驢鞍橋 / 卷中
師衆に向て云はく、いづれも云つて看よ。時に一僧云ふ、善根の事は、虛言に云ふも功德也。師云はく、是れ其義に非す、是れ結緣の功德と云ふ物也。前の者は、我作つた功德にて遁る也。後の者は、我成したる功德は無けれ共、法華功德持ちたる人に結緣したる功徳にて遁るゝ也。何と結緣の功德大切の事にあらすやと也。
新字:師衆に向て云はく、いづれも云つて看よ。時に一僧云ふ、善根の事は、虚言に云ふも功徳也。師云はく、是れ其義に非す、是れ結縁の功徳と云ふ物也。前の者は、我作つた功徳にて遁る也。後の者は、我成したる功徳は無けれ共、法華功徳持ちたる人に結縁したる功徳にて遁るゝ也。何と結縁の功徳大切の事にあらすやと也。
書き下し
師衆に向て云はく、いづれも云つて看よ。時に一僧云ふ、善根の事は、虚言に云ふも功徳也。師云はく、是れ其義に非す、是れ結縁の功徳と云ふ物也。前の者は、我作つた功徳にて遁る也。後の者は、我成したる功徳は無けれ共、法華功徳持ちたる人に結縁したる功徳にて遁るゝ也。何と結縁の功徳大切の事にあらすやと也。
現代語訳
師は衆に向かって言われた。「皆それぞれ言ってみよ」。その時一人の僧が言った。「善根のことは、嘘で言っても功徳になるのです」。師が言われた。「それはその意味ではない。これは結縁の功徳というものだ。前の者は、自分が作った功徳によって逃れたのである。後の者は、自分が成した功徳は無いけれども、法華経の功徳を持っている人に縁を結んだ功徳によって逃れたのである。なんと、結縁の功徳は大切なことではないか」と。
解説
僧は、嘘でも善を口にすれば功徳になると答えたが、正三はそれを退けた。後の男を救ったのは嘘ではなく、功徳を持つ人と縁を結んだことだと言う。自分では何も積んでいなくても、よい人やよい教えに触れた縁が人を助けるという考え方である。仕事でも、優れた人のそばに身を置き、その人から学んだことを次の人に手渡すことが、自分一人の努力を超えた力になる。自分がどんな縁を結び、どんな縁を人に手渡しているかを、時々振り返ってみたい。
この章句が説くこと
結縁功徳縁法華経感謝つながり
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