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楽訓 / 巻之中・節序

まいて一年の終の今日の日の夕暮になりぬるをや。もろこしの人は、守歲といひて、今宵はよもすがら寢ねずとかや。是ふるきを送り新しきを迎ふる心なるべし。送迎につきて、憂喜一かたならず。凡四の時のおしうつる折々につきて、感をおこす人は情ふかし。愁人は是によりて悲み、達士は是によりて樂む。景氣は同じけれど、唯見る人から、えんにも凄くもおもほゆるなるべし。

新字:まいて一年の終の今日の日の夕暮になりぬるをや。もろこしの人は、守歳といひて、今宵はよもすがら寝ねずとかや。是ふるきを送り新しきを迎ふる心なるべし。送迎につきて、憂喜一かたならず。凡四の時のおしうつる折々につきて、感をおこす人は情ふかし。愁人は是によりて悲み、達士は是によりて楽む。景気は同じけれど、唯見る人から、えんにも凄くもおもほゆるなるべし。

書き下し

まいて一年の終の今日の日の夕暮になりぬるをや。もろこしの人は、守歳といひて、今宵はよもすがら寝ねずとかや。是ふるきを送り新しきを迎ふる心なるべし。送迎につきて、憂喜一かたならず。凡四の時のおしうつる折々につきて、感をおこす人は情ふかし。愁人は是によりて悲み、達士は是によりて楽む。景気は同じけれど、唯見る人から、えんにも凄くもおもほゆるなるべし。

現代語訳

まして一年の終わりの今日の日の夕暮れになったのですから、なおさらです。中国の人は「守歳」と言って、大晦日の夜は一晩中寝ないそうです。これは古い年を送り新しい年を迎える心なのでしょう。送り迎えにつけて、憂いと喜びは一通りではありません。およそ四季の移り変わる折々につけて、感を起こす人は情が深いのです。憂いのある人はこれによって悲しみ、達観した人はこれによって楽しみます。景色は同じですが、ただ見る人によって、艶にも凄まじくも思われるのでしょう。

解説

節序の段の締めくくりに近い一節です。中国の守歳の習慣を紹介し、古い年を送り新しい年を迎える夜には憂いも喜びも入りまじると述べます。そして、季節の移り変わりに感じる心を持つ人は情が深いが、同じ景色でも憂える人は悲しみ、達観した人は楽しむ、と結論づけます。景色そのものではなく、見る人の心のあり方が楽しみを決めるというのが楽訓全体を貫く考えです。物事の受け止め方を変えれば同じ日常も違って見えるという教えは、ストレスの多い現代の心の持ち方にもそのまま通じます。

この章句が説くこと

楽しみ心年の暮れ受け止め方四季

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