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楽訓 / 巻之下・読書

一書を讀み字をうつすに、あきらけき窻、いさぎよき机、筆硯紙墨の精良なるを得て用ふるも、亦人生の一の幸なり。此樂を得る者すくなしと、蘇子美がいへるも、書生はまどしき人多ければ、かくいへるなるべし。又貧しきは燈なし。古には雪に映し、螢をあつめ、壁をうがちて、書を讀みし人だにあれば、今此六の助を得て、又燈火をやゝ親む人は、幸ありと思ひ、つとめて書をよむべし。

新字:一書を読み字をうつすに、あきらけき窓、いさぎよき机、筆硯紙墨の精良なるを得て用ふるも、亦人生の一の幸なり。此楽を得る者すくなしと、蘇子美がいへるも、書生はまどしき人多ければ、かくいへるなるべし。又貧しきは灯なし。古には雪に映し、蛍をあつめ、壁をうがちて、書を読みし人だにあれば、今此六の助を得て、又灯火をやゝ親む人は、幸ありと思ひ、つとめて書をよむべし。

書き下し

一書を読み字をうつすに、あきらけき窓、いさぎよき机、筆硯紙墨の精良なるを得て用ふるも、亦人生の一の幸なり。此楽を得る者すくなしと、蘇子美がいへるも、書生はまどしき人多ければ、かくいへるなるべし。又貧しきは灯なし。古には雪に映し、蛍をあつめ、壁をうがちて、書を読みし人だにあれば、今此六の助を得て、又灯火をやや親む人は、幸ありと思ひ、つとめて書をよむべし。

現代語訳

書を読み字を写すのに、明るい窓、清らかな机、上質な筆・硯・紙・墨を得て用いるのも、また人生の一つの幸いです。「この楽しみを得る者は少ない」と蘇子美(蘇舜欽)が言ったのも、書生には貧しい人が多いので、そう言ったのでしょう。また貧しい者には灯火がありません。昔は雪明かりに照らし、蛍を集め、壁に穴をあけて隣の明かりで書を読んだ人さえいたのですから、今この六つの助けを得て、さらに灯火に少しでも親しめる人は、幸いがあると思って、努めて書を読むべきです。

解説

宋の蘇舜欽が「明窓浄几、筆硯紙墨、皆極精良、亦自是人生一楽」と述べたことを踏まえ、よい読書環境は人生の幸いだと言います。さらに、雪明かりや蛍の光、壁の穴から漏れる光で学んだ古人の故事(蛍雪・鑿壁)を挙げ、それに比べれば道具と灯火のある自分たちは恵まれているのだから、怠らず読めと励まします。今の私たちは電灯も机も本も手軽に手に入ります。環境が整っていることを当たり前と思わず、その恵みを学びに生かす心がけが大切だと気づかせてくれます。

この章句が説くこと

読書学問道具勤勉幸い

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