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驢鞍橋 / 卷中

殃崛摩羅因持鉢入城。到一長者家値其婦產難。長者告云。沙門是佛弟子。有何方便救得我家產難。崛云。我乍入道未知此法。當去問佛却來相報。乃遽返白佛具陳上事。佛□云。汝速去說。我自從賢聖法來。未曾殺生。崛依佛所說。徃告長者。者婦聞之當時分娩。母子平安。一僧問ふ、此の則の意如何。師云はく、殃崛は此比まて五逆罪の外道也。此の機移る故に、胎中の子母を害せんとす。又佛正法從來不殺生と宣ふ。不殺生の佛意移る故に平安也。

新字:殃崛摩羅因持鉢入城。到一長者家値其婦産難。長者告云。沙門是仏弟子。有何方便救得我家産難。崛云。我乍入道未知此法。当去問仏却来相報。乃遽返白仏具陳上事。仏□云。汝速去説。我自従賢聖法来。未曽殺生。崛依仏所説。往告長者。者婦聞之当時分娩。母子平安。一僧問ふ、此の則の意如何。師云はく、殃崛は此比まて五逆罪の外道也。此の機移る故に、胎中の子母を害せんとす。又仏正法従来不殺生と宣ふ。不殺生の仏意移る故に平安也。

書き下し

殃崛摩羅、因みに鉢を持して城に入る。一長者の家に到るに、其の婦の産難に値ふ。長者告げて云く。沙門は是れ仏弟子なり。何の方便有りてか我が家の産難を救ひ得ん。崛云く。我乍ち道に入りて未だ此の法を知らず。当に去りて仏に問ひ、却来して相報ずべし。乃ち遽かに返りて仏に白して具に上の事を陳ぶ。仏□云く。汝速かに去りて説け。我賢聖の法に従ひてより来、未だ曾て殺生せずと。崛仏の所説に依りて、往きて長者に告ぐ。者の婦之を聞きて当時に分娩し、母子平安なり。一僧問ふ、此の則の意如何。師云はく、殃崛は此比まて五逆罪の外道也。此の機移る故に、胎中の子母を害せんとす。又仏正法従来不殺生と宣ふ。不殺生の仏意移る故に平安也。

現代語訳

央崛摩羅(アングリマーラ)が鉢を持って町に托鉢に入り、ある長者の家に行くと、その妻がお産で苦しんでいた。長者は言った。「沙門は仏の弟子です。何か手立てで我が家の難産を救えませんか」。央崛は言った。「私は仏道に入ったばかりで、まだその法を知りません。仏にお尋ねして戻ってお知らせしましょう」。そこで急いで戻り、仏に事情を詳しく申し上げた。仏は(一字読めず)言われた。「すぐに行って説きなさい。『私は賢聖の法に従ってからこのかた、一度も殺生したことがない』と」。央崛は仏の教えのとおり長者のもとへ行って告げた。長者の妻はそれを聞くと、ただちに分娩し、母子ともに無事であった。ある僧が問うた。「この則の意味はどういうことですか」。師は言われた。「央崛はつい最近まで五逆罪を犯す外道であった。その気が移るので、胎内の子と母を害しようとした。また仏は、正法に入ってから殺生していないと仰せになった。殺生しない仏の心が移ったので、平安を得たのだ」。

解説

央崛摩羅は多くの人を殺したのち釈迦に帰依したと伝えられる人物で、これは安産の話として語られる経典の一節である。正三はこれを呪文の効き目としてではなく、人の心の働きが周りに移るという「機が移る」の理で説明した。殺生の気を帯びていれば胎児と母を害し、殺生しない仏の心を受ければ母子は安らかになるというのである。正三の教えでは、人の心の状態が周囲に伝わることが繰り返し強調される。自分の心の在り方が、職場や家族にそのまま伝わっていることを思わせる一条だ。

この章句が説くこと

殺生心機央崛摩羅安産移る

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