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立正安国論 / 『立正安国論』災いの先例を引く

抑以近年之災難課往代之由強恐之聊引先例可悟汝迷止觀第二引史記云周末有被髮祖身不依禮度者弘決第二釋此文引左傳曰初平王之東遷也伊川見被髮者而於野祭識者曰不及百年其禮先亡矣知徵前顯災後致又阮籍逸才蓬頭散帶後公卿子孫皆敩之奴苟相辱者方達自然撙節競持者呼爲田舍是爲司馬氏滅相已

新字:抑以近年之災難課往代之由強恐之聊引先例可悟汝迷止観第二引史記云周末有被髪祖身不依礼度者弘決第二釈此文引左伝曰初平王之東遷也伊川見被髪者而於野祭識者曰不及百年其礼先亡矣知徴前顕災後致又阮籍逸才蓬頭散帯後公卿子孫皆敩之奴苟相辱者方達自然撙節競持者呼為田舎是為司馬氏滅相已

書き下し

抑も近年の災難を以て往代の由に課し、強いて之を恐る。聊か先例を引いて、汝が迷いを悟すべし。止観第二に史記を引いて云く、周の末に被髪袒身にして礼度に依らざる者有りと。弘決第二に此の文を釈するに、左伝を引いて曰く、初め平王の東遷するや、伊川に被髪の者を見る。而して野に祭る。識者の曰く、百年に及ばずして其の礼先ず亡びんと。徴は前に顕れ、災いは後に致るを知る。又阮籍は逸才なり、蓬頭散帯す。後に公卿の子孫、皆之に敩い、奴苟として相辱むる者は方に自然に達すとし、撙節して競い持する者は呼んで田舎と為す。是れ司馬氏の滅する相たるのみ。

現代語訳

そもそも、近年の災難を昔の原因に重ねて強く恐れさせたのは、私です。少し先例を引いて、あなたの迷いを悟らせましょう。『摩訶止観』第二に『史記』を引いて言います。周の末に、髪をふり乱し、肌をあらわにして、礼の法度に従わない者がいたと。『止観輔行伝弘決』第二がこの文を釈して、『左伝』を引いて言います。昔、平王が東に都を移したとき、伊川で髪をふり乱した者を見た。しかも野で祭りをしていた。識者は言った。百年もたたないうちに、この国の礼がまず滅びるだろうと。前兆が先に現れ、災いはその後に至るのだと分かります。また阮籍は並外れた才人で、髪を乱して帯を締めませんでした。のちに公卿の子孫がみなこれにならい、礼を捨ててだらしなくふるまう者は自然の道に達した者とされ、節度を守って競い保つ者は田舎者と呼ばれました。これは司馬氏が滅びる兆しだったのです。

解説

災害の前兆と為政の乱れを、中国の古い故事で説明する箇所です。乱れた身なりや礼の崩れが、やがて国の滅びに結びついたという話が並びます。日蓮の論争文書の一部であり、現代の読者に特定の教えを勧める趣旨ではありません。ここで興味深いのは、出典を『止観』『弘決』『左伝』と遡って示す点です。主張の根拠を権威ある文献に据える議論の仕方といえます。組織でも、規範が少しずつ崩れる兆しを、大きな問題になる前に見つけて手を打てるかが問われます。
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この章句が説くこと

先例被髪礼度左伝阮籍前兆

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