、学生はふだんからいっそうの注意を払って研究しておかなければならないのである。

解説

地図と実地の比喩を受けた、章の結びの一段である。渋沢の結論は二重になっている。社会の複雑さを前もって十分に会得せよ。しかし、どれほど用意しても実際には意外なことが多い。準備を説きながら、準備の限界も同時に認めているのである。これは一見矛盾に見えるが、実務家の知恵としては筋が通っている。準備の意味は、意外なことを無くすことではなく、意外なことが起きても大局を見失わないための足場を作ることにある。地図が詳しいほど、実地との違いにも気づきやすい。学生に向けた言葉だが、新規事業の計画書を書く人にも、そのまま当てはまる。計画は必ず狂う。狂うことを前提に、どこで何を頼りに立て直すかまで考えておくことが、本当の意味での用意なのである。

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