楽訓 / 巻之中・節序
卯月はかく空はれやかなれど、やがて五月になりぬれば、大空の景色、さいつ頃に引きかへて、さみだれ久しくつゞき、折々は、なるかみおどろおどろしくて、降らぬ時だに曇らはしく、物のあやめも知らず、園をうかゞふべき隙まれにして、常にたれこめて日數を經るもわびし。
新字:卯月はかく空はれやかなれど、やがて五月になりぬれば、大空の景色、さいつ頃に引きかへて、さみだれ久しくつゞき、折々は、なるかみおどろおどろしくて、降らぬ時だに曇らはしく、物のあやめも知らず、園をうかゞふべき隙まれにして、常にたれこめて日数を経るもわびし。
書き下し
卯月はかく空はれやかなれど、やがて五月になりぬれば、大空の景色、さいつ頃に引きかへて、さみだれ久しくつづき、折々は、なるかみおどろおどろしくて、降らぬ時だに曇らはしく、物のあやめも知らず、園をうかがふべき隙まれにして、常にたれこめて日数を経るもわびし。
現代語訳
四月はこのように空が晴れやかですが、やがて五月になると、大空の景色は先頃とは打って変わって、五月雨が長く続き、時々は雷が恐ろしく鳴って、降らない時でさえ曇りがちで、物の見分けもつかず、庭を見回る隙もめったになく、いつも家に閉じこもって日数を過ごすのもわびしいものです。
解説
前段で讃えた四月から一転し、梅雨にあたる旧暦五月の鬱陶しさを率直に書いた短い段です。長雨、雷、曇天で庭にも出られず、家にこもって日を過ごすのはわびしいと言います。楽しみを説く楽訓ですが、益軒は良い季節ばかりを並べるのではなく、つらい時期はつらいと認めています。この正直さがあるからこそ、後の段で冬のような「何もない時期」にも意味を見出す議論が説得力を持ちます。気分が沈む季節があるのは自然なことと受け止め、無理に明るく振る舞わないことも、心を健やかに保つこつでしょう。
この章句が説くこと
梅雨心季節憂い自然
関連する章句
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