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驢鞍橋 / 卷中

又僧云ふ、若しひしと僉議に及はゝ如何師曰く佛は萬德圓滿に窮つた也。然る間、萬德に相應する樣に修するを正法と立て、是れに差ふを邪法と定むへし。只此の一句を以て、天下の佛法を一筋に正法に作さんと思ふて、念願の口に書く、なにと言ひ得る人も有らんや。大略自由に云ふ人有るへからず。此の萬德は、我も近い比働て書きたり。さあ御坊主達云つて見られよ。衆無語。

新字:又僧云ふ、若しひしと僉議に及はゝ如何師曰く仏は万徳円満に窮つた也。然る間、万徳に相応する様に修するを正法と立て、是れに差ふを邪法と定むへし。只此の一句を以て、天下の仏法を一筋に正法に作さんと思ふて、念願の口に書く、なにと言ひ得る人も有らんや。大略自由に云ふ人有るへからず。此の万徳は、我も近い比働て書きたり。さあ御坊主達云つて見られよ。衆無語。

書き下し

又僧云ふ、若しひしと僉議に及はゝ如何師曰く仏は万徳円満に窮つた也。然る間、万徳に相応する様に修するを正法と立て、是れに差ふを邪法と定むへし。只此の一句を以て、天下の仏法を一筋に正法に作さんと思ふて、念願の口に書く、なにと言ひ得る人も有らんや。大略自由に云ふ人有るへからず。此の万徳は、我も近い比働て書きたり。さあ御坊主達云つて見られよ。衆無語。

現代語訳

また僧が言った。「もし厳しく吟味することになったらどうなさいますか。」師は言われた。「仏は万徳円満に極まっている。だから、万徳に相応するように修めるのを正法と立て、これに違うのを邪法と定めればよい。ただこの一句によって、天下の仏法を一筋に正法にしようと思って、念願の冒頭に書いたのだ。これに何か言い返せる人がいるだろうか。おおよそ自在に言える人はいないはずだ。この万徳は、自分も近ごろ苦心して書いたのである。さあ、お坊様方、言ってみられよ。」一同は言葉がなかった。

解説

吟味が厳しくなったら何を基準に正邪を分けるのか、という僧の問いへの正三の答えである。正三は、仏は万徳円満なのだから、万徳にかなう修行を正法、外れるものを邪法とすればよいと、ただ一句で基準を示した。宗派ごとの教義の細かな違いに踏み込まず、根本の一点で判定しようとする発想である。さあ言ってみよと迫られて、僧たちが黙り込んだという結びには、正三の自信と気迫がよく表れている。複雑な問題ほど、誰もが認める根本の基準を一つ立てることが大切だと教えてくれる。

この章句が説くこと

万徳正法邪法基準僉議

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